残暑お見舞い申し上げます。
暑い日々が続いていますが
お元気でお過ごしでしょうか。
ただ黙って立っているだけで
くにゃん、と溶けてしまいそう。
氷の音を聴きたい。
♧
楽しみにしていた夏祭りも
今年は中止になってしまいました。
浴衣の出番もなくて。
からころと鳴る下駄の音に、
宵の虫の声が絡んでくるのが
耳に心地よいのに。
それすらもない諦めを
いなすかわりはないものかと
思案しています。
♢
先日はお墓の掃除をしてくれたそうで
どうもありがとう。
毎年、幼馴染のあなたが来てくれて、
兄も喜んでいると思います。
あれからもう五年も経つのですね。
自粛だなんだと言ったって、
迎え火を焚いたなら
兄はきっと今年も
この家に帰ってくるのでしょう。
だからお盆には
兄の好物のどら焼きを作って
お供えするつもりです。
これは内緒ですが、
どら焼きの皮に
味醂を少々入れて焼くのが私流なのです。
あなたにも食べてほしかった。
けれど今年は
三密を避けなければならないので、
こちらの家には立ち寄れないとのこと。
仕方のないことです。
♤
夏を嗅いで、夏に触れて、夏を見て。
夏を味わっていますか。
あなたの中に夏をたくさん
ため込んでいますか。
冬になって寒くなった時
心の中にためておいた夏を
そっと取り出して
マッチで火を灯すのです。
そうすると
夏の入道雲や花火や西瓜の種なんかが、
幻燈機の光みたいに
ぱあっと辺りを包んで、
あなたの寒さを
やわらげてくれることでしょう。
冬の寒い日は何度でもやって来ます。
だから夏を
小分けにして
たくさんたくさん
ためておいてくださるといいのだけれど。
一年を通して
あなたが穏やかに暮らせることそれが
私の願いです。
♡
暑い暑いと言うのが口癖の夏。
それでもお盆を過ぎたら
夏の果てが少し見えてくるようです。
お墓掃除の時の
忘れ物の麦わら帽子を
探しにいったりしないで。
麦わら帽子は
夏の中にしか、いられないもの。
永遠の夏の旅に出たのですから。
あなたの分のお線香、
今年は私が
代わりにあげさせてもらいます。
どうかお体をたいせつに。
そして来年こそは
またお会い出来ますように。
文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。