見出し画像

春先の感動病。

やけに涙もろいのは、
空が光をたっぷりと
含むようになったからだろうか。
何を見ても
その中にある眩しさが目に沁みて、
いちいち心動かされる。


青空に白いわた雲。
花の香りをのせた風。
苺づくしのパン屋の看板。
ダイヤモンドのような川面の煌めき。
小さな子が大きな声で父親を呼んでいる。
冬が終わっていきそうな季節には、
すべてのものにあたたかい光が宿っている。
晴れた空は
ただ青いだけじゃなく、
自然や人々が解き放った自由さをも
含んでいるらしい。
周りをゆっくり見回しながら歩いていると、
喜びに囲まれているのを実感して
鼻の奥がつんとする。
そうして目の前がじわっと霞んでくる。
(花粉症だから、ということではなくて)

見過ごしてしまいがちなささいなことに、
こんなにしょっちゅう感動しているなんて、
もしかして私は近々死ぬのじゃないかしら。
などと思ったりもする。
そんな風に泣きたくなる私は、
ちょっとおかしいのかもしれない。
たくさんのことに感謝できるように、
心震える機会をより多く与えられているのだと
すれば、それも悪くはないだろう。

凍える季節から自由になる。
心も緩んで溶けてゆく。
感動病はしばらく症状が治まりそうもない。


追伸。
近ごろあなたは
何に感動しましたか。
あなたが泣くほどこころ震えた瞬間を
私だけにそっと教えてください。
私はそれを心の日記に書き留めて、
いつか言葉にしてお返事を書きます。


ちょっとした春の遊び心

文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。