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より届くように、より持続可能に。地域に根差した農家さんの様々なチャレンジについて。【生産者さんインタビュー:竹内 剛さん】 -後編-

こんにちは!The SUZUTIMES編集部の これえだ です。

この記事では長岡の農家さん、竹内さんへのインタビュー記事後編をお届けします。

▼竹内さんがどんな方かわかる前編はこちらから!


── ここからはSUZUとの関わりについて伺いたいのですが、どういった出会いだったのですか?

14年くらい前、当時所属していた長岡青年会議所で、農家メンバーが集まる機会があって。
地元で頑張る飲食店が増えたから、偵察に行こうってなったんです。まぁ、単純に飲みにいきたかっただけっすね(笑)

その当時、地元の野菜にこだわってるお店ができたらしいと、すずきちに行ったのが初めましてだったと思います。

── ほぉ!プライベート・・・ではないものの、最初の出会いはがっつりお仕事としてってわけでもなかったんですね!

そうなんですよ。その時は挨拶もしたんだかなぁ・・・?

で、しばらくして今度は事業として農家と飲食店で「農業を軸として長岡地域を盛り上げるために何か企画しよう!」という場で一緒に動くことになったんです。

その時集まったのがきっかけで、『NPO法人 思いのほか』(当時は任意団体)が生まれました。

── そうだったんですね〜!!!

で、面白いのが、実はもっと前に将さん(SUZU GROUPオーナーシェフの鈴木 将)には会ってるんですよ。

僕たちが同い年ってことは知っていたんだけど、両親同士が昔遊び仲間だったらしく、小さい頃に一緒に遊んだことがあるんだと。

それはなんとなく聞いてたんだけど、つい先月、自分の両親の結婚式に将さんのお母さんが出席してたって聞いて。(笑)

── なにそれ!付き合いが長いのに最近聞くにしては結構なインパクト!それは世間が狭い・・・いや、運命的と言うべきか?!(笑)

そうっすね、もっと立派になって運命的と言えるようにしないと!(笑)

── こっちも頑張ります!(笑)そこからずっとお付き合いせていただいているのですね。

そうですね。
「からしなす」を一番長く使ってもらっていて、現在は巾着なす・トマト・きゅうり・枝豆あたりを卸しています。

── からしなすといえば、タケウチマスタードの開発もさせていただきました。一緒に動くことになったきっかけはあったのですか?

あれは、将さんに相談させてもらったのがきっかけですね。

当時、うちで作っている漬物の売り上げが落ちてきて、このままではまずいという雰囲気があったんです。

これまでは地元のお年寄りが食べるような、昔ながらのザ・スタンダードな漬物を作っていて。
そのうちの一つ「からしなす」を、もう少し全国向け、若者向けなものにしたいと相談したんです。

── なるほど。確かにからしなすって地元のスーパーにも地元の方が漬けたものが売っていて、良くも悪くもすごく“地域密着型”なイメージがあります。開発の時の様子はどんな感じでしたか?

味については将さんを信頼しているから、ほぼ任せていましたね。

伝統料理でもある「からしなす」。
巾着なすならではの食感とからしの風味が絶妙にマッチしている唯一無二のお漬物です。

ただ、結構妻がいろいろ言ってました(笑)
うちの漬物はほとんど妻が作っていて。それもあって3人で試食してました。
「あんな感じの味にしたい」って言ったのも妻の発案で。

── そうだったんですね!美味しいだけでなく、使い勝手が良いのも奥様エッセンスが入っているからなのかも。

そうかもしれないです。
元々、からしなすのレシピは近所の農家さんから教えてもらったものなんですけど、10年以上やってる中で、食べやすいように少しずつ変えているようで。
そういうとこのこだわりが出たのかも。

ちなみに、旨味と辛味の2種類ってのも妻の希望です(笑)
最初将さんは1本でいくつもりだったんだけど、「もっと辛いのも絶対売れる」って言って2本になったんです。

ちなみにパッケージのイラストは鈴木が描いた竹内さんの似顔絵(?)です

── 強い!(笑)確かにあの辛さはクセになるし、からしなすならではって感じがします。では、新しい試み繋がりで次の話題を。現在、何かチャレンジしていることはありますか?

うーん、、大きく分けて【環境】と【教育】って2つですかね。

── ぜひ一つずつ伺いたいです!【環境】というと?

さっきも出た異常気象に対してですね。
環境のことを本気で考えないとと感じています。

いろんな意見や見方が言われていますが、僕は『資本主義の社会が環境に悪影響を及ぼしている』という考えに同感です。

お金が稼げれば、今が良ければ、という考えになってしまうと、取り返しのつかないことになる。
実際、今って過去のツケが回ってきちゃってると思うんです。

それに気付いてから、何でもかんでも儲ければいいという思いはなくなりました。

── 自然に一番近い存在の農家さんが一番に影響を受けてしまう。一番考えなくちゃいけなくて対策に追われてしまうって、なんというか、とても歯痒いです。消費している私たちも同じはずなのに。なんだか自分の意識を恥ずかしいとすら思いました。

農家はモロに影響を受ける産業なんでね〜。

── 具体的にはどういったチャレンジを?

例えば、マルチシート。
畑の畝を覆うシートなんだけど、用途はいろいろで、草を出さないようにとか土の水分を逃さないようにするとか。

写真の中、土の上に被せてある黒いシートが「マルチシート」です。

それがビニールでできてるんです。
使った後は燃やす(捨てる)他ないわけで、それって地球温暖化の手助けをすることになるんですよね。

使わないようにするにはどうしたらいいかと思って、自然にあるものを使ってみることにしました。

籾殻でやるのは昔からの方法として有名なんだけど、それと一緒にうちにあった枝豆の殻(肴豆を大豆にするため、ハウスの中で干す過程でたくさんできる)を使ってみたんですよ。

レタスを植えた畝の上に敷いてみたら意外といけました(笑)

チャレンジっていってもそんな感じで、できることやってみようって感覚です。

── 実験してる!!でもでも、ビニールがなかった時代もあったわけですもんね。そう思うと自然に近い状態に戻る作業というか。

そうですね。

それと同時に、化学肥料を減らすことも試みています。
もちろん環境のためもありますが、経済的なことも考えてです。
今、世界情勢の影響もあり、肥料の価格高騰がすごいんです。

それを受けて、県や市でも地元の企業・地元のもので肥料を作るということに注力し始めているんですよね。

化学肥料を使わない代わりに、闘牛で有名な山古志エリアの堆肥を使ったり、これは市の取り組みの一環でもあるんですけど、長岡の下水を肥料化しているものを使ってみたり・・・。

肥料に関しては“地域循環”を意識しながら取り組んでいます。

── 肥料の価格高騰、以前ニュースで知りました。「肥料」も地域循環に一役買うだなんて・・・ぜひ今後、進捗を伺いたいと思います!
【教育】の分野はいかがですか?

教育というか、子供たちへの体験ですね。
これも子供たちのためっていうか自分が好きだからやりたいだけですけど。

畑に来て何かやると、子供は絶対何かを感じてくれると思うんです。

親目線だと「野菜を食べなくて」とか「野菜を好きになってほしい」とかって思いがあるようだけど、正直、野菜って自然の味で。
しょっぱくも甘くもないし、スナック菓子なんかに比べたら、子供にとって良さが分かりにくい食べ物だと思っています。

それより、畑に来て何かを埋めてみる。土に触れてみる。
そういう“体験”の方が大切になっていくと思います。

幼少期にいろんな菌に触れるのも成長面で有益だそうです。
まぁ、単純に畑で子供達が遊んでるのを見るの、好きなんですよね。

── 素敵!!記憶に残らなくても、感覚を育てるというか。子供時代の体験って本当に大切だと思います。
では、この時期の具体的な質問を。もうすぐ夏野菜の収穫が始まると思いますが、今年の意気込みはありますか?

今はある程度夏向けの野菜の植え付けが終わり、きゅうりが獲れ始めたかなって感じです。(インタビューは5月末)

6月下旬には枝豆の収穫が毎日入るので、本格的な繁忙期はそのくらい。
なす・きゅうり・トマトも同時なので結構ハードっすね〜。

── 同じところをぐるぐる回るわけですね(笑)(元ネタは前編の記事をご覧ください!)昨年は記録的な猛暑で大打撃を受けられたかと思うのですが・・・

そう、ぐるぐるね(笑)

今年も暑くなるとは言われているので、もうその辺は諦めて。

刃向かったところで勝てないっすからね。
こちらから合わせていくのが自然の摂理。少しでも持続可能な環境に人間が努力して寄せていく必要があると思ってます。

小さいことでもできることはやって、環境に配慮した農業にシフトチェンジしなくちゃと。

── 私もできることをやろうと身が引き締まる思いです。では最後に、せっかくなので普段伺えないことを。私たち(SUZU GROUP)に求めることはなんですか?

え〜、なんだろう・・・(ちょっと考えて)

あ、我々農家をもっと身近に感じてもらうことをやりたいです。
研修とかでうちに来てもらう事があると思うんですけど、もっとフランクに、ちょっと寄ってもらうとか。

将さんとか僕が話したり、畑を見に来てもらったり、情報を提供するのはいくらでもするんですけど、一緒に何か作業をする方が実際に感じてもらえるし、素のままで話せると思うんすよね。

夕方に来て1時間くらい一緒に簡単な作業して、そのままちぃぼうに飲みにいくとか?(笑)
なんなら、飲みにいくならいつでもできる(笑)

一緒に作業することでお互いのことをもっとよく知れると思うので、ぜひそんな時間を作れたらと思います。

── もちろん作業はしっかりやらせていただきますが、絶対楽しい!(笑)きっとうちのスタッフはやりたい人たくさんいると思うので、近いうちに実現できるように動きたいと思います!


編集後記

全編でも書いたように、1時間弱で終わらせるはずのインタビュー時間が、1時間半以上になるという・・・(笑)
とっても楽しく伺う中で、私個人としては反省した点やはっとするような気付きがたくさんありました。

食材の歴史や新潟の風土に加え、生産者さんの想いというものに触れてきたつもりでしたが、その方その方によって想いや考えは様々で、もっとそれを理解して伝えていかなくちゃいけないと感じました。

環境問題についても。
人並みに理解して行動してきたと思いますが、まだまだまだ意識が低かったことに恥ずかしくなりました。
すごく表現しづらいのですが、消費する側の意識でいたというか・・。

農家さんのように自然と隣り合わせで寄り添って暮らそうとする方が、一番現状に影響を受け、それ対峙している。
その一方で、そんな農家さんが生産するものを食べている私は相応の行動ができているのか?と考えてしまいました。

その後、特段変わったことはできていませんが、剛さんを見習って、小さいことからコツコツ当たり前の行動を積み重ねていこうと思っています。

剛さん、お忙しいところ貴重なお時間をありがとうございました!
今年のお野菜もとーーーーっても楽しみにしています!!

これえだ

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