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【読書感想】『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』

最近、ラーメンを食べていないと気付いた。

近所のラーメン屋で食べたのは半年くらい前。旅先で食べたのは、いつだろう……。ちょっと思い出せない。

『蹴日本紀行』を読み、ラーメンが恋しくなり、そして、猛烈にどこかに行きたくなった。

旅をする理由は、景色を楽しみたい、人とふれあいたい、その土地の空気を感じたい、色々あるけれど、もっとシンプルな動機があったことを忘れていた。

その土地の美味しいものを味わいたいから。

かつては、食を楽しむために出かけることもあったのに、気ままに移動ができなくなり、旅に出る理由すら忘れてしまっていた。

電車に乗って、どこかに行きたい。

飛行機に乗って、どこかに行きたい。

どこかに行って、美味しいものを食べたい。

まだ訪れたことのないスタジアムにも行きたい。

『蹴日本紀行』は、旅をあきらめ、凍死寸前だった心に火を点けてくれ、旅の情熱を思い出させてくれた。


『蹴日本紀行』(エクスナレッジ)は、写真家・ノンフィクションライター宇都宮徹壱さんの写真集。写真も文章もどちらも充実しているので、写真集というべきかフォトエッセイというべきか少し迷う。

「47都道府県のフットボールのある風景」を、Jリーグがある土地もない土地も、人口が多い土地も少ない土地も、えこひいき無しに同じ分量で紹介している。その土地にあるクラブ、出身のサッカー選手を知ることができるし、各地のグルメ、マスコットも堪能できる。そして何より写真が美しい。旅の休憩のように途中にはさまれている5つのコラムは私のお気に入り。

気のむくまま、どのページから読んでも楽しめる。文章を読むのが苦手な人は、写真を眺めるだけでもいいと思う。

だって写真集だから。


真っ先に開いたページは故郷の富山県

東京生まれ東京育ちの宇都宮さんが、ちょっと地味な富山のどこを切り取って紹介してくださったのか気になった。一番大きな写真はどんな景色だろうとページをめくる。

どの写真もありのままで、すっぴん風なのが好き!丁寧に化粧しているのに、すっぴんのように見えるのと同じように、美しい写真でありながら華やかすぎないのがいいなと思う。空の色も海の色もスタジアムも私の記憶にある富山だった。懐かしく感じた。

ライトレールのことが書いてあったのは嬉しかったし、富山メシに選ばれたある食べ物のコメントに「好みがはっきり分かれるだろう」と本音が書いてあるのも嬉しかった。夫や友人も「1回食べれば満足」と言う。好きなものを否定されるのは悲しいはずなのに、これに関しては「やっぱりね!」と嬉しくなる(笑)。

一方、何度も通っている場所なのに知らないことがあった。帰省した時、富山駅の改札を出たら足元に注意しながら歩いてみよう。


印象に残った写真

埼玉県のページを開いたとき、そこに吸い込まれて、圧倒された。何度も見たことがある景色なのに、まだ見たことがない景色のようにも感じたし、ずっと遠い昔に見た景色にも感じた。渋い色合いが好み。

他にも好きな写真はたくさんある。お気に入りベスト5を選ぶとしたら……、迷いに迷って、これと、これと、あれと、あれと、あれ!

これから読む人の楽しみを奪わないように、これ以上触れるのはやめておこう。


地図に色を塗りたくなる

読み終えて、日本の白地図と水彩色鉛筆を準備したくなった。まだ足を踏み入れてない土地、通り過ぎただけの土地、泊まったことがある土地、観光したことがある土地、サッカー旅で訪れた土地、その土地の思い出を振り返りながら、日本地図に色を塗りたくなる。そんな風に分類すると、サッカー旅で訪れた街は意外と少ないことに気付く。この本を手に各地を旅し、たくさん塗りつぶしていきたい。


そして、もう一冊買いたくなる

『蹴日本紀行』は、誰かにプレゼントしたくなる。国内サッカーが好きな人にも、サッカーに興味がないけれど旅が好きな人にも、本が好きな人にも、本を読むのが苦手な人にも。

もう一冊買って実家に送ろう。海外サッカーが好きな弟にも送ろうかな。



蛇足ながら、やっぱり気になること

本を手に取ったとき、フットボールと繋がりがなさそうなマスコットの姿が目に入った。帯にサッカーマスコットと一緒に登場しているチーバくんと、裏表紙の水色のドジョウみたいなマスコット。

水色のマスコットは見たことあるような、ないような。でも、どこで会ったのか思い出せない。調べたところ「有明ガタゴロウ」と判明。サガン鳥栖の熱狂的サポーターで、サガン鳥栖を応援するラジオ番組にも出演しているらしい。なんと永遠の56才。応援するチームは違えど同じサポーター仲間だった。しかもドジョウではなくムツゴロウだった。ガタちゃんごめんなさい。

有明ガタゴロウをさりげなく裏表紙に登場させるあたりは、宇都宮さんの守備範囲の広さ、マスコットへの愛の深さを感じた。

一方、チーバくんは、千葉県のマスコットで人気があるのはよく知っているけれど、フットボールとの繋がりは探し出せなかった。どういう縁で表紙に登場しているのだろう……。

まあ、可愛いから理由なんてどうでもいっか!

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