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# 126 医師が覗き見る「日本社会のイマ」

世界各国では高インフレに見舞われている。それを抑えて、経済の軟着陸を模索している。その辺を再度ザックリであるが覗いてみる。

世界中で物価が上昇している。イギリスでは年率10%に及ぶインフレと報じられている。米国も8%程度で目標の2%をはるかに越している。このインフレの高止まりは、最も危険だと言うのが、FRBの主張である。

グローバルな社会では、カネ、物、人、情報、が国境の垣根を跨いで流動化、活性化して、各国経済の成長を支え合ってきた。しかし、貨幣の価値の失墜で、グローバル経済が循環不全に陥ると言うのは、お金は経済の血液であるので、必然性がある。
確かに主要な国で物価が制御不能なほどに上昇すれば、貨幣は紙屑になり、世界中に貨幣の信用失墜が拡大する物語は資本主義の没落図ともいえよう。

日本はインフレ率2%程度で推移していて、何の問題も起こらないと言う意見もある。これは、日本人の消費意欲の低下と将来不安からの貯蓄願望が相まって、需要(消費)が供給に間に合っているのだろう。

今、世界のインフレ国はこの日本化を目指しているのかも知れない。
日本人の個人貯蓄は2000兆円とも言われ、企業も内部留保が多いのだが、それが消費に向かわない。
欧米も個人、企業ともに豊かな家計と財務状況下にある。
日本との違いは、個人がそれを使ってより良い生活をしたい、消費を楽しみたい、企業も設備投資を活発化して、より利益を上げたい、と言う願望が殊更に強いことなのだろう。加えて、今、買わねば損、将来は物価が上がるのだからと言うマインドもある。
それ自体は健康なモメンタムなのだが、どうにか工夫をしないと、現在のインフレからの脱却はできそうもない。

日本人はマスク着用に積極的なのだが、欧米先進国では真逆のようである。これと似ていて、消費に関する慣習も真逆である。両方足して2で割ることが出来れば良いのだが。

日本以外の高インフレ国は国民性も織り込んで、政策金利と共に、市中金利 の上昇を計り、お金を借りて自動車や住宅を購入したり、企業が設備投資したりするペースをスローダウンさせ、物を欲しくても買い控えする雰囲気を作ろうとしている。
これは高インフレへの唯一の特効薬であろうが、景気減速の副作用を孕んでいる。しかし、国民の財産、企業の内部留保は十分ある訳で、たとえ景気が減速しても、経済は耐えうると言う楽観的な見通しは行き着くとこ日本化と酷似している。

コロナの経済危機を回避するために世界の主要国がお金を大量に印刷、コロナバブルが発生して、一部で資産が膨張している。
ウクライナ情勢は原油、ガス、穀物の供給を細らせている。
産油国などのはここぞとばかり利益を享受している。
多くの原材料の価格上昇は資源国がこの世の春を謳歌しているようにも見える。
このインフレで苦しむ人もいれば潤う人もいる。
儲けることの自由を保守するのが資本主義とも言えるのであり、格差が生じるのも資本主義なのかも知れない。まさに新自由主義が蔓延っている。

岸田首相の新しい資本主義という概念は新自由主義とは競合するのだろうか?
資本主義の長期的安定的な成長という観点でインフレを抑え込んで、経済の軟着陸を模索すると言うストーリは新しい資本主義と一脈相通ずるのだろうか?これは儲ける自由と競合するのだろうか?折り合いがつくことなのだろうか?
色々な考え方と欲望のカオスが渦巻く中で、政治経済も予断の許せない状況がそのまま継続して行く。これがpostーコロナである。

コロナに密着して行きます

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