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AirPodsの音量は感情と比例する

同じ車両に乗っていたおじいさんは素敵なコートを羽織っていた。上品な艶があるコート。大好きなfoufouの玉虫シリーズのことを思い出す。この手の生地は着るのも見るのも好きだから、いい生地のコートだなぁと惚れ惚れしてしまう。合わせていたハットとの相性もバツグンだった。素敵な着こなしをしている方を見つけるとナチュラルに、というかもはやネイチャーレベルで嬉しくなるのはわたしの習性だと思う。


最寄駅に到着したら、まさかのおじいさんと同じ駅で降りた。まじか!!という気持ち。ここでいう「まじか!!」はこの街にもこんなおしゃれな服きたおじいさんいるんだ!という意味(失礼) もれなく歩いてる時の生地の雰囲気もみてみたいと思ってしまう。ほんの少しだけ意識しておじいさんの後ろを怪しくない程度に歩いてみる。動く度の光の入り具合!生地のバサっとする感じ!これまたたまらない。やっぱり素敵。


向かう方向が一緒だったので、エレベーターに乗ったおじいさんにつられてわたしも同じエレベーターに乗った。エレベーターは2人っきり。そしたら、おじいさんは自然とこちらを振り返り、わたしに向かって一礼してくれた。わたしも丁寧に一礼をお返す。そして、普段そんなことしないのに、思わず「素敵なコートですね、お似合いです」とおじいさんに話しかけてしまった。おじいさんは「昔に買った古いものですよ、でも気に入っています」とおっしゃった。なんて素敵なんだ。最高じゃないか。さらに嬉しい気持ちになってしまう。たぶんなんとなくだけど、求めてた台詞が返ってきた感があったからだと思う。おじいさんは、昔アパレル関係の仕事をしていたんですとも話してくれた。そりゃ、そうだ!!服が好きなんだ、この方は!!と、さらにテンションが上がってしまう。「わたしも服、好きです!!」気付いたら謎のカミングアウトをしていた。おじいさんは目を輝かせて食いついてくれた。と書きたいところだけど、そない食いついてはなかった。普通だった。おもしろい。なんならこの反応によって、「あ、なんだかよく知らない女が勝手に勢いよく、すんません!」と少し我に帰った。でもおじいさんは笑顔だし、まあいいかと瞬時に自分を励ました。

わたしとおじいさんの短いエレベーターの旅は早々に終わりを告げる。あっさりと、「じゃあまた、お気をつけて〜」お互いにまた一礼をして別れた。春めいてきた季節と同じように、気持ちもほくほくしてしまう帰り道。服好きの先輩と絡めたとてもいい時間だった。あざっす。 


ウールのコートは冬に置いてきた。
本格的な春が来る準備はもう十分に出来ている。

AirPodsのボリュームを少しあげる。
好きな音楽を聴きながら、早歩きで今日もわたしは前に進む。


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