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福永耕太郎「電通マンぼろぼろ日記 ゴルフ・料亭・XXX接待、クライアントは神さまです」(20240229三五館シンシャ)
離婚はまた別かもしれないが、劇症急性膵炎で視線をさまよい、人生への意欲を失うという結末は悲しい。
誰からも必要とされないということが精神を蝕むとある。
絶望には勝てないのか、人は。
笑えない。
悲しいなあ、そんな思いで読みました。
青木和夫編「古代アメリカ文明 マヤ・アステカ・ナスカ・インカの実像」(講談社現代新書20231220)
圧倒的に面白い序章。
山川の歴史教科書への反旗、誤謬指摘、決意の狼煙を見た!
世界四大文明なんて学説にはなく、江上波夫先生がかってに書いたものだったとは。
かつて江上先生に直撃した学者がいて、「口調がいいからで、本当はいろいろあるさ」と大笑いしたんだって! なんだ、この軽さ。
このお陰で四大文明の穴埋め問題は作成され、これで赤点もらった人もいる
んだよ!!!!!!!!!
よって、文明が生
塩田武士「存在のすべてを」(朝日新聞出版20230930)
何度も繰り返し登場する、ダヴィンチの言葉。
「藝術に完成はない。諦めただけだ」
いい人間であり、いい刑事でしたな
人生での後悔を思い出す時
記者クラブが機能すればするほど、それは合理的なシステム故に、記者個人は問題意識よりもノルマを優先するようになる。
そして、なんのために記者になったのか忘れてしまう。
情熱と非効率。
このふたつの親和性は高い。
水を描くこと。
水を描こうとしない
羽深宏樹「AIガバナンス入門 リスクマネジメントから社会設計まで」(ハヤカワ新書20231220)
スタンフォード大学は顔画像から性的指向を推測できる機械学習を用いた手
法を論文で発表。
その精度、男性で91%、女性で83%。
なんとなく飲み屋あたりで、ゲイかどうかを見分けられるというやつ。
同じくスタンフォード大学は、所属政党を7割の確率で的中させるとか。
ようするに、その顔の特徴をAIが学習すれば、性的嗜好を9割の確率で的中させられる。
秘密にしておきたいことも推測されてしまう。
手嶋龍一「鳴かずのカッコウ」(小学館文庫20240111)
2021年2月発売の単行本の文庫版。
2021年時点ではなにも響かなかった本書。最初の10ページくらいで手を離してしまったのだ。
2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻で、がんがん響く作品になってしまった。
なにかが途端に響き出すタイミングってあるものです。
物語を運ぶエンジンではなく、音符と音符の間にあるおかずがちょっと好みとは違うのが少し気に障る。あだ名を、Missロレンスと
福岡伸一「新版 動的平衡ダイアローグ 9人の先駆者と織りなす「知の対話集」」(小学館新書20240406)
カズオ・イシグロが小説を書く目的は、薄れゆく記憶を固定するためという。デイビッド・クローネンバーグの映画「ヒストリー・オブ・バイオレンス」は、記憶とその変容を反フロイト的に描く……
記憶は死に対する部分的な勝利。
記憶を誰も奪うことはできない。They can't take away from me(これはジョージ・ガーシュイン)
一時的にでも時間を止めて対象を隅々まで観察したのがフェルメー
河﨑秋子「ともぐい」(20231130新潮社)
最終章、納得いかん。
どうなの?
これ。
必然性ある? これ必要? 第11章。
これは、わかりません。カワサキさん。
160ページの
世の中変わる。何かを選ばにゃいかんというものはある……
これは、重い。
にしても、最終章、どなたか教えてください。
森元斎「死なないための暴力論」(インターナショナル新書20240212)
なんとびっくり。
エリカ・チェノウェスとマリア・ステファンの「人口の3・5%が非暴力的抵抗を行うだけで世の中は変わる」という有名な言説を否定している。
100年間に起こった323件を分析したというものだが、それらは雑すぎて非暴力とは言えないものもあるとひとつひとつ説明。
非暴力にヒエラルキーのトップにいる為政者は怯えたり怖がったりしないから、やっぱ現状変更には踏み切らないよね。
ナオミ・ク
村山由佳「二人キリ」(集英社20240130)
伊藤野枝の「風よあらしよ」もとんでもない本だったが、468ページの本書もとんでもない。
阿部サダヲではない。
すごいなあ。
おチンコという単語が頻出する小説もそうない。本書くらい。
恋愛を突き詰めると、こういうかたちになるのだなという熱量。
ジェットヒーターを浴びせられた気持ち。
10代、20代のころの恋愛を思う。
熱い。
村山由佳、すごすぎる。
ハルノ宵子「隆明だもの」(晶文社20231215)
吉本家は娘達に、お父ちゃんお母ちゃんと呼ばせていたのか……
パパ、ママでは絶対ないしね。
天才を否定し、修練と継続だけを信じたというのは意外かな。ものすごい集中力とその継続性が、戦後最大の思想家を作ったということか。
強烈な読者が家まで押しかけていたというのもすごいし、それを丁寧に接待していた吉本家もすごい。
吉本教、おそるべし。
米澤穂信「可燃物」(20230725文藝春秋)
短編集だけど、アイデア集のような……
ここからまた長大な物語が編み出されると思うとどきどきする一冊。
黒牢城はすごかったから。
警察とか法医学者にどんな風に取材しているのか気になるところがたくさんある。
高澤秀次「評伝 立花隆 遙かなる知の旅へ」(作品社20231125)
田中角栄と立花隆。
ふたりの年齢差は22歳。
共通点は、
生涯、3人の女性との間に子どもをもうけていること。
立花隆の3人の息子たちは、結託して一切の資料を廃棄することを死後に宣言していること。
田中真紀子には一男二女あるが、いずれも政治家にはならず、政治的遺伝子は途絶えた。
万城目学「八月の御所グランド」(文藝春秋20230810)
名作の異人たちとの夏、または、キンセラのシューレス・ジョー。
過去が現在に蘇る。
黙って読め!!!!!!!!!という久々の名著。
万城目さんの鴨川ホルモーがよかっただけに、ここで直木賞というフラグもまた格別というか、ようやくというか。
「誤植ランド」と聞き間違えるから、またややこしいぞ。御所グランド。
2作収載されていますが、どちらも京都でも読み返したくなる。