見出し画像

レジ袋はサトウキビが原料でも生分解しません!バイオマスプラスチックと生分解性プラスチック違いを解説します。

7/1からレジ袋が有料化になりましたね。今日は、某大手メーカーで10年以上プラスチックの研究開発に携わったけど環境問題に心を痛めて辞めた元技術者が「バイオプラスチック」と「生分解性プラスチック」の違いを学術用語を避けてプラスチックの基本から分かり易く説明したいと思います。

そもそもプラスチックって何?

個人的にはこれでA4で10ページでも100ページでも語れるのですが、ここでは学術的な正確さを犠牲に非常に簡単に書きます。プラスチックの元々の意味は温かくなると柔らかくなるもののことです。普通の物質は加熱すると液体になります。即ち融けるです。温めると氷は水に、バターは融かしバターになります。しかし、プラスチックは温めるとチューインガムのように「流れないけど、自由に変形可能」という不思議な柔らかい物質となります。このような物質を総称してプラスチックと呼びます。プラスチックの素材としての最大の長所はこの柔らかくなる性質で、これによりそれまであった木製品、紙製品と比較するとずば抜けて、簡単にどんな形にも加工できるため広まって行きました。

初期の頃のプラスチックは「セルロイド」、「レーヨン」、「天然ゴム」のように植物由来のもの、「ベークライト」のように石炭酸由来ものがありました(もちろん、これらは今でもあります)。しかし、戦後に石油化学全盛の時代になり、価格が安く品質が安定しやすい石油から合成されたものがほとんどとなっていきます。このため、「プラスチック」はほとんど「石油から合成された柔らかくなるもの」という意味になりました。しかし、石油から合成されたプラスチックにはこれから話す2つの問題点があるため、近年バイオプラスチックが注目されています。

プラスチックの問題点① 丈夫にも程がある

プラスチック最大の利点であり、問題点となっているのは物理的にも微生物学的にも壊れにくい、になります。
プラスチックは軽くて丈夫です。例えば石、硝子、鉄鋼、塩の結晶のように普通の物質はある程度以上曲げると割れ、伸ばすと切れますが、プラスチックは加熱するともちろん、加熱しなくてもわずかに「流れないけど、自由に変形可能」という性質を持っているので、曲げても簡単には割れず、伸ばしても簡単には切れません。このため、多くの包装、容器等に使われております。
また、人が合成して作り出したプラスチックはそのほとんどが天然には存在しない化学構造をしており、自然界に存在する微生物がこれを分解することができません
これらの特徴により包装容器によく使われていますが、ごみとなったときは非常に厄介です。
「燃えないゴミ」として土中に埋められてもほとんどが原型を留めたまま分解されませんし、海洋に流れ出ると「海洋性プラスチック」として生態系に影響を与えます。

プラスチックの問題点② 原料の石油は有限な資源

今や、我々の暮らしはプラスチックなしには成り立ちません。しかし、プラスチックを作っている石油は過去の生物の化石です。地球が数億年かけて造り出した有限な資源です。使い続けていればいつか必ずなくなる日が来ます。
また、化石燃料である石油を掘り起こして最終的にはごみとして焼却されるため、プラスチック容器が温暖化の原因となっています。

今日の本題はこれら2つの問題が地球環境に及ぼす影響についてではないので、ぴょんさんのブログをご紹介させていただきます。

ではバイオプラスチックとは?

さて、そろそろ今日の本題であるバイオプラスチックの話をします。上記の2つの問題を解決しようと考えられたのがバイオプラスチックになります。

問題          答え
①丈夫にも程がある → 自然界で分解されればいい(生分解性)
②石油が有限な資源 → 再生可能な資源で造ればいい(植物由来)

①は生分解性プラスチックと言い、②はバイオマスプラスチックといいます。非常に厄介なのはこれら両方をバイオプラスチックと言います。表にすると下記の通り。

図1

一つだけ注意して欲しいのは④の植物由来で自然界で分解しないゾーンです。あとで説明しますが「植物由来≠自然界で分解する」です。「このレジ袋はトウモロコシ(サトウキビ)由来でできています」とうたっていても大概は④です。海をきれいにしたいなら①か②を選ばなくてはなりません。

プラスチックの全てが悪ではありません。あまり知られていない、エコなプラスチックもあります。一応①~④の代表選手たちとその成立ちをご紹介します。

①石油由来だけど自然界で分解する

このゾーンにはポリビニルアルコール、ビニロン等があります。ポリビニルアルコールは洗濯のり等になります。珍しい水溶性プラスチックであるため近年の海洋プラスチック汚染で再度注目を集めています。ビニロンは日本で発明されたプラスチックで、始めのころは繊維として今では衣類を包む袋に利用されています。
これらは石油由来ですが、化学構造が天然の高分子に似ているので微生物が分解してくれます
ただし、残念なことに価格等の問題もあり、あまり使われてはおりません。

②植物由来で自然界で分解する

あまり知られていませんが、衣類に使われているレーヨンやセロハンテープのセロハンは植物由来のプラスチックで、植物の時の化学構造をしたままなので自然界の微生物で分解します。これらはプラスチックの顔をしていますが、中身は完全に紙みたいなものです。
また、ポリ乳酸、PHA等、微生物をつかった広義の発酵で作られているプラスチックもあります。これらも全然メジャーではないですが開発、生産が進められております。
天然ゴムや天然樹脂を使った製品も植物由来で生分解します。ゴムの木から採取したゴムはゴム製品に広く使われていますし、松などから採取した松脂は塗料や接着剤に利用されています。
これらは自然が作った化学構造をしておりますので、微生物が分解できます。

③石油由来で自然界で分解しない

石油から合成されたプラスチックは通常自然界にはない化学構造をしているため、①は例外でこの③石油由来で自然界で分解しないがほとんどです。ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩ビ(PVC)、ポリスチレン(PS)、ナイロン等があります。現在、日本ではこの群にあるプラスチックが最も使われております。
以下のリンクで確認する限り、上から5番目まで約80%は少なくとも生分解しません。「その他」の中にもこれがあるので、実際は90%以上がこの③石油由来で自然界で分解しないになると思います。

先ほどゴムの木から採取したゴムは分解するといいましたが、石油から合成された合成ゴムは自然界に元々なかった構造をしているので自然界で分解しません。

④植物由来だけど自然界で分解しない

この群が意外かもしれません。普通は「このビニール袋はトウモロコシ(サトウキビ)からできています」、と書かれると生分解しそうな気がします。しかし、植物由来だけど、わざわざ石油由来プラスチックと全く同じ自然界には元々存在しない化学構造にしているため分解しません。植物の時はでんぷんなどの自然界にある構造ですが、発酵して合成してわざわざポリエチレンやポリプロピレンにしています。これらはバイオマスポリエチレンやバイオマスポリプロピレンと呼ばれています。
なぜわざわざ生分解しない自然界にない構造にしているのかというと、世の中の大部分を占めている③石油由来で自然界に分解しないプラスチックと混ぜたり、それを加工する機械をそのまま使って加工できるからです。
生分解はしませんが、これでも上記②石油が有限の資源でいつか使えなくなるという問題は解決しているからです。
ただし、このタイプのプラスチックは様々な問題を持ってます。まず、穀物の生産と運搬には多量の石油が消費されています。本当の意味で脱石油ができていません。また、全部がバイオマス由来でなく、25%以上含んでいればバイオマスプラスチックと名乗れます。75%石油でできていてもバイオマスです。さらに、バイオマスプラスチックは環境に優しいとされてレジ袋有料化の例外になっています。

しかし、これらを考えると本当に環境に優しいかは疑問が残ります。

正しく理解してから脱プラスチック

以上がバイオプラスチック全体の説明になります。タイトルの質問「バイオプラスチックと生分解性プラスチック違いとは?」に答えるとしたら、

バイオプラスチックは「海洋プラスチック汚染防止のために自然界の微生物で分解する生分解性プラスチック」と、「石油を使わずに植物由来であるバイオマスプラスチック」とを併せた言葉、となります。

環境に優しそうな商品ではなく、環境に優しい商品を買うためには正しい理解が欠かせません。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

昨日までの生活は多大なる地球の犠牲の上に成り立っています。
少しずつ、一歩ずつで構わないので、
今日、この時から持続可能な経済を目指しませんか。
あなたが変われば世界が変わる。

ホームページもよろしくお願いします。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?