細部のネガティブ、大胆なポジティブ:人生の二つの武器
諦観と許容:白と黒の対話
今回は、大遇和尚の一問一答からお話ししたいと思います。仏教の教えは『諦観(ていかん)』に集約されるということです。つまり、物事の本質を感情に左右されずに見抜くための修行とされています。それに対して、キリスト教では『許容(きょよう)』を目指すという、まったく異なるアプローチが存在します。仏教はすべてを跳ね返す「白」、キリスト教はすべてを包み込む「黒」という象徴的なイメージが浮かびます。(ちなみに、実際にこの二つの宗教が象徴する色が逆になっている点も興味深いですね。)
しかし、どちらの宗教にも共通しているのは「この世界のすべてをどう扱うか」という視点です。
私は個人的に『諦観』の方が好みだと感じています。物質主義の世界では、感情のコントロールが非常に難しくなりがちです。そのため、仏教のこの考え方は、誰にでも効く万能薬のような存在に思えます。(キリスト教の教えが特効薬だという話は、過去にnoteで何度か書いたことがありますね。)
「ネガティブはブレーキ」って本当? 精密すぎる視点の落とし穴
話の中で「ネガティブはブレーキ」という考え方が出てきますが、この捉え方をもう少し掘り下げてみると、それは『細かさ』に関係しているのではないかと感じます。これは、以前とても神経質でネガティブな上司と接したときに強く感じたことです。私自身も神経質な部分があるので、ある程度は共感できましたが、彼の場合はそれを感情にまんまと載せてしまっていました。過度な心配性で、いつもトラブルに巻き込まれているのです。彼はトラブル処理を担当するポジションにいたので、確認作業自体は当然のことなのですが、必要以上に確認を求めるあまり、スピードが落ち、決断が遅れるという事態に陥っていました。さらに、余計なところでブレーキをかけることで、かえって危険な場面もありました。(思い出すと、教習所で神経質な教官に無駄にブレーキを踏まれてイラっとしたことがありましたね。)
日本人の性格として、この細やかさが美徳とされています。もちろん大切なことですが、必要以上の細かさがあると、無駄な手間が増えてしまうことがあります。たとえば、東野圭吾の小説のように描写が細かすぎると、頭が景色にとらわれすぎてしまい、「で、結局何が言いたかった?」といった感じになりかねません。プロの作家であれば、その細かさが作品に深みを与えますが、これが日常生活で常に行われると、いくら時間があっても足りません。時空をねじ曲げる能力でもない限り、何も進まないまま人生が終わってしまうでしょう。
ネガティブが悪いわけではありません。細かく見なければならない場面は確かに重要です。ただ、それは最先端技術や命がかかっているような極限の場面に限るべきで、それ以外では力を抜かないと、肝心な場面で集中できなくなる可能性があります。
ポジティブの誤解:大胆さと精度の関係
「ポジティブ」というと、時に軽く見られがちですが、大胆さと雑さは全くの別物です。ポジティブとは、単に楽観的に振る舞うことではなく、計算に基づき、ギリギリのラインで勝負に出ることです。言葉通り「ハイリスク・ハイリターン」の考え方で、リスクを承知で動くことで、時に大きな成果を得ることができます。しかし、これを実行するには、しっかりとした基礎力が必要です。基礎がしっかり頭に入っているからこそ、どこで力を抜き、どこで力を入れるべきかが計算できるのです。これこそが、真の意味でのポジティブな姿勢だと思います。
一方、どちらかのスキルがすでに身についているのであれば、不足している部分を鍛えれば良いのではないでしょうか。私の場合、もともとポジティブな性質が強いため、話をすっ飛ばして聞く癖があります。そのため、意識して最後まで細かく話を聞くように心がけていますが、それでも時々すっ飛ばしてしまうことがあります。今後は、この「細かさ」を鍛える修行が必要だと感じています。
二刀流思考:細かさと大胆さの絶妙なバランス
人生や仕事において、細かさと大胆さ、この二つの性質は相反するように見えますが、実際にはどちらも重要な役割を果たしています。細かさは、私たちが正確に物事を見つめ、リスクを避けるための「ブレーキ」の役割を担います。一方で、大胆さは、リスクを承知で行動し、成長や成果を得るための「アクセル」として機能します。この二つを適切に使い分けることこそ、成功や充実した人生の鍵だと言えるでしょう。
ネガティブな思考、つまり細かさは、物事を詳細に分析し、誤りを最小限に抑えるために必要です。しかし、その細かさが過度に強調されると、決断が遅くなり、行動が制限されてしまいます。まるで、何度も確認するうちに前進が止まってしまうようなものです。特に、神経質で慎重すぎる人が時折陥りがちな状況です。この「過剰な細かさ」によって、時間やエネルギーを消耗し、結果として動けなくなることさえあります。
一方、ポジティブな思考、大胆さは、確かに時には無謀に見えることもあります。しかし、それは計算されたリスクの上で成り立っています。ポジティブとは、ただ楽観的であるという意味ではなく、しっかりとした基礎に基づいた自信を持ち、ギリギリのタイミングで勝負に出ることができる力です。大胆な行動が成功をもたらすことは多くありますが、その背景には、しっかりとした準備と分析が欠かせません。
どちらか一方に偏るのではなく、状況に応じてこの二つをうまく使い分けることが、二刀流思考の本質です。細かく見なければならないときにしっかりと精査し、いざというときに大胆に動く。そのバランスを取りながら、人生や仕事に取り組むことで、より高い成果や充実感を得られるのです。
ポジティブな思考を持つ私は、時に話を急いで聞き流してしまうことがありますが、最近では細かさの重要性を改めて感じています。細かさと大胆さ、この二つの相反する力を同時に磨き上げ、より柔軟で力強い思考を手に入れることが、私たちにとっての理想的な「二刀流」の姿なのかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございます、今日もいいことありますよ!