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♬とらねこ村の共同マガジン~歌詞のパティシエ~

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歌詞パティシエの武炭宏(Hiro)さんととらねこが共同運営する、音楽記事を専門的に扱うマガジンです。 歌詞、音楽動画、所感、ミュージックボックスなどを専門に載録します。 専門マガ…
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#音楽レビュー

コラボ企画<歌詞のパティシエ>

武炭宏(Hiro)さんとの共同企画です。 音楽ジャンルの記事を専門的に取り扱う共同マガジンです。 🎼歌詞のパティシエ コンセプト 音楽に関する記事を広める 管理人 武炭宏(Hiro) とらねこ 専門分野 ・歌詞 ・音楽動画 ・所感 ・ミュージックボックス ・その他それに準じるもの 活動頻度 ・月1回からの投稿 ・ときどき書いている音楽記事の投稿 参加方法 この記事にコメント下さい。 歌詞のパティシエで一緒に活動したい人は、気軽に声をかけてみて下さい。 ***

光と水が奏でる旋律 -ドビュッシーのソナタの美しさ

【金曜日は音楽の日】 音楽は、その自由に流れていく姿が水を思わせます。 私にとって、そんな水の自由さをもっとも連想させる音楽が、ドビュッシーの『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ』を聞いたことでした。 はじめて聞いた時、これ程自由で、しなやかな美しさに満ちた音楽が、この世に存在するのか、と衝撃を受けました。 風にそよぐようなハープとフルートの絡みから第一楽章は始まります。「牧歌」と名付けられたその始まりの、夢見るような美しさ。 ヴィオラ

甘酸っぱい歌の追憶 -ブリットポップ周辺を巡る随想

【金曜日は音楽の日】 音楽を聴く喜びの一つにメロディの良さがあります。 1990年代のイギリスを中心に起きた、通称ブリットポップの音楽は、素晴らしいメロディの楽曲の宝庫です。 今日はこの「ブリットポップ」について、思うことをいくつか書きます。といっても、私は実のところ、ブリットポップ全盛期でなく、後追いで好きになった面があります。 そこまでコアな作品を掘れるわけではないけど、あの総体の雰囲気が、何か今でも好きなのです。 ブリットポップの起源は、諸説あると思

晴れやかな喜びの試み -ベートーヴェン『田園交響曲』の魅力

【金曜日は音楽の日】 ベートーヴェンの交響曲の中でも第六番『田園』は、不思議な魅力に溢れています。 第五番『運命』や、第九交響曲ほどポピュラーではないけど、滋味と喜びに満ち、そして彼の交響曲中の、異色作でもある。それゆえに美しい作品です。 『運命』は、ベートーヴェンが名付けた題名ではない通称ですが、第六番はベートーヴェン自らが『田園交響曲』と名付けています。それだけではなく、各楽章に、サブタイトルもつけています。 第一楽章は、『田舎に着いて、朗らかな気分が

デュオの魅力 -音楽で対話することの良さ

【金曜日は音楽の日】 以前、私が面白く読んだ漫画に、新川直司の『四月は君の嘘』があります。 クラシック音楽を題材にして、アニメ化もしたこの作品。トラウマを抱えて弾けなくなった、元天才ピアニストの少年と、天真爛漫な凄腕ヴァイオリニストの少女の物語です。 興味深いのは、この作品がオーケストラでなく、ソリストでもなく、デュオを題材にしていることです。 オーケストラであれば、集団の中でいかに自分の色を出すか、いかにそれを統率するかという、個と全体との葛藤に

熱狂の魔術師 -天才指揮者カルロス・クライバーの魅惑

【金曜日は音楽の日】 指揮者というのは不思議な存在です。自分で楽器を演奏するわけでもないし、歌う訳でもない。 実のところ、ある程度実力のあるオーケストラなら、ベートーヴェンやブラームスの交響曲レベルは、指揮者がいなくても、破綻無しに演奏は出来ます。 指揮者の役割とは、その「演奏」に、プラスアルファを付け、真の「音楽」を創りあげることだとも言えます。 カルロス・クライバーは、強烈で熱狂的な「プラスアルファ」を創造することができた、最高の指揮者の一人でした

みんなに広がる私の歌 -ジェイムス・テイラーの魅力

【金曜日は音楽の日】 詩や歌の魅力の一つは、自分の個人的な感情が色々な人に伝わって、それが、皆のものになっていくことだと思います。 口ずさみやすいメロディがあれば、更にそれは広がりやすくなる。シンガー・ソングライターの魅力とは、そういうところにあるのでしょう。 ジェイムス・テイラーはそんな、口ずさめる歌を作り続けてきた素晴らしいシンガー・ソングライターの一人であり、私にとっても最愛の音楽家の一人です。 ジェイムス・テイラーは、1948年アメリカのボストン

山の音楽の魅惑 -ブルックナー『交響曲第5番』について

【金曜日は音楽の日】 ブルックナーは、クラシックの中でも、不思議な立ち位置にいる作曲家な気がします。 「嫌いなわけではないけど何となく苦手」という方と、熱烈に好きというファンに分かれる感じがしています。つまり、はっきりと人を挑発するような要素はないのだけど、何かとっつきずらい感じがする。 苦手な方や、まだ聞いたことのない方には、私は『交響曲第5番』をお薦めしたいです。 『交響曲第4番(ロマンチック)』が、一般的にはどちらかというと知名度が高いですが、『第

森の吟遊詩人たち -3人の美声ブリティッシュ・トラッド歌手

【金曜日は音楽の日】 私は時折、『ドラゴンクエスト』の影響はゲームだけでなく、ある種の心性にまで及んでいるのではないかと思ったりします。 つまり、ゲームシステムだけでなく、あの舞台のイメージが、人々の「ここではないどこか」のイメージの礎になっているのではないでしょうか。 ヨーロッパ中世の石造りの城、木でできた小屋の村の酒場、魔物や妖精が出る鬱蒼とした森。聖なる力を持つ剣、盾と鎧の装備と魔法、魔王の討伐。 こういったものが人をワクワクさせるのは、あのシリーズのイメー

魂が燃えて輝く -ライブ音楽名盤5選

音楽の魅力の一つに、ライブ演奏があります。勿論、録音スタジオで緻密に仕上げられた録音作品も素晴らしい。しかし、人が沢山いる前で演奏することは、演奏者には多大な負担をかけつつも、音楽に張りと緊張感を与えます。 今日はそんなライブを録音したライブアルバムの傑作を5つ紹介したいと思います。素晴らしいライブアルバムは沢山ありますが、今回の選考基準は、色々な仕掛けやハプニングによって、演者のポテンシャルが最大限までに発揮された作品、にしました。 また、いつもと違い、ジャンル

陽光の中の回想 -モーツァルト『ピアノ協奏曲27番』の美しさ

よく、自分の葬式で流してほしい曲、というアンケートがあります。私の場合何かと考えると、ロックやポップ音楽と別に、クラシックの中だと、多分モーツァルトのピアノ協奏曲27番(K595)を選ぶと思います。 この曲には、落ち着いた午後、かつての楽しかった過去を思い出しているような、甘美さと静寂があるからです。 第1楽章の導入。静かに弦が入り、麗しいメロディが奏でられます。しかし、長調の明るいメロディなのに、弾んだ感じはしません。『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』のあの爽や

明るく澄んだ舞踊曲 -ブラームス交響曲第2番の美しさ

音楽は目に見えないものだけど、強烈な雰囲気と力をもっていて、まるで色がついているかのように情景を描き、感情を揺さぶるものでもあります。 そうした音楽の中で、「透明な音楽」とは何かと聞かれたら、私はその中の一つに、ブラームスの交響曲第2番を挙げると思います。それは同時に、幸福な音楽でもあります。透明で明るくて、同時に踊れるくらい軽やかな音楽であり、何度聞いても幸福感を与えてくれます。 ヨハネス=ブラームスは、1833年ハンブルク生まれ。交響曲第2番は、1877年、彼が

夜風と流れ星が奏でる歌 -プッチーニの魅力【エッセイ#58】

『蝶々夫人』や、『トスカ』といったオペラで有名なプッチーニは、最もロマンチックな夜を描写できる音楽家の一人だと思っています。お涙頂戴のオペラ作家と思われがちですが、とてもそれだけには収まり切れない、濃密なロマンと高度な音楽性を持っている、非常に面白い作曲家です。 プッチーニ作品の夜は、二種類あります。一つは、人々が夜の街路に出て思い思い歩いている雑踏の夜。何といっても、『ボエーム』の第2幕、クリスマス・イブのカフェ前の街路。物売りや子供連れの母親や、恋人たち、子供たちがそれ

青春が微笑する -シューベルト交響曲第5番の美しさ【エッセイ#52】

青春の音楽とはどのようなものでしょうか。私が思う条件は、どこか憂鬱さと気怠さを持ちながらも、溌溂としていること。そうした二面性が若さの特徴だと思うからです。同時に、緩やかで華やかな踊りを導くような音楽であってほしい。青春とは躍動でもあるのですから。 そして、クラシックであれポップスであれ、どんなに明るい曲を作れる音楽家でも、そんな青春を感じさせる曲は案外少ないように思えます。それ程、溌溂さと憂鬱のバランスを保つのは難しいことなのでしょう。 シューベルトの交響曲5番は、