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大全集無視の戦闘力考察⑧~界王拳とインフレ問題~【ドラゴンボール考察】

題画出典:ドラゴンボール完全版20巻

前回の記事

前提

  • ドラゴンボール大全集やその他設定資料、アニメ版、劇場版、ゲーム作品、超などの続編作品、鳥山先生の談話等は無視し、原作漫画版の描写のみを正とする。(ただし、作中に判断材料が無い場合は参考に用いる)

基準

  • 全く手も足も出ず瞬殺される場合は1.8倍以上の差があるものとする。

  • ある程度戦えてはいるが勝ち目が薄いと思われる場合は1.4倍前後の差があるものとする。

引き続き、悟空とギニューの戦いにおける戦闘力、またナメック星時の界王拳のロジックや問題点について考察していきたい。


ギニュー戦闘時悟空の戦闘力

リクームの圧倒的な強さにより窮地に陥る中、ついに悟空が到着する。悟空はリクームを一撃で倒した後、ジースとバータ2人がかりの攻撃を軽くいなし、バータを戦闘不能へ追い込む。

悟空のスカウター計測の値は5000のままだが、攻撃に移る一瞬だけ気を上昇させるという、これまでに無い形の気のコントロールを行っていた。

出典:ドラゴンボール完全版19巻

そして最大戦闘力12万を誇るギニュー隊長との戦闘に移る。悟空はスピードではギニューを上回っていたが、ギニューの羽交い締めは本気で力を込めても外れなかった。

出典:ドラゴンボール完全版19巻

様子見後のギニューは本気で戦っていたはずで、12万近い力は出していたと思われる。この時の悟空はギニュー以下の力で戦っていたのだろう。
ギニューは悟空の真の力に対して「85000までは上がるはずだ」と予測をしていた。そのことも踏まえると、この時の悟空は70000程度の戦闘力と想定できそうだ。

しかしこの悟空を70000とした場合、1点矛盾が発生する。
70000程度だとリクームやバータを一瞬で倒したた描写に説明がつかなくなってしまうのだ(差が小さすぎてしまう)。

この点については、この時から界王拳の方式が変わっていたからだと推測できるだろう。悟空は瞬間的に界王拳の力の一端を引き出すことで70000よりもっと気を上げていたのだ。
(羽交い締めを振りほどけなかった描写については、ギニューには界王拳の力の”一端”では足りず、本格的な界王拳が必要だったということだろう)

そして、この「瞬間的な界王拳」こそが、この後のフリーザ戦も含め、悟空やベジータ、ピッコロが飛躍的に強くなったことの鍵を握っていると思うのである。

界王拳10倍とインフレ問題

この後、ナメック星の悟空の戦闘力を考察するにあたっては避けて通れない問題が存在する。

それは、界王拳10倍とインフレ問題である。

界王拳とは肉体が強くなればなるほど使用限界値が上がる技だ。悟空は宇宙船で修行を終えた際、「きっと10倍くらいの界王拳に耐えられる」と発言していた。

出典:ドラゴンボール完全版19巻

しかし、後のフリーザ戦で使用していたのは変わらず10倍界王拳だった。

出典:ドラゴンボール完全版21巻

悟空はフリーザ戦の前に瀕死から回復して力を上げており、肉体も強くなっているはずである。

出典:ドラゴンボール完全版21巻

それならば界王拳の限界値も上がって然るべきなのだが、限界値は上がっていなかった

もちろん悟空の読み違いの可能性もある。しかし既にベジータ戦で4倍まで経験済であるし、そこまで大きな読み違いは考えにくい。7~8倍は確実に使えたであろう。

そうなると瀕死復活後の強化幅は界王拳2~3倍の追加に耐えられる程度だった、ということになるのだが、そうすると今度は戦闘力値との辻褄が合わないのだ。

悟空はギニューに界王拳を見せた際、戦闘力を18万まで上昇させているが、

出典:ドラゴンボール完全版20巻

この時の界王拳の倍率が2倍だった場合、MAX戦闘力は7、8倍で70万前後になる。

しかし、悟空と戦った最終形態フリーザの戦闘力は最低でも数百万以上(※第2形態100万からの推測)なので、フリーザと戦える戦闘力に達するためには復活前の何倍かに強くなっていないといけない。だがそうするとやはり界王拳限界が10倍のままなのは不自然なのだ。

この描写にはいろいろな解釈があるだろう。
①どんなに肉体が強くても界王拳は10倍が限界説(しっぺ返しが無い倍率の場合)
②実はフリーザ戦15倍くらい使ってた説(界王様勘違い説)
③実は到着時は5倍くらいしか使えなかった説(悟空勘違い説)
④ギニューに見せたのは2倍ですら無い説(元々強かった&復活後はさほど強くなって無い説)

公式のドラゴンボール大全集で採用されているのは①もしくは③になる(明言はされていないが)。

それ自体は特に矛盾のある考え方ではないのだが、合わせて素の悟空の復活後戦闘力をベジータ超えの300万と設定してしまった結果、10倍界王拳で3000万、20倍で6000万、フリーザは1億2000万ととんでもないインフレを引き起こしてしまっている。

12万のギニューを振りほどけなかった悟空がだ、1回全快しただけで300万なのである。さらにそこから10倍界王拳で3000万なのである。
バトル漫画にインフレは付きものだが、それでもさすがにやり過ぎと言わざるを得ないだろう。
※なお、この値は鳥山先生ではなく編集部が後付で設定しているものになる

公式である以上、有無を言わさずそれが正しい答えではあるのだが、本考察はその「大全集を否定する」ことからスタートしている
そのため、本稿ではこの問題に対して別の解釈を考えていきたく、この先もお付き合いいただければ幸いだ。

界王拳ver1と界王拳ver2

さて、この問題を解決するにあたっては、以下の前提を抑えておきたい。

  • 気のコントロール手法は物語が進むごとに洗練されていっている。

  • 界王拳はあくまで気のコントロール手法の一つである

  • 気のコントロール自体は悟空以外もできている

こちらの記事で詳しく考察しているが、

肉体限界を超えられる界王拳は悟空しか使えなかったものの、「気の開放」「気の爆発」という概念で戦闘時に素の状態から何倍にも気を上げる手法は悟空以外もできていたと推測する。

そのため、100万を超えるであろうピッコロやベジータの戦闘力は「素ではなく気を爆発させた状態」であるということをここで前置きしておきたい。

さて、悟空に話を戻そう。

悟空はギニューに対して18万まで戦闘力を上げて見せたが、その後に「瞬間的に出せる力はまだまだこんなもんじゃねえ」と発言している。

出典:ドラゴンボール完全版20巻

このセリフからすると、悟空の限界が18万よりずっと上なのは間違いない。
しかし、よく考えるとこの時の悟空は「オラの全力はまだまだこんなもんじゃねえ」とは言っていない。こんなもんじゃないのは、あくまで「瞬間的に出せる力」だけである。
逆に言えば、「瞬間的以外で出せる力はこのくらいが限界だった」とも考えられるのではないか?

もし瞬間的に出せる力と瞬間的じゃなく出せる力が別々だとするならば、この時、悟空は2種類の界王拳を使い分けていたと定義できないだろうか。

ここではそれを便宜上、界王拳ver1と界王拳ver2と呼びたい。

ギニューに見せた常時力を上げる界王拳は従来型の界王拳(界王拳ver1)である。これは瞬間的ではなく体に力を込める形で発現するが、肉体への負担もあって最大で18万までしか上げられなかった。

しかし悟空はもう一つ、瞬間的に気を上げる新しいタイプの界王拳(界王拳ver2)を編み出していた。そちらなら体への負担を軽減しつつ、気を瞬間に先鋭化することで18万より遥か上まで気を上げることができたのだ。
恐らく悟空はベジータ戦での苦い経験から、界王拳の体への負担を軽減する方法を模索し、この瞬間的に気を上げる界王拳ver2に辿り着いたのだろう。

この界王拳ver2が使えていたということを根拠に、本考察ではナメック星到着時の悟空も既に相当に強かった(推定150万以上)、つまり、フリーザ戦前の復活後の上昇幅はそこまで劇的ではなく、だからこそ界王拳上限は10倍に留まったと推測したい。

そしてこの界王拳ver2こそが、後にピッコロが言及した「気の爆発」の正体ではないかと思うのである。

出典:ドラゴンボール完全版24巻

界王拳ver2とベジータの飛躍的向上

劇中、フリーザ戦の前後でベジータやピッコロ、悟飯は異常なほどのパワーアップを見せる。それぞれ瀕死からの回復や同化などの理由付けはあるのだが、それにしても上昇幅が大き過ぎるのだ。
そのような状況が発生したのは、この界王拳ver2から各自が気のコントロール手法を学んだことが大きいのではないかと推測する。

事実として、ベジータが異常に強くなったのは悟空の戦い方を見てからになる。
それまでは2度の瀕死からの復活にもかかわらず、20000→24000→36000の小幅上昇に留まっていた(※本考察基準)。
それが3度目の復活+悟空の戦いを見た後は、第1形態フリーザと力比べができるほどの強さ(数十万)になり、4度目の復活では推定100万以上のピッコロを上回るほどの力を得ている。

元から考えると異常な上昇っぷりなのだが、これは当初のベジータは未熟な気のコントロールしかできなかったが、瞬間に気を上げる界王拳ver2を見ることでコントロール技術が飛躍的に向上したためと考えれば筋が通る。

実際、ベジータは悟空の戦い方を観察、考察し、

出典:ドラゴンボール完全版19巻

何故なのか思慮を巡らせている。

出典:ドラゴンボール完全版19巻

ベジータは戦いの天才であることだし、これだけのヒントがあればモノにするのはけして難しくないだろう。

ベジータが界王拳を使えるようになったのかというとそれは違うと思うのだが(ベジータには悟空のように肉体限界を超えて力を出す描写は無かった)、界王拳ver2から学ぶことで、気のコントロール技術が劇的に上達したのは間違いないだろう。

また、ピッコロも悟空と同じように瞬間的に気を上げる戦い方(界王拳ver2と同様)をしていたと思われる。
以下はピッコロが到着した際の反応であるが、彼らはピッコロの気の大きさを感じとれていない。

出典:ドラゴンボール完全版21巻

そして攻撃を加えた後、ベジータはピッコロに対し「いや、いや、それ(フリーザ)以上だ・・!」と発言している。

初めに気が読み取れず、攻撃後に気を読み取ったという流れになっており、ピッコロは攻撃の瞬間だけ気を爆発させていたと考えて矛盾しない描写になる。

ちなみに、パワーアップ後ベジータの力も同じように読み取られなかったのだが、

出典:ドラゴンボール完全版21巻

フリーザの力の大きさは読み取られていた。

出典:ドラゴンボール完全版21巻

劇中、フリーザも戦闘力のコントロールができると言及されているのだが、フリーザのものは瞬間的なコントロールではなく、界王拳ver1のようなコントロール方法だったと推測できそうである。

結論として、地球の戦士たちの異常な戦闘力の上昇は、気のコントロールのイノベーター(革新者)である悟空の界王拳ver2の影響によるものだったと考えたい。

大全集インフレの阻止!

そしてベジータやピッコロが「気の爆発(=界王拳ver2と近しい技術)」によって気を上げていたと考えれば、設定上の過度なインフレを起こす必要も無くなるのだ。

大全集で素の悟空が300万とされていたのは、その値でないと界王拳未使用の悟空がベジータやピッコロより弱くなってしまうからである。

しかし本考察に沿って考えれば、ベジータやピッコロも素ではなく、あくまで気を爆発させた結果が100万超えであり、悟空と条件は同じなのだ。悟空も同じように界王拳で気を高めた結果、彼らを上回るというだけなのである。

この頃の戦士たちは皆、各々の方法で戦闘時に気を爆発させることが当然となっており、厳密には「素の戦闘力」という概念は存在しない。それなのに何故か悟空にだけ素の戦闘力の概念を持ち出したため、大全集の値は10倍界王拳で3000万などというおかしなことになっているのだ。

本考察の考え方に則れば、原作描写の整合性を保ちつつ、大全集のあまりにも異様なインフレは否定できるのではないだろうか。

悟空の界王拳戦闘力想定

最後にギニュー戦後の悟空の戦闘力想定をまとめておきたい。

界王拳の力の一端利用         → 7万~12万
従来の界王拳ver1限界値(倍率不明)  → 18万
界王拳ver2推測限界値(7倍?)      → 150万以上
フリーザ戦界王拳ver2限界値(10倍)  → 300万以上

                    ※公式値3000万
 
界王拳ver1での1倍ごとの上昇値 → 数万
界王拳ver2での1倍ごとの上昇値 → 十数万

フリーザ戦以降の具体的な戦闘力値は次回以降の考察で改めて推測するが、考え方としてはこのような形を採用して進めていきたいと思う。

余談

  • 瞬間で先鋭化させる界王拳ver2理論を採用した場合、界王拳ver1的なコントロールしかできなかったフリーザにはまだまだ伸びしろがあったということになる。後にドラゴンボール超にて、フリーザはたった4ヶ月の特訓で超サイヤ人ブルーを上回るゴールデンフリーザになることができたが、それもある意味納得かもしれない。

次回、悟空ギニュー~フリーザ編へ続く。


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