悟空以外の戦士は界王拳を使えたのか?~戦闘力のコントロールを考える~【ドラゴンボール考察】
界王拳とは、戦闘力を倍率で高めることができる技である。ただでさえ強力な上、自身が強くなればなるほど、可能な倍率が雪だるま式に上がっていくというチート級の技だ。
もっと劇中で多用されても良さそうだが、不思議と悟空以外が使う描写は見られない。特に界王様の元で修行した面々には会得のチャンスがあったにも関わらずである。
ただし、悟空以外の他の戦士にも「気の開放」や「気の爆発」などの表現で、界王拳と同じように劇的に気を上昇させる描写が見られる。
戦闘時に一時的に気を上げるという点では界王拳と同じだが、これは界王拳とは違うのであろうか?
今回は「界王拳を悟空以外が使うことができたのかどうか」について、戦闘力のコントロールとは何なのかを考えながら考察していきたい。
※なお、本稿ではアニメ版、続編作品、ゲーム、大全集、鳥山先生のコメント等の設定は使用せず、原作マンガ版の描写のみで考えます。
界王拳の特徴と気の爆発
界王拳の一番の特徴は、「技を使うと使用した倍率に応じ、元の力が何倍にもなる」という部分だろう。
劇中では以下のように説明されている。
実際の描写としても、パワー、スピード、防御力の大幅な向上が見て取れる。界王拳は「使用している間は基礎能力自体が全てアップする技」と考えて良さそうだ。
次に「気の増幅」について、ピッコロは以下のように発言していた。
この場面のピッコロは20号に限界近くまで気を吸われてたが、仙豆による回復後すぐに圧倒している。最低でも戦闘前の2倍以上に気が上昇したことは間違いないだろう。
ピッコロの言う「エネルギーを増幅して爆発させる」ということと、界王拳の「全ての気をコントロールして瞬間的に増幅させる」ということ。一見同じことを言っているようにも思えるが、この場面のピッコロは界王拳を使っていたのであろうか?
戦闘力のコントロールは洗練されていく
劇中、地球の戦士たちは「戦闘力のコントロール」ができる稀な種族であることが言及されているが、このコントロール方法は物語が進むごとに洗練されていっている描写がある。
以下はラディッツ戦の描写である。
ラディッツ戦の悟空は、かめはめ波を使用する瞬間に416から924まで上昇した。
ラディッツはこの場面について以下のように発言している。
この発言からすると、924は一点に集中した気の大きさを計測しており、打つ瞬間のみの値だと思われる。
実際に戦闘描写を見てみても、想定戦闘力1300前後のラディッツに終始圧倒されており、格闘の場面で924は出ていなかったはずだ。
この時点では、気を1点に集中する場合以外に、劇的に気を高めるようなコントロールはできなかったと考えられる。
次に、ナメック星の描写だ。
クリリンと悟飯がフリーザの配下と遭遇した際、以下のようなやりとりがされている。
悟飯とクリリンは気を抑えた状態から開放し、スカウター計測で1500程度の戦闘力まで上昇させている。全力を出している印象はないため、おそらく限界値はもっと上だろう。
この時彼らは1点に気を集中させていたわけではない。集中させることなく、全身の気を高めることができている。これは少なくともラディッツ戦の悟空、ピッコロにはできなかったことである。
クリリンと悟飯は宇宙船の中でイメージトレーニングの修行をずっとこなしていた。彼らは肉体的な強さではなく、気のコントロール手法をアップデートすることによって、より強い力が出せるように訓練していると考えられる。
その後、ギニュー特戦隊との戦いでも、このイメージトレーニングについて触れており、この修業が気の上昇効率の向上に寄与したことは間違い無さそうだ。
このように、気のコントロール方法は物語が進むごとに洗練されている様子が見て取れる。
悟空の界王拳のように劇的な描写がされなくとも、同じように戦闘時に気を上昇させることはできるようになっているのだ。
そして、20号戦のピッコロの描写である。
この時のピッコロは界王様の元で修行のち、3年に渡って悟空、悟飯と修行をした状態だ。
界王様の元にいたのは1週間程度だが、ピッコロの性格であれば、まっさきに界王拳のことを問い詰めているだろう。
滞在が短期間だったため会得自体は難しかったとしても、技の要点は掴んでいても不思議でない。
そして、界王拳の使い手である悟空との3年の修行である。
悟空は技を言語化して教えることは不得手と思われるが、それでも組手の中で一定のやり方は学んだはずだ。
それらを総合すると、ピッコロは「界王拳が使えた可能性はある」と見て問題ないだろう。
界王拳でしかできないこととは
それではピッコロは界王拳を使えたのだろうか?界王拳の特徴を中心に考えてみたい。
まず、界王拳の1つ目の特徴は、気を倍率で上げられることである。サイヤ人編では4倍、ナメック星編では20倍まで使用された。
ピッコロはナッパ戦での戦闘力は1220である。1200のサイバイマンを瞬殺したことから最大戦闘力は遥かに上と思われるが、それでも5000以上とは考えにくい。
そしてそこからネイルとの合体を経たとはいえ、フリーザ戦では一気に想定100万前後の値まで上昇している。
合体による強化が凄まじいものであったとしても、さすがにそれだけでは違和感があるほどの上昇幅であり、少なくともフリーザ戦の時点で相当な精度、それこそ界王拳10倍に匹敵するような気のコントロールができていたと考えなければ、この上昇は説明がつかないだろう。
少なくとも、気のコントロールという観点では、ピッコロは界王拳級の増幅が出来ていたと考えて矛盾は無さそうだ。
では次に界王拳のもう一つの特徴、「肉体への負担を度外視すれば限界を超えた力が出せる」という部分はどうだろうか。
悟空は界王拳を幾度も肉体の限界を超えた状態で使用し、大きなしっぺ返し(ダメージ)をくらっていた。
しかしピッコロも含めた悟空以外の戦士の状況を見ると、気を高めたことで消耗する描写はあれど、悟空のように肉体に「しっぺ返し」を受けた描写は無い。
一時的にでも限界を超える倍率で戦えることが界王拳の特徴と考えると、もし界王拳を使えるのであれば、ピッコロは窮地に陥った2回目のセル戦で限界を超える倍率を必ず使っていたはずだ。しかし、セル戦ではしっぺ返しの描写は無かった。そう考えると、ピッコロは界王拳自体は使えなかったと断言できるのではないだろうか。
界王様は悟空に対し、界王拳を「極められるかもしれん」という表現を使っていた。
この「極める」が何を指すのかの言及は無いが、劇中で悟空しかできなかったことこそが「肉体の限界を超えた範囲の気の上昇」である。それが界王拳を「極める」の意味であった可能性は高いだろう。
※界王様は肉体限界を超えることを良しとはしておらず、厳密には悟空も「極められなかった」のかもしれないが。
まとめ
まとめとして、本考察の結論は以下である。
界王拳のように気を何倍にも高める手法は、地球の戦士たち、少なくともピッコロはできるようになっていた可能性が高い。しかしそれは界王拳とは似て非なるものである。
界王拳の特徴である「肉体の限界以上に気を高めること」は悟空しかできなかったため、界王拳自体が使えたのは悟空だけの可能性が高い。
ピッコロは界王拳を使えていればフリーザやセルも瞬殺だった、という意見を目にすることがあるが、恐らくそれは違うだろう。ピッコロは界王拳自体は使えなかったが、界王拳級の気の増幅と爆発はできていたはずだ。そのため、界王拳が使えたとしても結果は劇的には変わらなかったと思われる。
余談
GBAのゲーム、ドラゴンボールZ 舞空闘劇では、クリリンが界王拳と元気玉を習得し、セルを倒すIFストーリーがある。劇中でもクリリンの気のコントロールセンスは際立っており、もしナメック星で死んだ際、すぐに生き返らずに界王様の元に行っていれば習得できた可能性もありそうだ。
GBのゲーム、ドラゴンボールZ 悟空激闘伝では、リアルタイムでBP(戦闘力)が変化し、技ボタンを長押ししている間は戦闘力が上昇、離すとその威力で攻撃するという描写があった。攻撃をするたびに戦闘力の表記がめまぐるしく変化し、原作の戦いになかなか近い秀逸な描写だったと思う。
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