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悟空以外の戦士は界王拳を使えたのか?~戦闘力のコントロールを考える~【ドラゴンボール考察】

界王拳とは、戦闘力を倍率で高めることができる技である。ただでさえ強力な上、自身が強くなればなるほど、可能な倍率が雪だるま式に上がっていくというチート級の技だ。

その強力さを思えばもっと劇中で多用されても良さそうなのだが、不思議と悟空以外が使う描写は見られない。特に界王様の元で修行した面々には会得のチャンスがあったにも関わらずである。

ただし、悟空以外の他の戦士にも「気の開放」や「気の爆発」などの表現で、界王拳と同じように劇的に気を上昇させる描写は見られる。戦闘時に一時的に気を上げるという点では界王拳と同じだが、これは界王拳とは違うのだうか?

今回は「界王拳を悟空以外が使うことができたのかどうか」について、戦闘力のコントロールとは何なのかを考えながら考察していきたい。

※なお、本稿ではアニメ版、続編作品、ゲーム、大全集、鳥山先生のコメント等の設定は使用せず、原作マンガ版の描写のみで考えます。

界王拳の特徴と気の爆発

界王拳の一番の特徴は、「技を使うと使用した倍率に応じ、元の力が何倍にもなる」という部分である。
劇中では以下のように説明されている。

カラダじゅうのすべての気をコントロールして瞬間的に増幅させるんだ
うまくいけば力(りき)もスピードも破壊力も防御力もぜんぶ なん倍にもなる・・・

出典:ドラゴンボール完全版16巻

実際の描写としても、パワー、スピード、防御力の大幅な向上が見て取れるため、界王拳は「使用している間は基礎能力自体が全てアップする技」と考えて良いだろう。

次に「気の増幅」について、ピッコロは以下のように発言していた。

おぼえておけ
オレたちは戦いで一気におまえたちのいうエネルギーを増幅してそいつを爆発させるんだ
そういうわけでさっき きさまがオレから奪ったエネルギーはしれたものだったのだ・・・・・・

出典:ドラゴンボール完全版24巻

この場面のピッコロは20号に限界近くまで気を吸われていたが、仙豆による回復後すぐに圧倒している。最低でも戦闘前の2倍以上に気が上昇したことは間違いないだろう。

ピッコロの言う「エネルギー(気)を増幅して爆発させる」ということと、界王拳の「全ての気をコントロールして瞬間的に増幅させる」ということ。一見同じことを言っているようにも思えるのだが、この場面のピッコロは界王拳を使っていたのだろうか?

戦闘力のコントロールは洗練されていく

劇中、地球の戦士たちは「戦闘力のコントロール」ができる稀な種族であることが言及されているが、このコントロール方法は物語が進むごとに洗練されていく様子が見て取れる。

以下はラディッツ戦の描写である。

カカロットのやつは416・・・!

出典:ドラゴンボール完全版14巻

バカなっ!!!戦闘力があがっていく!!!
戦闘力924・・・!!!

出典:ドラゴンボール完全版14巻

ラディッツ戦の悟空は、かめはめ波を使用する瞬間に416から924まで上昇した。
ラディッツはこの場面について以下のように発言している。

こいつ・・・!!
戦闘力を一点に集中させて たかめることが できるのか・・・!!!

出典:ドラゴンボール完全版14巻

この発言からすると、924は一点に集中した気の大きさを計測しており、打つ瞬間のみの値だと思われる。実際に戦闘描写を見てみても、想定戦闘力1300前後のラディッツに終始圧倒されており、格闘の場面で924は出ていなかっただろう。
この時点では、気を1点に集中する場合以外に、劇的に気を高めるようなコントロールはできなかったと考えられる。

次に、ナメック星の描写である。
クリリンと悟飯がフリーザの配下と遭遇した際、以下のようなやりとりがされていた。

けけけっみたかよ
こいつら戦闘力なんぞほとんどねえゴミだぜ

出典:ドラゴンボール完全版17巻

悟飯・・・気を開放しろ・・・!
こいつらたいしたヤツじゃない!

出典:ドラゴンボール完全版17巻

悟飯とクリリンは「戦闘力なんぞほとんどない」状態から気を開放し、スカウター計測で1500程度の戦闘力まで上昇させていた。(全力を出している印象はないため、おそらく限界値はもっと上だろう。)

この時、彼らは1点に気を集中させていたわけではない。彼らは1点に集中させずに全身の気を高めることができているのである。これは少なくともラディッツ戦の悟空、ピッコロにはできなかったことだろう。

その描写の前、宇宙船の中でクリリンと悟飯はイメージトレーニングの修行をこなしていたが、

出典:ドラゴンボール完全版17巻

恐らく彼らは気のコントロール手法をアップデートすることによって、より強い力が出せるように訓練していたのだと考えられる。
その後、ギニュー特戦隊との戦いでも、このイメージトレーニングについて触れられており、この修業が気の上昇効率の向上に寄与したことは間違い無いだろう。

悟飯 宇宙船でやったイメージトレーニングを思いだせ・・・

出典:ドラゴンボール完全版17巻

このように、地球の戦士たちの気のコントロール方法は物語が進むごとにアップデートされていっている
悟空の界王拳のように目立った描写がされなくとも、同じように戦闘時に気を上昇させることは誰もができるようになっていると推測できるだろう。

そして、20号戦のピッコロの描写である。

出典:ドラゴンボール完全版24巻

この時のピッコロは界王様の元で修行のち、3年に渡って悟空、悟飯と修行をした状態だった。
界王様の元にいたのは1週間程度だが、ピッコロの性格であれば、まっさきに界王拳のことを問い詰めているだろうし、会得自体は難しかったとしても、技の要点は掴んでいても不思議でない。
そして、界王拳の使い手である悟空と3年間の修行である。
悟空は技を言語化して教えることは不得手と思われるが、それでも組手の中で一定ノウハウは学んだはずだ。

それらを総合すると、ピッコロは「界王拳ないしは界王拳に準ずるような気の上昇」はできる可能性が高いと見て問題ないだろう。

界王拳でしかできないこととは

ではピッコロは界王拳自体を使えたのだろうか?界王拳の特徴を中心に考えてみたい。

まず、界王拳の1つ目の特徴は、「気を倍率で上げられる」ことである。サイヤ人編では4倍、ナメック星編では20倍まで使用されていた。

ピッコロのナッパ戦でのスカウター計測戦闘力は1220だった。1200のサイバイマンを瞬殺したことから最大戦闘力は遥かに上と思われるが、それでも5000以上とは考えにくい。
※参考までに以下の記事では3000と推測している

そしてそこからネイルとの合体を経たとはいえ、フリーザ戦では一気に想定100万前後の値まで上昇しているのだ。
※参考までに以下の記事では135万と推測している

その差、実に400倍以上のパワーアップになる。同化による強化が凄まじいものであったとしても、さすがにそれだけでは違和感があるほどの上昇幅だ。
後の神様との融合ではせいぜい数倍程度の強化に留まっている描写も考慮すると、フリーザ戦の時点で相当な精度、それこそ界王拳10倍に匹敵するような気のコントロールを会得していたと考えなければ、これほどのパワーアップは不可能だろう。
少なくとも、気のコントロールという観点では、ピッコロは界王拳級の増幅が出来ていたと考えて良いはずである。

では次に界王拳のもう一つの特徴、「肉体への負担を度外視すれば限界を超えた力が出せる」という部分はどうだろうか?

悟空は界王拳を幾度も肉体の限界を超えた状態で使用し、大きなしっぺ返し(ダメージ、もしくは気の減少)をくらっていた。しかし、ピッコロも含めた悟空以外の戦士の状況を見ると、気を放出して消耗する描写はあれど、悟空のように明確に「しっぺ返し」を受けた描写は無い

一時的にでも限界を超える倍率で戦えることが界王拳の特徴とするのなら、もし界王拳を使えるのであれば、ピッコロは窮地に陥った2回目のセル戦で限界を超える倍率を必ず使っていたはずである
しかし、セル戦ではしっぺ返しの描写は無かった。そのためピッコロは界王拳自体は使えなかったと考えたほうが妥当だろう。

界王様は悟空に対し、界王拳を「極められるかもしれん」という表現を使っていた。

あと118日ものこっている・・・
あいつなら極められるかもしれん!
か・・・界王拳を・・・・・・!!!

出典:ドラゴンボール完全版15巻

この「極める」が何を指すのかはわからないが、劇中で悟空しかできなかったことこそが「肉体の限界を超えた範囲の気の上昇」である。それが界王拳を「極める」の意味であった可能性は高い。
※界王様は肉体限界を超えることを良しとはしておらず、厳密には悟空も「極められなかった」のかもしれないが。

限界を超える描写が他に無い以上、「界王拳」という技自体は、悟空しかできなかったのではないだろうか。

まとめ

  • 界王拳のように気を何倍にも高める手法は、地球の戦士たち、少なくともピッコロはできるようになっていた可能性が高い。しかしそれは界王拳とは似て非なるものである。

  • 界王拳の特徴である「肉体の限界以上に気を高めること」は悟空しかできなかったため、界王拳自体が使えたのは悟空だけの可能性が高い。

ピッコロは界王拳を使えていればフリーザやセルも瞬殺だった、という意見を目にすることがあるがのだが、それは恐らく違うだろう。ピッコロは界王拳自体は使えなかったが界王拳級の気の増幅と爆発はできており、界王拳が使えたとしても、限界を超える分の強化のみに留まったと思われる。
(悟空が10倍MAX→限界超え20倍ができたので、ピッコロも界王拳が使えればMAX値の2倍くらいにはなったかもしれないが)

余談

  • GBAのゲーム、ドラゴンボールZ 舞空闘劇では、クリリンが界王拳と元気玉を習得し、セルを倒すIFストーリーがある。劇中でもクリリンの気のコントロールセンスは際立っており、もしナメック星で死んだ際、すぐに生き返らずに界王様の元に行っていれば習得できた可能性もありそうだ。

  • GBのゲーム、ドラゴンボールZ 悟空激闘伝では、リアルタイムでBP(戦闘力)が変化し、技ボタンを長押ししている間は戦闘力が上昇、離すとその威力で攻撃するという描写があった。攻撃をするたびに戦闘力の表記がめまぐるしく変化するという、原作の戦いになかなか近い秀逸な描写だったと思う。(あくまで演出だけで実際の攻撃力は変わらなかったのだが)

#ドラゴンボール

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