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your paradise hotel

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noteに初めて投稿したお話です。疲れた心と身体を癒すために、こんなホテルが現実にあったらと思って書きました。
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Your Paradise Hotel そして未来へ つながった点と線

土曜日の昼下がり、家族でお茶にしようと集まったとき 突然それは、テレビから聞こえてきた。 「特集 your paradise hotel, 開業半年にして話題のホテル。 現在、3か月先まで予約は埋まっていて、リピーターの方には しばらく待ってもらっている状況だそうです。」 「えっ! パラダイスホテル? 僕は、新人研修とうそをついて この前ここにいったよ。」 「なあ~だ。ひろと。あんたも?私は3か月前に泊まった。」 「だから姉さん、このごろ化粧が薄くなったんだ。」 「バ~カ

Your Paradise Hotel 第六話 新たな気づきと出会い

4人のその後 ② みおのこと みおは、インド古典舞踊を教えてくれるところを、ネットで探し いくつか見学に行った。 こんな時、東京はいいなと思う。地方だと習えるところがない 場合があるだろう。 みおは約一か月かけて、基礎をしっかり教えてくれる 雰囲気もいいところを選んだ。 踊っているときは夢中で、すべてを忘れる。 インドの古典音楽は、今までに全く耳にしたことのないものだ。 摩訶不思議な旋律と躍動感のあるリズム。 音楽に合わせステップを踏むと、心が軽くなるような気がする。

Your Paradise Hotel 第五話 心の余裕

4人のその後 ① たかしのこと たかしの仕事は、相変わらず納入業者や 得意先の訪問が多い。 だが前と違って、その意義を積極的にとらえるようになった。 担当者の笑顔に一瞬不安が見えたとき、業績悪化の問題を 抱えているのではないかと想像してみる。 もちろん企業としては利益追求は大事だ。 だが、関連する会社がともに伸びていかなければ、 その成功は続かない。 ある会社は売れない商品をたくさん抱え、困っていた。 お金にならない上に、倉庫代までかかってしまう。 そこでたかしは、その

your pradise Hotel 第四話 悩み多き職場

ひろとの場合 「君、今月も売り上げ最下位だぞ」 同僚のりくが、みんなの前で係長から注意されている。 先月もりくが最下位だった。だが僕もたいして変わらない。 僕は大学でマーケティング分析を学んだ。だがいざ職場に入ると そのような理論はふっ飛び、精神力の大切さを問う 旧態依然の組織だった。 りくは体育会系で明るいから、新入社員を代表して叱られている感がある。 でも係長、知っていますか? 明るい人ほど落ち込みやすいのです。 僕のように一見暗そうな人間が、実はしたたかな場合がある

your pradise Hotel 第三話 スマホが置けない

みおの場合 公園のベンチに座り、今日も菓子パンと紅茶だけの昼食だ。 週末に行くおしゃれなカフェ。人気店の映えるスイーツを インスタにあげるため、昼食代を切り詰めている。 こんなことをして身体にいいわけはない。だけど フォロワーが増え、どんどんエスカレートしていく。 だんだんかぶった仮面がはずれなくなり、自分の実際の 顔がわからなくなってきた。それは心理面だけではない。 もともとみおは、目鼻立ちがはっきりしているが、 作り込んだ化粧で人形のように見える。また笑顔も 人工

Your Paradise Hotel 第二話 色の無い日々

まゆみの場合 目覚ましの音が鳴ったが今日も体が重い。この頃起きるときに 時々めまいを感じることもある。 主婦の代わりはいない。誰かが 「朝食ができたよ。温かいうちに食べて。」 とほほ笑んでくれたら。どんなにうれしいだろう。 まゆみはよろよろと起き上がった。 娘はいい大人だが、食事は全く作らない。 これにはまゆみにも原因がある。 自分のスタイルがあるので あっちこっちに調味料や鍋を置かれるのがいやで 「いいよ。お母さんがするから。」と断ってきた。 どうにか朝食を作ってみ

Your Paradise Hotel 第一話 自分は何者なのか

プロローグ    あなたにとって『天国のようなホテル』とはどんなところですか。外国産のリネンを使った極上のベッド。一流シェフの作る豪華な食事。美しい調度品。スタッフのきびきびとした洗練されたサービス。    そういったものを想像されるのであれば、私共のホテルの印象は初め全くの期待外れと思われるかもしれません。しかし3日間のご滞在を通してあなた様の今後の人生が変わる可能性があるのです。    ただご心配には及びません。私たちがある考えを皆様方に押し付けるのではありません。お客様