見出し画像

Your Paradise Hotel 第六話 新たな気づきと出会い

4人のその後 ②

みおのこと

みおは、インド古典舞踊を教えてくれるところを、ネットで探し
いくつか見学に行った。

こんな時、東京はいいなと思う。地方だと習えるところがない
場合があるだろう。

みおは約一か月かけて、基礎をしっかり教えてくれる
雰囲気もいいところを選んだ。
踊っているときは夢中で、すべてを忘れる。
インドの古典音楽は、今までに全く耳にしたことのないものだ。
摩訶不思議な旋律と躍動感のあるリズム。
音楽に合わせステップを踏むと、心が軽くなるような気がする。

始めみおは、ステップや手の動きを頭で考えようとしたが、とても難しい。
そこで思考で理解するのをやめ、感覚を大切にするようにした。

そんなとき、教室で習い始めたばかりのまなみと出会った。
年もあまり変わらず、話しやすい。 
ほわーんとしたその印象はみおとは対照的だ。

そのまなみは、踊るときには何かが乗り移ったようになる。
彼女を知っている人が踊る姿を見たら、きっと腰を抜かすだろう。

激しい曲を踊るときには、まなじりを上げ、エネルギッシュに
ステップを踏む。どこにあのパワーが隠れているのだろう。

「みお、いい加減にして~。それはやりすぎだよ~。」
と笑いながらゆったり話す様子とは、真逆だ。

だから、みおは思った。
踊るときのまなみが、本質なのだろう。まるで炎のようだ。
でもそのパワーを日常でも出してしまうと、
生活が破綻してしまいかねない。
「裏表がある」ということではなく、彼女にとっては2つで
バランスをとることが必要なのだ。

まなみにとって『踊ることは生きること』そのものなのであろう。
だからその情熱とエネルギーに、見るものはくぎ付けになって
しまうのかもしれない。

私は「映えスイーツ」をネットにあげることをやめた。
ただ最近料理に興味が出てきたので、家でスイーツを作ってみよう。
そしてこれまでの経験を生かし「綺麗」「美味しさ」「驚き」を
キーワードに『家でできる簡単、おしゃれなスイーツづくり』を
発信していこうと考えている。


ひろとのこと

ひろとの生活にも少しずつ変化がでてきた。
微妙な味わいが分からなかった彼も、3日間のホテル滞在で、
味覚が呼び覚まされたように感じた。

会社を見回すと、係長とりくの月末のやり取りは、
お笑いのネタのようなものだと気づいた。

係長も上からいわれて、お決まりの叱咤激励をしているのだろう。
りくも自分の役割を心得て演じているようだ。
聞けば、年は離れているが、同じ大学サークルの先輩、後輩らしい。

あ~あ、よかった。僕の知り合いにりくと似たタイプがいて、
はじめは笑っていたのに、後から精神的にまいってしまった。
だから、心配していたんだ。

あと5年で転職すると期限を決めたので、会社に行くのが面白くなった。
前は「意味がない。」「つまらない。」と考えていた小さな業務も
「これとこれとはつながっている。」「このことは簡単だと
思われているが、慎重に対応しないとあとあと大きな問題に
発展するかもしれない。」
と気づくようになってきた。

「これは、こうだ。」と断言する人は魅力的だし、わかりやすい。
でも世の中は、そう簡単なものではない。
ばっさりと切り捨てたものの中に、宝が埋もれていることがありそうだ。

そのように考えるようになったひろとは、反省した。
精神論を古いものと決めつけ、すべてを切り捨てたことを。

ひろとが学んだマーケティング分析は、顧客のニーズをつかむ
助けにはなるが、すべてではない。
人は時として、理屈を超えた「情」で動くことがある。
だから、商品開発において「これを手にする人を笑顔にする。」
と願いを共有することで、新たな着想をもつこともあるだろう。

重要なのは、詳しい分析とインスピレーションのバランスである。
現在のヒット商品の中にも、後者に力点を置いたものが
結構あるように思う。

これからは何でも簡単に「いい」「悪い」を判断せずに
本質に目を向けるようにしたい。

プラモデルのイベントでたくみとそうたに出会った。
ものづくりに没頭するそうた。社交的で交友関係のひろいたくみ。
分析が好きでけっこうお金にシビアな僕。

今はイベントで情報交換するのが、楽しいだけだ。
まだ、将来のことは何も決まっていないが、
3人がタッグを組めば、チームとして
面白いものができそうな予感がする。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?