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小説 ひよこ第10話~初恋暴走編3~屋上の風景

翌日も学校から帰宅後父の病院に向かう。

母に親父の病院に行くと告げて、
何か持っていく物があるか聞くと、
目が点になった。

病院の階段を一段飛ばしで登り、父の病室へ向かう。

昭和は警備などゆるゆるなので病室まで直通である。なにせ漫画のタンコ本に作者の住所が堂々と書かれている時代だった。よく漫画家の先生は無事だったものだと今なら思う。アパート名まで書いてあった。きっと色々あったんだろうなと今の僕は思ったりする。

「お父さん、元気?。」ベットで週刊誌を読んでいた父に声を掛けたら目が点になって「おお。」と答えた。
「家で何かあったのか?。」「なにもないよ。」
「ハンカチ頼まれたから渡しとくね。」
「おお。」目が点のままだ。
お見舞いは子の義務なのに皆失礼な態度だ。
チラチラキョロキョロと探す。
まだ昼時間進行でカーテンは開いていた。
隣の窓際のお爺さんは寝ていた。

仕方なくパイプ椅子に座り父と話す。
「その週刊誌には何が書いてたの?。」

20分程して父が【今年のプロ野球のペナントレース】について熱く語っているのを全く興味なく聞いていると、

薫子お姉さんがやって来た。

僕と父に軽く手を降ってお隣のベッドへ。

僕の頭の中にまた何か咲いた。

「選手の層をもっと厚くしてだな……。」
下を向いてモジモジしながら、
BGMを聞く。

カオルコお姉さんが全体のカーテンを少し占めた。初夏の日差しが少しだけお昼寝の邪魔をしていた。お姉さんは病院の近くの会社に勤めていて、毎日お母さんのお父さんのお見舞いに来ると昨日聞いた。

「ピッチャーの増強を考えなくちゃだな、……」
邪魔なBGMの音を消したい。
美しいモノにあってない。

しばらくして、
「良かったらどうぞ。」
とカオルコお姉さんが、剥いた梨をお皿に乗せて渡しに来てくれた。花のお皿。
僕の前を通るときは、またほのかにいい匂いがした。

疲れて少し音が小さくなっていたBGMが、
「カオルちゃん、ありがとう。」
と鳴った。

そんなことが1週間程続いた。
カオルコお姉さんが来ない日も1日あって、お爺さんに聞いて来ないと分かると2分で帰った。
大体5時半頃来ると研究で解った。
家に着くと暗くなっていた日が暮れなくなった。

土曜日の半ドンが終わり母の特製ナポリタンスパゲティを食べて、リビングでゴロゴロして弟と漫画やボードゲーム・オセロなどをしていると、母が病院に行く準備を始めた。
つかみ合いの軽い小競り合いを弟と繰り広げていた僕は、
「病院に行くの?僕も行く。」と言った。
「ずるい。兄ちゃんは毎日行くんだから、僕が一緒に行く。」弟が言った。また軽い睨みあいになった。

「みんなで行けばいいでしょ。やめなさい。」

我が家のオンボロバンに乗り込んで3人で病院に向かった。楽だった、病院まで自転車で1時間ぐらいかかるから。

病院に付くと母は1週間で溜まった洗濯物を病院内のランドリーで洗濯すると父に告げた。毎日僕が洗濯物を持って帰っていたが、それでも溜まってはいた。お姉さんはまだいないはずの時間だった。

洗濯が終わりかごに入れて屋上の干し場に向かう。エレベーターでなく階段でエッチラ向かう。患者用エレベーターは一つしかなく、待ち時間も長いので不便だったからだ。
弟は初めて来た6人部屋の父の病室の新たな暇つぶしのヒーローに早くもなっていて、仮面ライダーシリーズ変身ポーズなどの披露で忙しく、付いてこなかった。

母が洗濯物を干し始めた屋上の干場に、

いないはずのカオルコお姉さんがいた。

お母さんらしき人と少し離れて、
屋上から手すり越しに風景を観ていた。

初夏の風が屋上を静かに吹き抜ける中、
僕に気が付き小さく手を降る。
サラサラの肩まである髪が風に揺れている。


僕は迷わずお姉さんに近づいて行った。




(修正校了第2稿。4へ続く。)

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繋ぎの説明話となりますので、あまり面白くないかも?!ですが、宜しくお願いいたします。
次回は大きく進展する予定であります。

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