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小説 (新作)ショートショート めざせポケモンマスター

「お母さん、友達がたくさん欲しいの。」


夕食の唐揚げで一杯やっていると小2だった娘が言い出した。

うーん。

家族みんなが考えている。

「まず、話しかけてみる。様子を観てみる。仲間になってくれそうかなって考えてみるの。」

しばらくして嫁がひねり出した。
いいぞ、親の面目が立ったな。
ビールを呑みながら思案しているフリをしていた私は嫁に声援を送った。

「ポケモン?。」

キラキラした目で娘が母を見る。

「そ、そうよ。ポ、ポケモンの捕まえ方に近いわね。よく思いついたわね。」

さも知っていた風に嫁が答えた。
ぜったい今、思い付いただろ。

「まず、静かに近づくの。そして話しかける。驚かしちゃだめよ。逃げるから。」

「話しかけて答えてくれたら、笑うの。笑っとけば、間違えないわ。」

「話が出来たら言うの。」

「あなたいい人ね。」

「早くモンスターボール、早く投げて!。」
小6の兄貴も乗ってきた。

なんだこの家族。
これでいいのか?!。

友達の作り方がこの年になっても、全く解らない、歪んだ父が思案顔で実は真剣に聞く。

「いいボールがいいわね。友達にほしい子なら、シールとかあげてみる?」

現物かよ!。
ぶっとんでるな!。

「うん、解った。」

なにを理解したんだ!。父には謎だ。
斜め前を見ると兄貴も満足そうだ。

よし!ここは父もゲーム好きとして満足したフリをしておこう。
それぞれの想いをのせ、

家族全員頷きながら納得した。


翌日の夕食前、
娘が高らかに宣言した。

「今日友達が出来ました!。」

マジか!マジなのか!。
ビールを取りに行った冷蔵庫前で、
父は佇んだ。

「ポケモンゲットだぜ!。」
新学期の子供達がお祭り騒ぎだ。

嫁は帰宅した娘から既に話を聞いていたのであろう。満足気に何度も頷く。
ジムリーダーの風格が漂う。

なんだよ、良かったじゃん。
父はコップにビールを注いだ。


翌日、仕事現場に向かう。
「ボン、この子が最近入った若者です。」
建築現場総監督のヒロシひろしのおじさんが真剣な目付きで言った。

ボンはやめてほしい。
何度もお願いしてるが聞いてくれない。

「ボンはボンです。そしてワシは棟梁のヒロシひろしです。この前役所で……」

もういいです。子供の時からさすがにリピートしすぎです。若者に鉄板の話を披露している。

緊張気味の新加入の若手を見た。
いい男だ。うちは古い大工が多いから勉強にはなるぞ。うるさいけどウザイけど大丈夫?。

「宜しくね。俺は建設関係の仕事が多いから、あまりコッチには来ないけど解らないことがあったら本店にも来てな。たぶん居るから。」

「はい!。」

いい若者だ。いい戦力になるだろう。
希望の目で私を見てくる。

バッグを探り、言った。
「飴ちゃんいる?。」
袋ごと渡した。
「工具とかもあるよ。良かったら相談に来てね。」
棟梁が呆れた目で見てくる。


1週間待ったが若者は来なかった。
チ、俺だけゲット出来ないじゃないか!、

お母さんの嘘つき!。



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