「蛮勇」

 カマキリがいた。十二月だというのに草陰で鎌を揃えていた。冬眠しない我々ですら恐れおおののくこの季節に立っていたのだ。土で眠るはずの彼がここにいるのだ。

 愚か以外の何物でもない。されどその蛮勇さにどこか憧れすら抱いた。僕らの社会でいう成功者と言われる人達もきっとこの類なのだろう。愚かで勇敢。恐れはあっても退かない。

 その小さな背中に収まりきらないオーラがカマキリから出ていた。僕はその姿に感動を覚えていると、カマキリが草陰から出て来た。

 その瞬間、目の前を自転車が通った。カマキリは潰れてしまった。生前の荒々しさはなく、緑の肉塊が残った。

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