「お姫様が転がっていた」

 僕はびっくりした。公園のベンチで綺麗なお姉さんが寝転んでいたからだ。お姉さんが絵本で見たような綺麗な衣装を着ていた。動物みたいな唸り声を出していて、寝ている。

 ふとお姉さんと目があった。

「お、おう。少年。邪魔だったかい?」

「ううん。寝てたから心配になっただけ」

「そっか。優しいね」
 お姉さんが眠そうな目をこすって微笑んだ。

「お水飲む?」

「いいの!」
 僕が水を渡すとお姉さんは息を吹き返したように水筒に飛びついた。喉を鳴らして、水を飲んだ。

「ありがとう! いやー 優しいね! 少年は!」

「どうも」

「少年はなんでここに?」

「家だと退屈だから。お姉さんは?」

「私はお仕事の帰り! でも疲れたから寝てた! あははあは!」
 なんかすごく楽しそうな人だな。

「さて、私はもう帰ろうかな! ありがとう! 少年!」
 お姉さんはそう言うとベンチから立ち上がって、走って行った。その時、お姉さんのポケットから何かが落ちた。

 名刺だった。漢字が多くてよくわからなかったが、キラキラしていたから持って帰ることにした。

家に着いて名刺をリヒングの机の上に置いて、くつろいでいると遠くの方で母の怒号と父のうめき声が聞こえた。

 


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