「罪を泳ぐ」
顔に被せた帽子の編み目から差し込む陽の光で目を覚ました。
帽子を剥がすと何とも美しい空が広がっていた。
下を見ると水底で寂しそうに立っているビルの数々が見える。
かつては人間達が我が物顔で闊歩していた街。今では魚達の住処になっている。
何年も前から振り続けた雨と水害の影響だ。
小舟の上での生活を初めて三年近く。今のところ、僕以外の人がいない。
だから今日も今日と古傷だらけの腕でひたすらに小舟を漕ぐ。
この腕を見るたびに思うことがある。もしかしてこれは罰なのかもしれない。
自分を蔑ろにし続けて、他人も害してしまった。そういう罪であり、それに対する罰。
でも仮にそうだとしたら何故、僕だけなんだ。何故、僕だけ生き残ってしまったのだ。
遠くの方で大きな水飛沫が聞こえた。我が物顔で泳いでいるシャチの群れがいた。
「さて、どこに行こうかなー」
新世界の覇者を横目に僕はオールを力を込めた。
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