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見ちゃう 言っちゃう 聞いちゃう

ずっと独り言を言っている年配女性。気になるし、気味が悪い。
当選結果が記してある表を見ながら呟いている。物の隙間からそっと観察する。《見ちゃう》
とくに変なところはないのだが、あまりにも長時間いるし、ブツブツ言っているので、
『どうかなさいました?』声をかけてみる。《言っちゃう 聞いちゃう》
気色ばんだ顔で
『いいの、いいの!時間潰しなんだからぁ!』
(時間潰し?あ〜そうですか。ごゆっくりどーぞ。時間の潰し方なんて他にもいくらでも…)


普段私は、日に何十枚と受け取る申し込みカードを見ていない。
受け取ったら機械へ。
機械から発券されたらお客さんへ。流れ作業のようなものだ。
あるとき、ふと、受け取ったカードに目がいった。《見ちゃう》
ロト6。左側縦が真っ直ぐに塗りつぶされていた。
ん?
右側も縦に真っ直ぐ塗りつぶされている。
ん?
「1.2.3.4.5.6」「35.36.37.38.39.40」
書き直すのが面倒くさい、または願掛け、などの理由で、同じカードをボロボロになるまで使う人がよくいる。
その縦1列に塗りつぶされているカードも年季が入っていた。

ロト6。1〜6を選んでいる。持ち主はおじいちゃん。
『いつもこの数字で買ってるんですか〜?』《聞いちゃう》
『そうそう、10年以上!』ニコニコしながらそう言いきった。
『これって、なかなか来ない数字じゃないですか?』可笑しくなってくる。
こんなストロングスタイルな買い方を10年以上続けているってすごい!(笑)
笑い過ぎてちゃんと話せなくなってしまった。
おじいちゃんもケラケラ笑っている。
『だって〜、1.2.3.4.5.6なんて、ねぇ?こなそうじゃないですかぁ?35〜40もなかなかきそうもないですよねぇ?』《言っちゃう》
『たぶんオレが死んだあともこないと思うよ、ワーッハッハッハ〜』
『じゃあなんで?じゃあなんでこの数字を買ってるの?』
『わからない、なんとなく。いつかくると思って。アーッハッハッハ〜』
笑いすぎ涙で、視界が霞む。


ほろ酔いお兄さんが、『これ見てよ〜、お姉さんの率直なご意見をお聞かせください』ナンバーズ4の申し込みカードを渡してきた。
(率直なって…そんな大層なものでもないような)
『俺の選んだ数字どぉ?』《見てあげましょう》
「5656」『これはなんで?』《聞いてあげる》
『さっき雷鳴ってたでしょう』
「3167」『これは?』
『僕の借りてる駐輪場の番号プラス、ラッキー7』
『ふ〜ん』
「3958」『これはな〜に?』
『サンキュー!強情でバカな俺!どーお?』
なるほど。
《言っちゃう》
『いいんじゃないんですかねぇ、5963ご苦労さんてことにしておきましょうか?』
『お姉さんうまいな〜、アハハハッ、アハハハッ』お兄さんめちゃくちゃ笑ってる。
そこまでおもしろくもないけど、喜んでいただいているようなので、ま、いっか。

皆様、当たるといいですね〜。laugh!




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