「億」のは〜なし。

『あのさ、宝くじなんか当たらない!とか言う人達っているじゃない。そういうこと言ってるヤツらって、なにも知らないんだよな。賢い人はさ、当たりが高額になればなるほど、当たったなんて、人には言わないから。黙ってるもんだよ、賢い人はね!』50代くらいの、別段賢そうにも見えないスーツ姿の男性が話しかけてきた。

(なんですか?俺は当たったことがあるんだよ!とでも言いたいんですか?)

なぜか急に、突如として、その男性の話しかけに興味を失くした。
話しを長引かせたくないときの常套句。
『へぇ〜そうなんですね〜』で、締めくくりにもっていく。

接客業だから、接客業務はきっちりこなすけど、(可能な限りのスマイルで。笑)プラスの世間話には、こちらにも気分というものがある。
初対面のお客さんに話しかけられ、話しが弾むか弾まないかは、状況、雰囲気、ノリ、フィーリング、その他色々。
さぁさぁ、世間話しましょう!と、いうものではないですしね。

60代くらいの男性。
『ったく、政治家なんてさ…』とか『派閥なんて、仲良しごっこしてんなっつーの』等々…政治に対する愚痴をこぼしていた。
『だから俺なんか、あわよくば、と思って宝くじ買ってんだよ。
それにしても、二階ってさぁ、あいつ…ありゃ、ヨーダだな。
耳デカくしたらそっくりだよ、ワハハハッ』なんて言うお客さんと、一緒になって笑ってしまった。

売り場販売で出た高額当選のリスト。
どこの売り場で、◯百万円、◯千万円、◯億円が出たのかが分かる。 
へぇ〜。すごいなぁ。他人事なので、リストを見ても、こんな程度の感想しか出てこない。

『◯億円当たったら、、あれもしたい、これもしたい、あれ買って、これ買って…』と、沢山の人の、沢山の夢を日々聞いている。
皆、夢を買っているのだ。

私の知っている二つの「億」話。

⚫︎ 散財で消えた「億」

見事なくらい散財して、すっからかんになった男性。
40代前半。ラフな格好でふらりとやって来て、慣れた様子で、ささっとロトを購入。
彼の買い方は、街で宝くじ売り場を見かけたら必ず買う。
使う金額は二千円以内。ロトしか買わない。自分で数字は選ばない。以上。
この買い方で二度、◯億円と◯千万円の高額当選をしたそうだ。
その他にも◯十万円は何回も当たっていると言う。
俄然、興味が湧く。
いろいろ質問をしてみた。 
彼が「億」をどのように使ったのか。
酒と女に使い果たしたのだ。
キャバクラと、お酒が大好きだと言う。
お姉ちゃん達に、マンション、車、ブランド品を買ってあげたり、チップを渡し、同伴にも注ぎ込む。
キャバクラ、キャバクラ関連だけではない。
お酒が好きなので、毎晩飲み歩く、奢る。
豪遊に豪遊を重ねて、彼が言うところの「泡銭」を使い果たしたのだと言う。
『自分の家はあるの?自分の家は買わなかったの?』
『無いよ。買わなかった。欲しくないから』現在彼は、寮付きの現場仕事に従事していると言う。
『お金の使い道、後悔はしていないんですか?』
『してないよ。俺ね、たぶんまた当たる気がするから大丈夫。人生、なんとかなるもんっすよ〜』ニコニコ話す彼は、憎めない笑顔。愛嬌たっぷりの破天荒男だった。よっ!破天荒!

⚫︎ 眠っている「億」

友だちに食事に誘われた。
お酒を飲みながら、ひとしきり近況報告をした後、友だちが急に真面目な顔つきになって切り出してきた。
『あのさ、◯◯にある宝くじの売り場で、◯億円出たでしょ?』
発表から時間も経っているし、すでにその売り場には「ここの売り場から、◯億円が出ました!」の派手なポップも出ているのだから、答えても構わない。
『うん。そうだね、出たねぇ』
『それ、当てたの、うちの社長なんだよ』
『えーーーっ、そうなの?なんで分かったの?』
『だって、社長が自分で言ってるから。うちの社長、宝くじ買うのが趣味なんだよ。それと競馬ね』
親族経営の小さな会社で働く友だちの話しによると、社長は「億」という当選金を、自分の会社で働いている子ども達にもあげようとして、『いらない』と言われたそうだ。(当選金を家族や友人で分けあったりする場合、贈与税が絡んでくる)
友達は
『育ちの違いを実感したわ!生まれながらのお金持ちってさ、お金に執着がないのよね!今夜は奢るよ〜、給料上がったから』
『やった!ご馳走様でーす。おかわり頼んでいーい?』
『どーぞー!』やけに気前がいい(笑)

『◯億円はね、今、行き場もなく、銀行に寝かされたままなんだよ。社長、給料上げてくれたし、鰻食べに連れていってくれたんだ〜、ケチケチしていない人だから、お金に好かれるのかなぁ…?
でもさ、な〜んで、お金持ちに当たるわけ?ずるくない?』酔ってきてる(笑)

宝くじって、ちょっとは夢がある。と、思う。
知らんけど。


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