阪大短歌会

阪大短歌会

最近の記事

【死の対義語】

死んではいけない理由は何か?生きるに値して繋ぎ止めるものは何か? きっと人は生きる以上、死んでしまう以上コレにのしかかられてまんじりともできない夜を経験する。自分の今回の本義は、死にたい夜という内向的でシックな悩みに寄り添うものではなく、死の対抗馬、ある意味の対義語は何かということである。 先に言う。自分の考えでは「想像力」だ。 この場合の「死の対義語」というのは、ヒーローに対するヴィラン、ご飯に対するパン、巨人に対する阪神である。いきおい、死の反対ッ側にあるのは「生」だろ

    • 【流れ星の正体】

      龍がもし生きてるとして、死んだとして、 長い死体は落ちてきて きっとジャマになる

      • 【神託】

        龍が言う、人と仲良くしなさいと うるせえお前がやってみろや

        • 【青と夏とわたし】

          【五月病から逃げ切って】 5月も残すところあと数日。(現在29日) 新しい環境、目まぐるしい4月を乗り越えた5月には、あまねく魔物がいるという。 どうにか、その魔物との鬼ごっこ、まさしく鬼からは逃げ切ったまま終ぞ取り憑かれることはなく過ごせたと思う。 5月。暑くて、初夏なんて言ったりして、控えたおっきな巨大な夏(自分にはでかい太陽がそびえているように見える)に向けた麓のような月で、一方で祝日のない湿った6月への大穴のような暗さもある月だ。 5月。始まりはゴールデンウィークで

        【死の対義語】

          【短歌よせあつめ】

          𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬______すき焼き味のふりかけの 下品さはすき 味はきらい タキオン きっと速い きっと見えない また今生の別れをした 72時間 ぱたりぱたりと止む命 暗がりの 底知れぬ恐怖 ゼロとイチ ふたつの数字はきみとぼくdigit、digit 永久保存 暴力とは 権利を侵すこと 例えば声が 不意にうわずること 死ではない ゆらめくなにか 大きなもの 稚(おさな)い絶望 晴れては曇る ヤッキになって真っ赤になって 四の五のしゃべる ああなんと 煌めく恋

          【短歌よせあつめ】

          【光あつめ(一部分)】

          例えばそれは、光に似た気持ちである。 かなり近く言えばぽかぽかとした気持ちで、からからと乾いた温もりに心洗われるような光だ。時にそれはガラガラと音を立てて、心を蟻穴として体まるごとなし崩しになるものでもある。その時というのはともかく真っ暗で、自分は木製の小舟であり、貴方もとい世界は時化の海原として自分を轟々と襲う。きっとそれは無自覚で、だからこそ残酷に。この勝手な破滅の時の”光”は、せいぜい稲光である。一瞬の閃きで明らかになった世界は、かくも惨い。強いて言うなら「光がない」と

          【光あつめ(一部分)】

          【日和見日和(2019)】

          『日和見日和』 「僕はきっともうすぐ死ぬんだろうね」 「さあね、どうせ人間なんていつかは死ぬ物さ」 君は僕よりも、死を遠くに見ているようでずっと傍に置いているような気がした。河原の柳がさああっ、とそよ吹き病衣の隙間から浮いた肋が撫でられる。 「死んだら何があるんだろうね、地獄ってあるんだろうかね」 「さあね、まあ君は万引きも恐れるような小心者の小悪党だ、君みたいなやつを裁く時間なんて地獄にだってないんじゃあないかい」 僕も地獄すらも見透かしたような言葉に思わず頷く。 「ーー

          【日和見日和(2019)】

          【視線(Look!)】

          『視線(Look!)』 人は覚えたことを思い出そうとするときに自然と両目をぐいっと持ち上げる。 人前でプレゼンする時も次のセリフをふと忘れて、原稿を思い出そうと上を見て「あの〜〜」なんて苦しい間ができたりする。思い出せない、思い出したい、う〜〜んとか言って、脳裏のカンペを見ようとしてるのだろうか。当然上を見ても脳は見えないし、そもそも脳は記憶を文面で書庫みたいに保管してるわけでもないハズだ。それでも人が思い出したくってしかたないときに自然と目が上がってしまうことは可愛い、愛

          【視線(Look!)】

          【歌集副読本感想文】

          出版者のまえがきにある通り、「歌集副読本」というジャンルは聞き馴染みの悪さに従って造語だった。「歌集を味わい尽くすための助けとなる読みもの」との事で、ふわふわと広がるとっつきづらい短歌という世界を、2人の歌人が互いの詩を読み咀嚼した始終を明文化するという形式で読者に与えるものだった。喩えればそれは、甘美に延びて拡がる生地である短歌の概念にクッキー型をはめ込んで提供されているようなものだ。しかしこれは典型的な読みを読者に強制するものになく、「焼き上げる」という作業を読者に委ねて

          【歌集副読本感想文】