【夢日記 靄は華やいで!】

会場は高田高校の、6年a組。同窓会の雰囲気でみんなが久しぶりに集まって、みんなは久しぶりに共通テスト模試を解くという集まり方をした。中川先生が指揮をとって開始の合図。僕はいたって最後方の真ん中の席で、クラス・メート全ての背中が見えるかたちだった。ただしそのクラス・メートは必ずしも6年a組のすべてではなかった。僕の前、つまり後ろから2番目の席には大学で知り合った友達と、その隣全く知らない人が座っていた。というか全く顔が見えない。そもそも全ての背中しか見ることが出来ない位置にいるのだが、その人が振り返った時もその横顔には靄がかかっている。知らない人だなとも思わなかったが、無関係に共通テスト模試は進行される。一限目は英語だった。半年ぶりのタイマーひとつに教室ひとつ中が駆りたてられる感覚。点数はともかくとしてその誰も立ち上がれないままの無限みたいなスピード感を、最後方から見守った。現役の時から心地よかったなというのを思い出した。二限目は国語で、備えてマークシートと問題用紙を引き出しから出そうとすると、引き出しから無尽蔵に紙が出てきた。つい解いた英語の問題冊子とマークシートが出てきて、これから解く数学1Aと、2Bのセットも出てきて、いつかの定期テストの赤く添削された解答用紙が幾教科分か出てきて、12,880円の領収書、デカすぎる少女と怪鳥の絵だけが書かれた模造紙たちも出てきて、尋常べからざる、紙の量だった。引き出しのサイズも、右腕を突っ込むと前腕でちょうどキツイぐらい、腕を左右に振ればすぐに端に当たるぐらいのものだったので、紙の源泉みたいな状況が面白くって出てくるカラフルすぎる紙たちをどんどこどんどこ引き出していった。もう国語のテストは始まっていた。夢中になってぼかぼか紙を引き出している間にタイマーは鳴っていた。中川先生に「何してんねん!」とツッコまれた。地元で大阪っぽいの、聞けた〜‼️と、模試に間に合わず先生に怒られているというのになんだか僕はへらへらしていた。まだ背、ちっちゃいな〜とも思った。「しゃーないから**先生に替えのテスト貰いに行き!」と言われた。知らない先生の名前だなと思った。あくまで聴覚的だけど、靄がかかっている感じ。高橋だったかもしれないし伊藤だったかもしれない。ちゃんと名前を聞いたような気がしたのに耳に煙だけ入れられたようなテクスチャで、誰に用紙を貰えに行けばいいのか分からなかった。クラスの後ろで先生と1対1の中、クラスは模試中にカラオケ大会をしていた、(おれが困ってる間に)「何してんねん!」とガヤ芸人みたいなツッコミをした。まあまあウケた。どうやら1人だけクラスから遅れている自分待ちでカラオケ大会が始まっているらしい。順番こでカラオケマイクを回していっていて、マイクはもう既に自分の前の席の、顔に靄のある人に回っていた。次は僕だなと思ったけど僕待ちなんだからそんなわけないなとも思った。これを考える時には靄の人は、あいみょんの『3636』を歌っていた。心がしっとりしだして高校時代のアレコレとかが過ぎって、過ぎったまま、立ち上がって、教室の外へ出た。

スライド式の軽い木の学校扉の外は、初めて来た都会の駅舎と同じ様相をしてデカいクリーム色の柱が何本もあって、とりあえずそれらを見上げた。ネオンサインの矢印がテカって導くままに従ってデカいエレベーターが並びすぎた所にたどり着いた。1番左端のエレベーターに乗りあげると、扉はふつふつと閉じてギュンッと下に加速した。速すぎて、ちょっと浮いた。エレベーターの個室の外殻は形を失って、長い下向きのトンネルになってタイムマシーンみたいな夜の高速道路みたいな赤とか黒とか白とかの、進行方向とは逆に、すなわち上に落ちていく光の直線たちに流されて「到着です」と無機質なエレベーター・ガールは口を開いた。その間わずか2秒。とにかくドアは開いたので、とにかく僕は外に出た。「札幌駅」と書かれた看板が正面にあった。近未来トンネルを抜けると雪国であった。僕が越えたのはきっと国境ではなくて、時間の不可侵な境だ。雪はやわらかく降っていて街ゆく人は各々のお気に入りのコートを着ていた。僕もいつの間にかそれなりな恰好をしていてぬくそうなダウンと名前の知らない、頂上に丸いぽんぽんのついた毛編みの帽子を被っていた。鼻と頬は赤いたんぽで染められていて、ぼうっとしたまま息は白くフワッと目に見えて舞い上がった。春の綿毛を予感させる柔らかさ、間もなくなんだろう。
とはいえ自分の身に起きているSFみたいなことを認めるためにさっき乗ってきたエレベーターに振り向いた。5mほどの背丈のエレベーターのてっぺんにHOKKAIDOとネオンサイン。その隣の同じ高さにはKUALA LUMPURとか、NEW YORKとかも並んでいた。ずらずらっと並んだ5mの箱たちは世界中につながっているみたいだ。技術も進んだなあ、とか思ったのかもしれないけど北海道に来れたのが嬉しくてとりあえず札幌駅構内を歩いていて、アンティークな帽子屋さんを物色していた。あまり広くないけれどぎゅうぎゅうに陳列された帽子棚のおかげでかなり入り組んだ店だった。目線より低いところに並んだ風変わりな帽子を見ては顎に手を添えて「なるほど…」と言ってみた。背伸びして届くような場所にかかった帽子を手に取って試着してみたりした。鏡の前に立ってみたりして「ちがうな」とかも言ってみた。深い赤茶色の木目ばかりの店内をゆるりと回っていたら
ふとして閃光。同じ店に好きな人がいて、隣にはその女友達がいた。けれどその尊い顔には靄がかかっていてやっぱり見えなかった。でも分かる。分かるので、ドギマギしてみた。しかも自分と同じ帽子を被っている。先っちょにぽんぽんのついた、毛糸で編まれたぬくいの。入り組んだ棚を使って向こうにバレないようにするすると動いた。障害物をはさんで鬼ごっこをしている時みたいな、あちらが左に行けばこちらは右に、右側に声が移動したら左に…としてするすると動いた。「この帽子さー、**って言うんだけど可愛いよねー」と話していた。きっと共通している毛編み帽子のことだ。名前をしかと言っていたのでへえと思ったが、またしても煙にまかれて耳はこそぐったくなった。強いて言うならガウチョみたいな音のした煙であったけれど、ガウチョは違うなと分かって、もうなんにも分からなくなった。ずっと一番に知りたいことばっかりに靄はかかる。帽子屋を後にして、エレベーターホールに戻ってきた。戻ってきたけれど行きに使ったエレベーターは無くなったのか見失ってしまった。せっかくだしどこか海外に行きたいなとおもって、LONDONとかPARISとかを探したがエレベーター群はどこまでも続いて世界に限りはあんまり無さそうだったので5個目ぐらいで引き返した。



ここで夢は終わっている。起きたら昼の12時だった。
このあと僕はもとの6年a組に帰ったのだろうか、でもきっと都市ばっかりに繋がるエレベーターにMIE行きのものは無いんじゃないかと思うので、無難にOSAKAを目ざしたのだろうと思う。

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