【日和見日和(2019)】

『日和見日和』

「僕はきっともうすぐ死ぬんだろうね」
「さあね、どうせ人間なんていつかは死ぬ物さ」
君は僕よりも、死を遠くに見ているようでずっと傍に置いているような気がした。河原の柳がさああっ、とそよ吹き病衣の隙間から浮いた肋が撫でられる。
「死んだら何があるんだろうね、地獄ってあるんだろうかね」
「さあね、まあ君は万引きも恐れるような小心者の小悪党だ、君みたいなやつを裁く時間なんて地獄にだってないんじゃあないかい」
僕も地獄すらも見透かしたような言葉に思わず頷く。
「ーーまあ、君が極楽に行けるとも思いやしないがね」
クスリ、と笑いながら毒を吐く君。
「極楽があるからという理由で慶んで死ぬというのも可笑しな話だよね、全く。極楽にカステラがあるんなら話は別だがね。」
震える右手で河原の砂利を拾い上げ川に投げ捨てた。ちゃぽぽぽんと光を浴びて水が跳ねた。



(原文パパ)

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