骨折既往の弊害を増悪させる合併症とは?
▼ 文献情報 と 抄録和訳
一次脆弱性骨折後の骨粗鬆症管理および二次骨折リスクに対する糖尿病の影響;傾向スコアマッチによるコホート研究
Ross, Bailey J., et al. "The Impact of Diabetes on Osteoporosis Management and Secondary Fracture Risk After Primary Fragility Fractures: A Propensity Score–Matched Cohort Study." JAAOS-Journal of the American Academy of Orthopaedic Surgeons 30.2 (2022): e204-e212.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景・目的] 近年、原発性脆弱性骨折後の骨粗鬆症の評価と管理の割合は低いままである。この治療ギャップが糖尿病患者にどの程度影響するかは不明である。本研究では、糖尿病の有無にかかわらず、二次性骨折のリスクと、センチネル骨折後の骨粗鬆症の診断・管理率を比較することを目的とした。
[方法] PearlDiverデータベースを用いて、傾向スコアマッチによるコホート研究を行った。股関節,手首,脊椎,骨盤,上腕骨などの原発性脆弱性骨折を有する50歳以上の患者を同定した。多変量ロジスティック回帰法を用いて、二次骨折の発生率、二重X線吸収法(DXA)スキャン、骨粗鬆症の診断(国際疾病分類第9版および第10版)、2年以内の骨粗鬆症薬物療法について、糖尿病を有する患者と有さない患者で比較検討した。
[結果] マッチングにより各コホート27,052名の患者を得た。上腕骨指標骨折は糖尿病患者群に多く(15.0%対11.6%,P<0.001),手首骨折は非糖尿病患者群に多く(15.2%対19.3%,P<0.001)認められた.2 年後の二次骨折の発生率は,糖尿病患者のほうが非糖尿病患者よりも高かった(5.2% 対 4.7%; オッズ比 [OR] 1.08;95% 信頼区間 [CI], 0.99~1.17).糖尿病患者は、DXAスキャンを受ける確率(13.2%対13.5%、OR 0.93、95%CI、0.88~0.98)、骨粗鬆症と診断される確率(9.3%対11.9%、OR 0.77、95%CI、0.73~0.82)、および薬理療法の開始(8.1%対 8.7 、OR 0.93、95% CI、0.87~0.99)などが著しく低いとされた。
[結論] 糖尿病は脆弱性骨折の確立された危険因子であるにもかかわらず,糖尿病患者は,前哨骨折後にDXAスキャン評価を受けること,正式に骨粗鬆症と診断されること,骨粗鬆症薬物療法を受けることが有意に少なかった。また、2年以内の二次骨折の発生率も糖尿病患者において高かった。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
触媒、という概念がある。
✅ 触媒とは?
化学反応の際に、それ自身は変化せず、他の物質の反応速度に影響する働きをする物質。
今回の場合の糖尿病は、骨折既往が二次骨折リスクに及ぼす弊害に対して、触媒的な役割を果たしている。
より臨床研究によった肩書きを使えば「効果装飾因子(Moderator factor)」の役割を果たしている。
昨日、「25年前の骨折も侮ってはいけない」という抄読を行った。
「糖尿病」(詳細はないがおそらく2型糖尿病)があった場合、さらに侮ってはいけない。
そしておそらく、1型糖尿病があった場合、さらにさらに侮ってはいけない。
なぜなら、1型糖尿病はインスリン産生の障害であり、そのインスリンが骨芽細胞を刺激するという病態メカニズムが存在しているから(Terada, 1998 >>> doi.)。
これまで勉強してきたこと、その1つ1つが星として瞬き、組織化された星座を構築していくとき、「勉強って、面白い!」と感じる。
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良質なリハ医学関連・英論文抄読『アリ:ARI』
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