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顔の絵文字は人間の感情を伝える:様々な文書への活用を提言

▼ 文献情報 と 抄録和訳

74個の顔文字による感情状態の価数-覚醒度軸による分類

Kutsuzawa G, Umemura H, Eto K, Kobayashi Y. Classification of 74 facial emoji's emotional states on the valence-arousal axes. Sci Rep. 2022 Jan 27;12(1):398. 

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 絵文字は、自分の感情を表現するツールとして世界中で頻繁に使用されており、最近では研究での評価も検討されている。しかし、絵文字がどのように人間の感情状態に対応しているのか、その詳細は不明である。そこで、本研究では、絵文字がどのように価数軸と覚醒軸に分類されるかを理解し、人間の感情状態との関係を検討することを目的とした。

[方法] 1082人を対象としたオンライン調査において、日本在住の20~39歳の被験者1082人にツイッター上の顔の絵文字74点を見せた。絵文字に表現された感情を解釈するため、被験者に対して、絵文字の解釈を不快から快までの9段階評価(感情価)、感情の強度を弱から強までの9段階評価(覚醒度)で示すように依頼した。

[結果] クラスター分析の結果、これらの絵文字は、価値と覚醒の2軸で6つのクラスターに分類されることがわかった。さらに、一元配置分散分析の結果、これらのクラスターは6つの価数レベルと4つの覚醒レベルを持つことが示された。この結果から、各クラスターは、(1)強いネガティブ感情、(2)中程度のネガティブ感情、(3)ネガティブに偏ったニュートラル感情、(4)ポジティブに偏ったニュートラル感情、(5)中程度のポジティブ感情、(6)強いポジティブ感情として解釈された。

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✅ 図. 参加者が評価した74個の顔文字について、価数得点と覚醒度得点の平均値と標準偏差を示した散布図。縦軸は価数、横軸は覚醒度をそれぞれ表す。エラーバーは各変数(すなわち、価 値と覚醒度)の1標準偏差を示す。

[結論] 絵文字が、これまでに報告されていたよりもきめ細かくヒトの感情状態を表示でき、ヒトの感情を評価しようとする研究では、絵文字を使うことで、参加者との関わりを高め、言葉の壁を克服するという利益が得られる。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

臨床現場、職員間、家族、どの集団においてもコミュニケーションが重要となる。
そして、そのコミュニケーションの成否において、以下のようなエビデンスが報告されている。

📕 信頼関係を形成する要素には,言語又は非言語である表情や態度等が挙げられ,これらが他者へ好意的に作用することで,信頼関係の基盤たる他者との「共感」 を生み出していく(谷山, 2005 >>> doi.)。
📕 コミュニケーションは,大半が「非言語」によるものとされ,中でも55%が表情を占め,視覚的情報の重要性は高い(Mehrabian, 2017 >>> site.)

すなわち、表情や態度などの「非言語」的情報によって、自らの感情を相手に適切に伝えることが肝要だ。
しかしながら、文書上でのやりとりとなった場合には、「非言語的」に伝えられる情報はごっそり抜け落ち、無味乾燥したものになりやすい。
あのウィルスによって、対面がさらに制限される昨今、この問題はさらに重大さを増していると思う。

その光明となりうるのが、今回の研究結果、「顔文字は人間の感情をうまく伝える」である。
たとえば、顔文字を用いれば以下のような「非言語」を伝えることができる。

▶︎ 例①『ありがとう』
(1) ありがとう😊(穏やかな感謝の感情)
(2) ありがとう😅(何かイジられたときの自虐的な感情)
(3) ありがとう🙇(相手に労力をかけてしまってすまないという感情)

▶︎ 例②『Aという方法が良いと思うのですが』
(1) Aという方法が良いと思うのですが😡🔥(120%の推奨度:絶対やりたいと思っている)
(2) Aという方法が良いと思うのですが🤔 (80-90%の推奨度:まだ検討の余地もあると思っている)
(3) Aという方法が良いと思うのですが😅(< 50%の推奨度:むしろやめてほしいとすら思っている)

以下に、顔文字を活用したらいいと思う文書を難易度順に並べてみた。

✅ 顔文字の活用提案:難易度順
1. プライベートメッセージ:友達や同僚や家族に自分の感情を適切に伝えられる。導入は簡単。
2. ブログ:noteなどの読者に、執筆者のその時の感情をより適切に伝えられる。導入は簡単。
3. 患者に処方する自主トレ紙面への応用:患者にセラピストの「頑張って」という気持ちが伝えられる。導入はまずまずの障壁がありそう(職場・患者側の理解が必要)。
4. ミーティング資料への応用:ミーティング参加者に、提案者の気持ちを適切に伝えられる。議事録としても活用できそう。導入は難易度が高いと思われる(公文書の1つなので顔文字なんて!、となりやすい)。
5. 情報提供書への応用:例えば介護保険サービスの提案の内心の推奨度などのニュアンスを伝えられるかもしれない。導入は難易度かなり高いと思われる(対外的公文書)。

公文書になればなるほど、導入の難易度は高まる。
だが、そもそも論だが、どうして絵文字や顔文字は公文書に不適切なのだろう?
「いや不適切だろ」、と直感は語るのだが、論理的・合理的な説明ができないことに気づいた。
手始めに導入が簡単なものから絵文字化・顔文字化を始めつつ、公文書との関係性についても考察を進めたい。

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