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学校に行かないという選択。「千鳥石 火山灰ガラスクラブ。その2。」

「ちょっと昔、100年くらい前のこと。札幌は澄川に住むある相撲とりが火山灰をガラスの原料にして商売にしたとさ。シコ名は千鳥石。できたガラスはビールの瓶。でも、どうして澄川にガラスの原料があったの?? それは、はるか昔の4万年前、まだマンモスが歩いていた頃の巨大火山噴火にさかのぼる。。。
果たして2022年の澄川でガラスを作ることはできるのか? 千鳥石火山灰ガラスクラブ」

「千鳥石 火山灰ガラスクラブ」のワークショップの一日目については、こちらのnoteに書かせていただいた。


ワークショップ・2日目。

この日の会場は公園から、本拠地である〈さっぽろ天神山アートスタジオ〉に。さっぽろ天神山アートスタジオは、天神山緑地内にある。そして名前の通り小高い山の上にある。入口を入って曲がりくねった道をどんどん登っていき、ふと歩道から目を離すと、小さくなった住宅の屋根が連なっているのが見える。こうして街中にあたりまえのように緑地帯があることや、空が近くて広いことが、札幌の良さであると思う。

この日の作業の予定は、火山灰をふるいにかけて、細かいものを仕分ける事と、火山灰を溶かしてガラスにするための〈窯〉を作ることだ。

私たちが到着すると、スタッフの方々が既に窯用の耐熱レンガを準備したり、どのような進め方をしていくかの打ち合わせをしていた。

ガラス作家の上杉高雅さんに加え、陶芸家である上ノ大作さんも参加してくださった。登り窯で作品を焼いている陶芸家の上ノさんは、いわば〈窯のプロ〉である。そこに〈ガラスのプロ〉も加わっているのだから、なんとも贅沢なワークショップである。

まず、今日はどんな作業をしていくかの説明があり、耐熱レンガの組み方なども丁寧に説明される。火山灰をガラスに溶解するには、通常のガラス窯であれば、ガスで加熱し、1700℃以上にするのだそうだ。しかし、今回は、そこまで温度を上げるのは、設備的にも難しく、できるだけアナログなやり方でやろうと言うことで、炭を使い、1000℃を目指そう、ということになったそうだ。

どんな形の窯が、熱効率が良いだろうか?と事前の図案を元にしつつも、その場でアーティストの方々が、ああしたら?こっちのがいいかな?と話し合いながら試行錯誤していく。

そのように、事前の予定や、準備通りに進めるだけではなく、現場で、大人たちが真剣に「やっぱりこっちのほうがいいかもしれないね」とお互いの意見を出し合い、話し合いながら作り上げていく姿を見ていて、このワークショップに参加できて良かった、としみじみと思った。

予定はあくまで予定でしかなく、その場で新たに生み出されていく形に、アーティストたちがワクワクしているように見えた。

「うまくやろう」ではなく「何が起きるかわからないことを楽しむ」

そんな空気を感じ、私は嬉しくなった。様々な偶然が集まって、どこへ辿り着くのか。いや、何処かに到達することさえ目指していない気がした。

そして、子どもたちが、〈予定通りに動くことに重きを置かない大人の姿〉をみることは、とても貴重な経験だと思うのだ。

子どもたちは、昨日、紅櫻公園で採取した自分の火山灰をふるいにかけ、細かい火山灰を取り出す。同時に順番にレンガを積み上げて、窯を形作って行く。最後に、レンガの隙間をモルタルで埋めていく。

「あ、お母さん、いま暇?ハイ、あとヨロシク。」

自分のレンガ積み上げの順番が来た長男は、私に大量の火山灰とふるいを手渡すとさっさとレンガ積み上げに向かう。

・・・立ってるものは親でも使いまくる長男よ。母もそんなアナタを見習いたい。


その後、テラスに積もった雪でかまくらを作るとのこと。このかまくらの中に窯の排気用の煙突を通す予定だそうだ。かまくら作りに興味をもった子どもたちは、テラスに出て、既に積み上がった雪山に穴を掘りかまくらを作って行く。

「かまくら、作り飽きた・・・」

既に庭に、4つのかまくらと、イグルーを2つ作り上げた彼はげんなりしていた。働け!若者よ!

「排気の熱で、焼き芋でもしようか~自分たちの食べたいものをもってきてもいいしね!」とアーティストの深澤さん。深澤さんは、今回のガラスクラブの主催者だ。深澤さんは、札幌市「学校おとどけアートAIS」にも参加されているアーティストである。

AISとは?

アーティストが一定期間(数週間から数ヶ月)学校に通い、空き教室などの学校の余剰空間をアトリエとして活用しながら創作活動を行う「アーティスト・イン・スクール」。
アーティストが子どもたちや先生、地域の方々と学校という場を介して出会い交流する事業として、2004年から北海道内の様々な地域、小学校を対象にスタートしました。
様々なアーティストの表現や価値観、生き方に触れることが、学校や地域の日常に普段とは異なる視点をもたらし、今までにない他者との関わりを育む学校そのものの場の可能性について考えるきっかけになることを目指して活動を展開しています。
ちなみに、AISプランニングの「AIS」は、「Artist In School」の頭文字をとって名付けました。

一般社団法人AISプランニングより

こちらの活動の冊子をたまたま手に取り、アーティストが学校にアートをおとどけする、という企画あることを知った。ちなみに我が家の子どもたちが在籍している小学校ではまだこの企画は行われていない。

「学校は社会の窓口か?」「多様性とは?」とアーティストたちが、学校を通じ、子どもたちの姿を通じ、鋭い感性で話し合う姿が紙面からも伝わり、ワクワクしてしまった。

子どもたちがかまくら作りをしている間、アートスタジオのフロアにある冊子やチラシをゆっくり閲覧することができたのだが、ここは、まさに宝の山だった。

常々、子どもたちというのは、存在そのものが、アートだと思っている。だから、アーティストと呼ばれる方々との相性はとても良いと思うのだ。お互いの感性の部分で繋がれるのではないかと感じる。

目を皿のようにして、チラシやパンフレットを見ている私に、アートスタジオのディレクターの女性が話しかけてくれた。
パンフレットが魅力的であることや、学校おとどけアートが大変興味深いということをお伝えすると、「私たちがやっていることが、子どもたちにとって、点であってもいいと思っているんです。」とおっしゃっていた。

この言葉は、私が日々思っていることと重なった。今やっていることが、いつか点と点を結んで線になるかもしれない。子どもたちの引き出しの奥にでも、入っていたら、いつかその引き出しを開けて取り出すこともあるかもしれない。その為の〈種まき〉が日常だと思っている。

お話を終えた頃、かまくら作りが一段落した長男がやってきた。
「そろそろ終わりみたい。あのさ、次のときの為に、〈ふいご〉を作れる人は作って来てって。」

ふいごとは、

ふいご / 鞴吹子
金属やガラスなどの精錬、加工用に使う簡単な送風装置。 空気ポンプの一種で、小さな手風琴型ふいごは手工業用、実験室用のほか、ビニルプールの空気入れなどに使われている。 古語では「ふきかわ」(吹皮)とよぶように、もともと皮袋を意味し、タヌキやシカの皮がおもに使われた。

コトバンクより

ふいごで、次回のワークショップ時に、窯の火起こしをしようということらしい。「どんなの作ろうかな~!」と楽しそうな長男。

次のワークショップは、2週間後。

しかし、我が家のワークショップは、この〈ふいご作り〉の宿題により、途切れることなく続くのだった。

続く。

子どもたちに配布された窯の図案。
窯と偉そうな長男。





学校に行かない選択をしたこどもたちのさらなる選択肢のため&サポートしてくれた方も私たちも、めぐりめぐって、お互いが幸せになる遣い方したいと思います!