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漫画みたいな毎日「好きなひとができてよかったね。」

末娘と通う幼稚園には、たくさんの絵本がある。
もう絶版になったような古い本も、貴重な本もあり、絵本が好きな私と三人の子どもたちは、何冊もの絵本を幼稚園で楽しんできた。

お弁当を食べていると、その横にある絵本棚から末娘が一冊の本を取り出した。

「これ、お弁当終わったら読んで。」

それは、佐野洋子さんの『100万回生きたねこ』だった。

100万年も しなない ねこが いました。
 100万回も しんで,100万回も 生きたのです。
 りっぱな とらねこでした。
 100万人の 人が, そのねこを かわいがり, 100万人の 人が, そのねこが しんだとき なきました。
 ねこは, 1回も なきませんでした。

講談社BOOK倶楽部より


佐野洋子さんの絵本が好きだ。学校の教科書にも「だってだってのおばあさん」が載っていると知って嬉しくなった。

佐野洋子さんの絵本を読むと、「絵本とは、子どもだけのものでも、大人だけのものでもないよね。」という気持ちになる。五味太郎さんの絵本を読んでもそんな気持ちになる。

絵本に記されている〈対象年齢〉という表記をみると、なんとなくつまらなく感じる。

それは、親切なようで、実はおせっかいで、年齢によって区切られることで、「あ、この絵本はうちの子にはまだ早いんだな。」などと、真面目な大人は考えてしまって、子どもの手元に届かないことだってあるかもしれないから。

区切るという一見親切に感じられる事柄が、実は楽しむことができるかもしれない機会を、知らないうちに奪っていることだってあるかもしれない。
これは、おそらく、絵本に限ったことではないのだろう。斜めな見方なのかもしれないけれど、そんなことをいつも考えている。

ちなみに、末娘が「読んで」と持ってきたこの絵本の対象年齢は6歳前後だそう。ま、適齢ですね。笑

あらすじについては、読んだことがある、なんとなく聞いたことがあるよ、という方もいらっしゃるだろう。私は、既に読んだ方の、そしてこれから読む方の感じ方の邪魔をしたくないので、引用以外のあらすじを詳しく書くことは控えたいと思う。

末娘を膝に乗せ、絵本のページをめくる。末娘が自分の見たいペースでめくるので、それに合わせて読んでいく。

「もう一回読んで。」

一度、読み終えるとそう言うので、もう一度読む。

読み終えた後、本を閉じ、しばらくの間があった。

そして、末娘は、言った。

「100万回生きたねこは、好きなひとができてよかったね。」

人は、物事を自分の見たいように観るのだろう。
そして、それは、本を読んだときに感じることも、そうなのだと思う。

可哀想、と思う人もいれば、素敵なお話だと思う人もいる。
お話として純粋に楽しむ人もいれば、絵本の中に教訓を見出す人もいるだろう。

「好きなひとができてよかったね。」

末娘の感想を聞いて、私は、とても幸せな気持ちになった。好きな人ができるということは、とても幸せなことだと、日々の中で彼女が感じているであろうことが伝わってきたから。

人を好きになる。
好きな人が増えていく。

その幸せをいっぱい抱きしめて大きくなってくれたらいいな。

彼女のおかげで、「100万回生きたねこ」という絵本の世界が、また新たな色を帯び、私の目の前に現れたのだった。


ヘッダーはみんなのフォトギャラリー・にきもととさんのイラストをお借りしました♪ありがとうございます♪

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