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【小説】ルカがはじめて世界を憎んだ日(#3 完結)
「ケイスケ」さんの骨が長い時間をかけて小さな白い壺におさめられ、ようやく、苦役から解放される時が来た。ほっとしながら、ルカは、あせりを感じていた。このままだと、
「UFOと宇宙人」はなし崩し的にミクちゃんによって奪われてしまう。自分との関係性もどこに住んでいるのかも定かではないミクちゃんの手に渡ってしまえば、本はもう二度と戻ってくることはないだろう。そのことを想像するだけで、ルカの頭はじんじんと熱
【小説】ルカがはじめて世界を憎んだ日(#1)
もしかすると、あたしの声は他の人とは違ってたとえば、犬にしか聞こえない特別な周波数なのだろうか。
もしくは、あたしのしゃべることばは自分では日本語のつもりだが、口から出る段階で、幼児みたない、ばーとか、あぱあという意味のない音に何らかの力によって変換されているのかもしれない。
その疑念がルカの頭に浮かんだのは、小学校五年の夏だった。物心ついて以来何度もそういうことがあったのだが、法則としてル
【小説】ルカがはじめて世界を憎んだ日(#2)
トイレから戻ると、ミクちゃんは本を開いていた。ルカは目を疑った。リュックにあるはずの、「私は幽霊を見た!」だった。椅子の下に置いていたリュックはいつの間にか母の膝の上にあった。ルカの非難がましい視線に気づいた母は、「ミクちゃん退屈そうだから、見せてあげたわよ」
そもそも、こいつ、本なんて読むのかよ。心の中で毒づきながら、ルカは、わざと乱暴に椅子に腰を下ろした。ルカには、本が好きな子と、教科書以