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「優しいスピッツ」鑑賞記録。みんなで同じものを見上げるという幸せ。

先日15日(木)、滑り込みで「優しいスピッツ」を観ることができました。スピッツのライブのチケットに延べ40回くらい落選し、悲しみといらつきと共に、あーもうライブは行けないなら映画行っとくかあと決意をしたのでした(でもなんと本日色々あり、ライブ行けることになったんです涙涙涙涙涙)。観に行って本当に本当に良かったので、記録しておきます。
※セットリストのネタバレありますので、ご注意ください。

当日は平日の21時半スタートという遅い回で、お客さんはまあまあまばらでしたが、それでも3-4割くらいは席が埋まっていてなんだかにっこりしてしまいました。ここにいる皆さんが人生のどこかでスピッツに出会い好きになり、映画館に足を運ぶまでに至った思いを持っているのだなと、みんなスピッツが好きな人たちなんだなあ~と。ライブではそういう気持ちにいつもなるけれど、都会の映画館でそんな気持ちになるのがなんだか不思議な感じでした。そしてやっぱりスピッツ、いろんな層のファンがいることが魅力のひとつだと思います。ご年配のご夫婦がポップコーン買って楽しそうにしていたり、私と同年代に見える女性がひとりでいたり、スーツのおじさんがふたりでいたり、若いカップルがいたのもほっこりしました。

私自身はこの日、仕事がまあまあしんどく、夜のためになんとか走り抜けた一日でした。セットリストは見ないようにしていたので、ただ「かなり久々のレアな曲もやる」ということだけは聞いていて、映画館に向かう電車の中、スピッツを全シャッフルで聴きながら、ああこの曲聴きたいなあどうかなあ~と胸を高鳴らせていました。映画館に到着、今日はビールと決めていたのでビールを買い、いそいそと席へ。

どうでもいいんですが、私映画館で映画を観るのがとても好きです。でビールいっつも買いたくなるものの、ビールってぬるくなるの嫌なので長持ちしないしトイレ行きたくなったりするし、なんやかんや避けることが多いです。結果だいたいジンジャーエールです。平日夜ひとり映画で、上映時間が長すぎないときはビールにしたりします。皆さんどうなんでしょう。

さて、本編がいよいよスタート。

1曲目、「つぐみ」の冒頭、ドラムからギターがジャーンと鳴った瞬間になんだかよくわからないのですが、涙がすーっと流れてきてしまいました。たぶん、あーーーーースピッツの音だぁーーーという感情が溢れたのだと思います。涙拭うのがばれないようにビールを飲んでごまかしました。
つぐみのラストサビの

「愛してる」この命 明日には 尽きるかも
言わなくちゃ 言わなくちゃ できるだけまじめに

って歌詞がとても好きです。まだこの映画というかライブというかドキュメンタリーというか、の世界観に馴染んでいく途中でふわふわとスピッツの音・映像を味わいながら、1曲目ラストこの歌詞が耳に入り、また緩くなった涙腺が叫んでいました。

「優しいスピッツ」のセットリストは以下。

01.つぐみ
02.冷たい頬
03.ハヤテ
04.今
05.Holiday
06.空も飛べるはず
07.漣
08.優しいあの子
09.夕焼け
10.雪風
11.大好物
12.未来コオロギ
13.ガーベラ
14.名前をつけてやる
15.運命の人

曲のチョイス、めっちゃくちゃよかったです。毎度毎度、次の曲のイントロにわくわくしながら、「かーーー!これ来たか!」と大興奮してしまいました。本当は立って揺れたり、手叩いたりしたくなったけれど、必死に抑えていました。全部よかったのですが、むっちゃ嬉しかったのを選ぶとすると、大好きな「冷たい頬」、映像がかっこよかった「未来コオロギ」、音源以外をはじめて耳にした「ガーベラ」、いっちばん好きな(よく変わる)アルバムからの「名前をつけてやる」あたり。とかいってやっぱり全部よかったです。「運命の人」で終わるのもなんだかとてもかっこよくてしびれた。

音と映像を楽しみながら、ちょいちょい、みんな楽しんでるかなあこの曲どんな気持ちで聴いてるんだろう?なんて気持ちになってしまい、近くの人をちらっと何度か見てしまっておりました。たまたま近くに女性おひとりのお客さんが2組いたのですが、おひとりは「Holiday」で頭が揺れていたり、もうおひとりはラスト「運命の人」でハンカチで目を拭っていて。そんな反応を見ながら勝手に胸アツになってしまい、あーみんなそれぞれの大好きな曲とか思い出の曲があるよな、とかこの曲を聴いていた時代の思い出はどんなのなんだろうとか、エモい気持ちになりました。ラスト曲「運命の人」は、私自身もスピッツを好きになった中学生のころに、まずはベストアルバムを聴きまくって大好きになった曲でした。あの頃に出会えてよかったなとか、そこから何十回聴いたかわからないけど、ああこんな歌詞だったなとか、今になるとまた違うように感じられていい歌詞だなとか、またまた泣けてしまいました。

映像作品としても、本当に丁寧に繊細に、でものびのびと作られた作品ですごく美しいものでした。十勝の自然、きれいな建物、光の差し込み方や、スピッツのメンバーとクジさんをひっそりと覗いているようなそれでいて至近距離でお顔や手をじっくり見られちゃう構図。映画監督がアーティスト、ロックバンドのシークレットライブを撮るってすごいことなんでしょうね。新しいチャレンジで素敵だなと感じました。

本編でメンバーたちも言っていましたが、ライブとは違い1曲が終わるたびにさりげない会話が挟まれるのが面白かったです。「緊張した」とか「次の曲いつぶりだね」とか、「さあ、次やろうか。よろしく」とか。ほっこりはもちろん、1曲1曲をみんなで選んで、当たり前ですが真剣に丁寧に味わって演奏しているんだなと改めて感じました。スピッツの空気感、いいな。

スピッツは30年の中で、常にすごく謙虚な姿勢でいながら新しいチャレンジをし続けているのが魅力のひとつだと思っています。今回のライブツアーの、地方×平日はチケット代を安くするダイナミックプライシング的な挑戦とかが顕著。その意図をちゃんと丁寧に発信する姿勢も。自分たちはもうおじさんって言っていじるのが面白いんですが、ファンやその土地、スピッツの作品が関わる街なんかを大切にしながら、そこに対しどう音を届けられるかをずっと考え続けている印象を持っています。今回の、シークレットセッションを映像化するというのも新しいチャレンジで、数年前のライブ中止で行けなかった土地で演奏をするという強い思いのうえに成り立ったもので、ああ素敵な人たちだなと改めて思ってしまったのでした。

最後に。同じものが好きな人たちが集まって、感動をシェアしている空間ってやっぱりとっても幸せですね。ようやくライブなどエンタメが本格的に戻ってきて、映画館でスピッツの映像をみんなで見上げて、泣いてる人もいて。幸せな空間だな、とそんなことを思いあたたかい気持ちになった帰り道でした。次はライブだ!

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