ADHDを隠して働いてきたが耐えられずカミングアウトする話
僕はADHD(注意欠如・多動症)である。だが、誰にも明かしていない。診断されて8年経つ。今更、打ち明けるのは人間ドッグで精密検査のオンパレードで、いよいよ死ぬかもしれないと慄いてしまったからだ。
現実で打ち明けられない分、せめてネットでは自分のことを伝えたいと思い、自分のキャリアを振り返ることにした。
「あの人は発達障害じゃないか」と職場でされるたびに、心臓が高鳴る。ADHDであることを黙って働いているからだ("クローズ就労"という)。
僕はIT企業の人事労務担当として働いている。ざっくり言えば、社員の給与計算、社会保険の手続き、労働法の相談、人件費管理、人事評価制度の運用といった仕事。今は人事の来季の方針やアクションプランも、上司や役員とすり合わせたりもする。
こういった法律、計画性、緻密さ、根回しの求められる役割を担っているのは、なまじっか社会保険労務士やMBA(経営学修士)を持っていることもあるだろう。
実際はADHDである僕には、全くもって向いていない。不注意故に家の鍵、財布、スマホもしょっちゅう無くすし、信号に気づかず事故を起こしそうになったり、轢かれたりしそうになったのは、日常茶飯事だ。
上司の指示や、つまらない会議は、全然聴くことができない。
多動・衝動性のせいで、100万単位の支払や突発的に国の端まで旅行したりもする。仕事中は面白そうな仕事があれば、全ての優先順位を投げ出してしまう。結果、やるべき仕事が全て遅延する。
社会不適合者も良いとこだ。だから社会人1年目のときに、こっそり病院で診断を受けたら、発達障害だと分かった。
しかし、障害者として生きる勇気を持てなかった。「バレないうちは、正社員として働いた方がいいと」という主治医のアドバイスや「親に余計な罪悪感を持たせたくない」という気持ちが先行した。
「せめて人並みに生きたい」。これが僕の仕事における、最大のモチベーションだった。社労士も、MBAも、この想いが最大の支えだった。毎朝、処方された薬を飲み、吐き気に耐えることで「普通」を手に入れようとした。
障害を明かすよりも隠してて良かったと思うことが、たくさんある。
「精神障害の人って、怖いよね」。
お世話になった人がそう言ったとき、心の底から、「カミングアウトしないで良かった」と安堵した。
上手くやっているつもりだったが、心身への負荷は大きい。特に仕事中は「周囲の嘘をついている」という感覚が拭えない。処薬の副作用で、肝臓の数値も悪い。
かといって、服用を止めれば僕は「普通」ではいられないだろう。調整業務が増え、今までよりも抜け漏れは許されないし、ロジックの通らない思いつきの行動もしにくい。
ありのままで生きたい欲求と、人並みになりたい欲求の狭間で、もがいている。
飽きなければ、もっと詳しくこれまでのキャリアを振り返りたいと思う(ただ、この特性上、速攻違うことを始めてしまう)。
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