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たとえ貴方が踊らない人でもブエノスのミロンガ観光をお勧めする訳

ブエノスアイレスに観光に来て、アルゼンチンタンゴに触れるには3つの方法がある。

ひとつは、タンゴショーを観に行く。大抵の場合ディナーショーになっていて、食事の後にショーを観る。ここでのタンゴは馴染み深い曲に合わせて、プロダンサーが振り付けで踊るものだ。アクロバティックな振り付けと華麗な演出のショータンゴ、綺麗な衣装と生演奏が楽しめる。

2番目は、路上やレストランで見るもの。La Boca などの観光エリアでは、若いダンサーがチップ収入を得る目的で踊っている。狭いスペースながらも見応えあるタンゴを、彼等は工夫しながら披露していて、ダンサーと一緒にタンゴポーズを決めての記念撮影なども出来る。

3番目がミロンガ。タンゴを踊りに行くサロンをミロンガという。これは純粋に踊ることを楽しみたい人々が集う場所だ。ガイドブックにも必ず載っているけれど、踊らない観光客には実際のところ敷居が高いかもしれない。

しかしながら、そんな方々にも是非おすすめしたいのは、生きたタンゴとブエノスアイレスがそこにあるからだ。見所をご紹介してみようと思う。

見所1:タンゴの文化を知る

すでにブエノスアイレス観光を半日でも1日でもしたのならば、この街が無秩序と喧騒に包まれていることに気づいていることだろう。でもミロンガのサロンに入ってみると、そこには昔ながらの文化を大事に継承した秩序があることに驚いてもらえる。ミロンガならではのお作法に従って、身なりを整えた男女が、とても上品に誘い合いダンスを楽しんでいる。ここに存在するお作法は例えば、オーガナイザーが案内するまで勝手に座らないとか、目配せ・うなずきだけでダンスに誘うとか、男性は女性を席までエスコートするとか…とにかく色々ある。色々あってとても面白いので、ぜひ解説できる日本人に連れて行ってもらうのをおすすめしたい。

また、すでにショータンゴを見たのならば、ミロンガでの踊りの質が全然違うことにも気づかれるだろう。フロアで大人数が同時に踊るミロンガでは、飛んだり跳ねたりはしないし、ごくごく小さな動きで音楽を表現する。特にタンゴに詳しくなくても、なぜだか目に留まる踊りというのは分かるはず。見方のひとつは、『例えば無音だったと想定して、それでも見ているだけで音楽が聞こえてくるような気がする踊り』というもの。ぜひそんな視点でフロアを眺めてみていただきたい。『タンゴにおけるクイーンは音楽』と言われる由縁を感じてもらえるはず。

生演奏のあるミロンガは特におすすめ。哀愁あるタンゴの音色をぜひ生で聞いていただきたい。

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見所2 : 老い方について考える

多くの日本人がびっくりするのは22時、23時から始まるミロンガに、70代80代の年配者がとても多いという点。そのおじいちゃん達はスーツに身を包み、おばあちゃんはキラキラドレスを着ていたりする。しかも彼らはタンゴを踊り、時にはロックンロールもスイングもカッコよく踊る。歩けばヨレヨレのおじいちゃんも、ふと見ると若い可愛子ちゃんと踊っていたりするし、自分でタンゴシューズのバックルを止められないおばあちゃんも、フロアに出ると粋な足技を披露している。そして友人達とのおしゃべりをとても楽しんでいる。彼らのイキイキした様子を目の当たりにすると、日本人の老い方とは随分違うことを感じてもらえるだろう。実際、タンゴ人は死ぬまで元気な気がする。訃報を聞いて「え??あの方、数週間前まで踊っていたよね?」と驚くことも多い。元気な年配アルゼンチン人パワーを感じるのにミロンガはもってこいの場所なのだ。

帰り道、これからの自分の老い方について、ふと考えが及んだならば、それは今夜のミロンガ観光の大きな収穫。

見所3:色気について考える

タンゴは色気のある踊りだ。抱擁が踊りの基本だし、タンゴの歌は失った恋にまつわるものがとても多い。男女の出会いを目的に集う人もいるし、ミロンガで生まれる恋もアバンチュールも実際多い。しかも年代問わず。
すごーいおじいちゃんの口説き文句を冗談に受け止めていたら、実は本気でびっくり、なんてことはよくある。ラテン男は生涯現役だ。だからこそいい踊りをすることに執着し、身なりを整え、香水をつけて出掛けてくるのだ。そう考えるといい事だと思う。

女性もタンゴドレスで女っぼさをさらに演出している。踊る為に男性と組んでしまうと前は見えないので、タンゴにおいては背中側の見え方が装いの重点。特に南米は胸よりお尻がアピールポイントなので、腰の線も大事。だから背中が広く開いたタイトラインのドレスが人気だ。何歳になっても色気を忘れないでいられるのは、女として扱われる環境があるからだ。
とはいえ、タンゴ界にいるとだんだん感覚が麻痺してくることは否めない。時々、目を覆いたくなるミニスカートの年配女性もいたりするのは事実だ。だからそんな光景を見る度に「わたしがあんな風になっていたら、注意してね」と友達に頼んでしまう。すでにわたしも麻痺気味かもしれないという自覚だけは、実はある。憧れるのは、いつも小綺麗にして、その人に似合ったお洒落ができている女性。品のある色気を維持するのは、永遠の課題だ。

装いと、踊りと色気についての興味深い観察の場としてもミロンガはおすすめ。ぜひ日本と南米の色気基準の違いも、生で感じていただきたい。

わたしなりのミロンガの見どころポイントはこんな感じ。せっかくブエノスアイレスに来たならば、街並みやグルメを楽しむだけではなく、ぜひミロンガもお忘れなく。

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さて、そのミロンガが長く続く隔離政策によって、維持費用が確保できず存亡の危機に陥っています。安心して踊れるようになった時に、タンゴの聖地のミロンガが世界の皆さんを温かく迎えることができるようにとの祈りを込めて寄付活動を支援しています。
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アルゼンチン・ブエノスアイレスから一時帰国中。レイキティーチャー、ヒプノセラピーセラピスト。アルゼンチンタンゴ、ブエノスアイレスの暮らしを楽しむ日々を一時中断して、親の介護を目的に実家暮らしを始めました。好きなこと:アルゼンチンタンゴ、写真、食べ物、街並み、旅行、空

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愛しのブエノスアイレス
愛しのブエノスアイレス
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アルゼンチン、ブエノスアイレスがどんなに好きか、を超個人的観点から書き残してみようかな、と思う。

コメント (4)
ステキです、おばあちゃん。 こんな歳の取り方をしたいですね、私も考えなきゃ。 あと、「背中側の見え方が装いの重点」 これは考えたことありませんでした。 これもステキです。 心しておかなきゃ。 ワクワクをありがとうございます。
>なーしゃ・さん。ありがとうございます。ラテン女性の女子力維持と歳の重ね方伝わって嬉しいです。わたしも日々努力中です。
東京在住ですが、アルゼンチンタンゴを10年以上続けています。記事を読んだらミロンガが恋しくなりタンゴが踊りたくなりました。まだ行った事のない憧れのブエノスアイレスの記事をこれからも楽しみにしてます。
>nicowa さん。東京は少しずつ踊れる環境が戻りつつあるようですね。ぜひいつかは本場ブエノスへ踊りに来てくださいね!!
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