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家族の団欒とリビングルーム

家族の生活スタイルの変化に対応できる家03

リビングルームは、家族が集まってくつろぐ場所であり、団らんを楽しむスペースですから、家族構成の違いはもちろんのこと、夫婦の趣味が最も反映されるべき空間のはずです。私の事務所では、建主に「住宅調書」への記入をお願いしているのですが、リビングに関する質問事項にだけはなぜか家族の個性が反映されないという傾向にあります。

例えば、「どんなリビングがいいですか?」という抽象的な質問では、幅のある自由な回答を求めているにもかかわらず、ほぼ100%に近い方が「できるだけ広いリビングルーム」と書き込みます。

また、応接セットが揃った広いリビングルームへの憧れは非常に強くて、このイメージは、新しく住まいを建てる場合に限らず既に定着してしまっているようです。
おそらく建主の多くは、客間と茶の間をごっちゃにイメージし、リビングに両方の機能を持たせようとしているのかもしれません。

その一方、実生活に深く関わるキッチンや浴室、またはトイレなどに対する要望は、家族によってずいぶん異なっていることから、どの家庭にとってもリビングルームだけは生活実態から遠いところにあるということを物語っているように受け取れます。

いずれマイホームを持ちたいと考え、念願のリビングを確保できた際には、しばらくは何も置かない生活をしてみてください。というのも、買ってしまった家具は捨てにくく、生活を規制してしまうので、部屋の使い方には柔軟性を持たせておくことが失敗しないコツです。

特に、まだハイハイをしているようなお子さんがいるなら、より一層、物を据えない生活をお薦めします。

幼い子どもにとっては、家全体が遊び場であり子ども部屋でもあるのですから、リビングを子どもの「解放区」にしてしまうのです。やがて子どもが大きくなり、家族全員の生活スタイルが確立されてきたら、そこに何を置くのか、改めて考えてみましょう。

もしもあなたが注文住宅を望み、家族のことを一番に考えるのなら、生活動線の中心にリビングを据え、何をするにしてもリビングを経由し、家族それぞれの動向が自然にわかる間取りにするプランをおすすめします。

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リビングが家の中央を占める間取りなら移動するためだけの廊下はいらなくなります。つまり、廊下が不要になる分、その他のスペースを広くできるのです。

浴室からキッチンまでの直線上にリビングがあれば、そこでくつろぐ家族と何気ない言葉を交わす機会が増えるわけです。

こうしたプランを示すと、建主によっては「来客に失礼なのでは?」といった意見が返されてくるのですが、私は、あえてこう提案することにしています。

「一年に数度、来るかどうかという客のために家族のコミュニケーションを犠牲にするのはいかがなものでしょうか」と。




・前回「家族の生活スタイルの変化に対応できる家03」リビングは、理想ではなく暮らしの延長で考える


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【横山彰人建築設計事務所】

これまでに300以上の住宅を手掛け、富な実績を元に、本当に居心地のいい、家族が元気になる住まいをご提案します。noteでは住まいで役に立つトピックスを連載形式で公開します。