【業界シェア80%超】電子契約サービス「クラウドサイン」|#マーケティングトレース
こんにちは。金森です。
今回は、弁護士ドットコム株式会社が提供する、Web完結・印紙税0円の電子契約サービス「クラウドサイン」についてマーケティングトレースを行いたいと思います。
それでは、早速マーケティングトレースを始めていきましょう。
まず、簡単に弁護士ドットコム株式会社の概要から見ていきます。
■ 会社の概要
トレーステーマ企業:弁護士ドットコム株式会社
・市場:東京証券取引所マザーズ市場(2014年に上場)
・創業年:2005年7月4日
・創業者:元榮太一郎
・従業員:172名(2018年9月末時点)
・ 経営理念:「専門家をもっと身近に」
世界中の人達が「生きる知恵=知的情報」をより自由に活用できる社会を創り、人々が幸せに暮らせる社会を創造するため、「専門家をもっと身近に」を理念として、人々と専門家をつなぐポータルサイト「弁護士ドットコム」「税理士ドットコム」「ビジネスロイヤーズ」、Web完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」を提供。
■ 事業内容
・弁護士ドットコムの開発・運営
・税理士ドットコムの開発・運営
・弁護士ドットコムニュースの開発・運営
・クラウドサインの開発・提供
・BUSINESS LAWYERSの運営
・弁護士ドットコムキャリアの運営
■ 直近の業績ハイライト
■ 弁護士ドットコムの成長サイクル
ユーザー投稿型コンテンツ、いわゆるUGC(User Generated Contents)。このUGCで形成されているメディアをCGM(Consumer Generated Media)と言い、弁護士ドットコムもCGMに当たります。CGMモデルは、一度波に乗ると好循環が周り、サービスとして強いという。UGC(この場合、相談や回答投稿。)があるから、SEOも強くなり、結果的にトラフィックも増加し、またUGCが増えていくという好循環が生まれる。食べログやYahoo!知恵袋、就活生向けメディアのONE CAREERがCGMモデルに当たります。
◉ 貸借対照表(BS)
弁護士ドットコム株式会社の平成31年3月期の第二四半期決算短信の中から貸借対照表を抜粋してきました。正直、漢字と数字ばかりでパッと見よく分かりません。
これを、大手町のランダムウォーカーさんに教えてもらった方法をもとに簡単にビジュアライズ化します。すると、こんなに分かりやすくなります!
※当第2四半期会計期間末の固定負債はありません。
IT業界は、メーカー等と異なり工場などを持たないことが多いので固定資産が少ない傾向にあります。
◉ 損益計算書(PL)
貸借対照表(BS)と同様に、損益計算書(PL)も図解化します。図解化する前がこちら。
これを簡単にビジュアライズ化します。
分かりやすい!販管費(本業にかかわる費用のうち、売上原価に含まれない費用のこと)の割合が高いですね。
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■ 弁護士ドットコムの一事業である「クラウドサイン」にフォーカス
①クラウドサインとは?
弁護士ドットコムが運営するクラウド電子契約サービス。契約書の作成から締結、保管まで Web 上で行うことができる。利用者は契約書のファイルをクラウドサイン上にアップロードし、相手方がクラウドサイン上で契約内容を承認するだけで、契約締結が可能です。また、従来紙で締結を行う際に発生していた郵送代、印紙代、紙・インク代、契約締結後の原本保管スペースなどのコスト削減に加え、契約締結を簡単かつスピーディにすることができます。
② 実績
・業界シェアは80%超(ダントツ)
・契約締結件数は時期により変動はあるが増加基調
・導入企業数は30,000社超
ここから、「クラウドサイン」をとりまくマクロ環境について見ていきます。
③マクロ環境分析
▼3C分析
○ 顧客はだれで、市場規模、ニーズはどのようなものか?
・顧客:機密保持契約書や雇用契約書、業務委託契約書などの締結業務を行う企業、個人事業主。
・市場規模:日本における市場規模は不明。(cf.アメリカにおけるリーガルテックの市場規模は5,000億円)
・ニーズ:従来の契約業務にかかる諸々のコストカット等
○ 自社の強みと、その根拠となる経営資源は何か?
・弁護士ドットコムなどの既存事業で培って来た士業ネットワーク。(弁護士ドットコムの登録弁護士数は16,000人超。)
・ネットワーク効果のきくサービス( ※「周囲からの高い評価」という当記事の最下部辺りで詳細説明。)
・業務提携(ex.キャスター、AI-CON 、ランサーズ)
・弁護士業界及びリーガルテックに特化している点
・法律に詳しい(ex.法律ガイド)
○ 競合他社はどこで、基本情報を比較すると何が異なるか?
▶︎競合他社
・GMO Agree
・Adobe Sign
・DocuSign
・Holmes(比較記事)
・クラウドコントラクト
▶︎違い
・法律業界及びリーガルテックに特化している点
・電子署名法に準拠しない方法を採用(?)
※ DocuSign:競合サービスであるDocuSign(2003年創業)はカナダ発の企業。2018年、ナスダックに上場している。
▼PEST分析
○ 事業に影響を与えている(与える)政治的な要因は何か?
・法律環境の整備(電子帳簿保存法、電子署名法、e-文書法、IT一括書面法)
・2019年4月より、労働条件通知書の電磁的方法による提供が認められることに。政府による規制緩和が事業の追い風に。
○ 事業に影響を与えてる(与える)経済要因は何か?
・クラウドの普及(2018年は「SaaS元年」という報道も。)
・競争環境の激化→コストカットできる部分はコストカットしたい
○ 事業に影響を与えている(与える)社会要因は何か?
・リモートワーク、働き方改革などによる従業員の雇用形態の多様化。人材の流動性も高まったことにより、契約手続きなどの回数も増えた?
・前近代的な契約手続きへの懐疑
・日本に強く残る「紙と判子文化」
○ 事業に影響を与えている(与える)技術要因は何か?
・サイバーセキュリティ関連技術の向上(リスクも常にある)
・SaaSの浸透
・インフラ環境の整備
▼ ビジネスモデル分析
○ フリーミアムモデル(ex. Dropbox、Apple music)
個人的に、スタンダードプランの契約書送信件数ごとの費用:「100円」というところが気になります。仮に、1日に1千件の契約が全ての課金ユーザーの間でなされたとします。それだけで10万円(100円 × 1000件)になるということですよね。ネットワーク効果により、今後も加速度的に契約締結数が増加すると見込むとそれだけでも凄い..。
④ ミクロ環境分析
▼組織全体による積極的な情報発信
ここでは、橘さんと岩熊さんを挙げさせていただきましたが、他にも多数の方々が、TwitterをはじめとしたSNSで発信をしています。自社プロダクトを誇りに思っていることがよく伝わってくるし、多くの人の目に留まるきっかけになるし、とても良い施策だと思っています。(好きでやっているんだとしたら最強です。)
以前、僕が参加したSaaS好きの会でも、クラウドサインのカスタマーサクセス部門の岩熊さんが登壇されていました。
下記の、橘さんのnoteは、半年間に行った施策が綺麗にまとまっています。発信の目的もかなり伝わってくるので、「とりあえず、時代の流れに合わせてSNSで情報発信しているぜ。」感を一切感じません。
2017年8月頃には導入企業数1万社を記念して、こんなキャンペーンサイトも作っています。「クラウドサイン浸透の歩み」や「クラウドサインが大切にしていること」、そして「クラウドサインが与えた社会的影響」をインフォグラフィック等を用いて説明しています。従業員個人としても、組織としても、発信がかなり上手いですよね。
▼ユニークな取り組み
・ボードゲーム製作
後述するタクシー広告のCMでもボードゲームが使われています。
・SUZURIでグッズ販売
ステッカーやパーカーなどを販売しています。(遊び心でしょうか。)
▼ユーザーからの機能要望と開発ロードマップを全公開
ユーザーからの機能要望と、開発状況の最新情報開発状況・リリース時期などをGoogleスプレッドシートで全公開しています。
この施策に込めた思いや、背景はこちらの記事をご覧ください。本当に凄いです。
▼カンファレンス施策
・クラウドサイン3周年イベント
他に、第2回契約書タイムバトルも11月末に開催される予定です。
▼ メディア露出
たとえば、下記の記事。以下のようなことが、事業責任者の橘さんによってお話されています。(興味深いことがたくさん書かれてあり、読み物として面白いです。)
・日本における判子の歴史、判子での契約取引がまだ流通している理由
・ネットワーク効果
・電子契約の場合には印紙税不要→印紙税に1億円以上のコストがかかっていたと言う事例も?
・相手方に関しては一切無料
・弁護士による契約交渉イベント
・グレーゾーン解消制度
・100パーセント債権回収ができるスキーム
・クラウドサインペイメント
・クラウドサインSCAN
▼ 動画広告
▼タクシー広告
2018年10月1日より、タクシー動画広告をスタート。「電子契約といえばクラウドサイン」という認知を向上させる施策。
※ この場合、タクシー広告は市場啓蒙的位置づけだろうか?
▼LP分析:注目ポイントを2つ
( i ) LP内挿入動画
※ 上記はGIF画像です。実際のアニメーションはLPをご確認ください。
cf. ) ferret One
Webマーケティングツール「ferret One」のLP内においても動画が使用されています。実際にサイトを見てもらえれば分かるんですが、圧倒的に分かりやすいです。「あぁ、なるほどね。こんな感じに、このサービスは動くのか。」って思ってもらった方が良いですよね。
イメージは、映画の予告映像と同じ感じかなと。(僕が映画に詳しくないだけかもしれませんが)僕にしてみれば、映画館で流れる予告映画は大抵もともと知らない作品。(B2B SaaSのLPを訪問する人もきっとそうでしょう。)ただ、本編前に流れる予告映像を観ると結構、行ってみたい気持ちになるんです。B2B SaaSのLPにおけるプロダクト動画の価値は、そんなことに似ているのかなと。
「自社で、プロダクトの解説動画を作れる人的リソースが無いよ!」という方はsimpleshowの導入を検討されてみてはいかがでしょうか。
simpleshowの事例動画はこちら。
( ii ) 豊富な導入事例紹介
11月時点で、59事例あります。(こんなに豊富な事例が載っているの、珍しいですよね。)これだけ豊富であれば、コンバージョンもするでしょう。
LPのヘッダーリストはこんな感じ。
業種・契約締結件数・契約類型をかなり細かく区切って検索できます。
( iii )「サインのリ・デザイン」というメディアによる発信
「契約を再発明するメディア」と位置付けて、契約ノウハウや事例・判例の紹介、契約に関わるテクニックなどを紹介するメディア。
日本のリーガルテック市場を一望できるホワイトペーパーも用意されています。(ダウンロードするにはGoogleフォームの質問に回答する必要あり)
■ 周囲からの高い評価
①クラウドサインが「2018年度グッドデザイン賞」を受賞
②「決算が読めるようになるノート」でお馴染みのシバタ ナオキさんからの評価
・PayPal創業者のピーター・ティールが言うところの「縦に独占せよ」というポリシーに従っている?
・一つの会社の中で異なる2つのネットワーク効果を上手に作り上げている弁護士ドットコムのビジネスモデルは、非常に美しいモデル。
※ 2つのネットワーク効果とは?
①弁護士ドットコムにおける「ネットワーク効果」
「弁護士」と「ユーザー」の2層におけるネットワーク効果 より多くの弁護士が登録して回答する => より多くのユーザーにとって魅力的な法律相談データベース => 更に多くの弁護士にとって魅力的なプラットフォームになる。
②クラウドサインにおける「ネットワーク効果」
「法務部同士」の1層におけるネットワーク効果。クラウドサインを利用して「契約書を送る」という行為そのものが新規顧客獲得につながる。
所感
弁護士ドットコム株式会社の一事業である「クラウドサイン」に、がっつりフォーカスを当ててリサーチをした所感は以下のようになります。
・「紙と判子で契約締結する今までの契約締結のあり方」を抜本から変えていきたいという目的がある。
・このゴールを成し遂げるには、日本にずっと沈着している「紙と判子」の文化や「規制外の規制」など高い壁がある。
・それを達成するための一つの手段として、積極的な情報発信(市場への投げかけ・市場啓蒙的位置付け)をしているのではないか?
・「ユーザーのため / 社会のために自社サービスを広める」という熱い想いがあるからこそ、スッと情報が入って来やすいし印象も良い。
それでは、最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました!
【追記】
当記事を受けて、クラウドサイン事業責任者である橘さんがコメントをしてくれました。説得力がすごいです...。
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