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【小説】アルカナの守り人(11) ヒカリ


 「…私たちの一族は、この奇病に備えてきた。何世代も前からね。なぜなら、この奇病が起こることは、すでにこの本に記されていたから。」

 ヒカリはそう言うと、ヨウの側からゆっくりと立ち上がった。そして、フウタの前まで歩いてくると、いつも大事そうに持ち歩いている、例の古本のページを開いて、フウタに読むよう促した。フウタが本を覗き込むと、確かにページには何か書かれている。なんだか、文字がクリアではなくて読みにくい。まるで、本からインクが滲み出たような、浮き出てきたようなそんな奇妙な様だった。
 ヒカリによると、この本は「魔本」と言っても良いものらしい。文字が必要な時に必要なタイミングでページに浮き出てくるのだという。ヒカリが指し示したページの中には、山中都市に移動した人類と太陽の絆について書かれていた。そこには、移住後八世代目で、太陽と人類の絆が完全に切れるということ、絆が切れた人類は、力つき倒れていくことがはっきりと書かれていた。

「…私の父は、八世代目の太陽アルカナの能力者だった。予言された現象を起こさぬように、日々、緊張感を持って使命にあたっていたわ。そのお陰で、人類と太陽の絆は保たれていたし、全て、うまく行っていたの。…一年前まではね。」

 一瞬の沈黙…。
 ヒカリは、目を瞑り、俯く。心を落ち着けるように深く息を吸い込む。そして、その息をふぅと勢い良く吐き出した。数回、深呼吸を繰り返し、ヒカリは顔をあげた。




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