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【小説】アルカナの守り人(5) フウタ

 今、二人はヒカリの家に向かっている。ヒカリの家は、NYエリアにあるそうだ。他の山中都市に移動するには、転移ポイントに行かなくてはならなかった。
 
 転移すれば、他のエリアに行ける。その事を、もちろんフウタも知っていた。しかし、そうそう簡単に転移できるものではないのだ。転移料金はとてつもなく高額。フウタの給料、何ヶ月分か。それなりの身元証明も必要だ。審査には早くて数日、長ければ数ヶ月待つ事もあると聞く。

 「お、おい。ヒカリ。お前はNYエリアの人間だからさ。普通に転移で帰れるだろうけど、俺は、大丈夫なのか?身元証明とかも必要だろ?」

 そもそも、転移料金なんて持ってないぞ!
 ここが一番の大問題だが、流石の俺でも恥ずかしくて言えない。

 目の前に、大きな転移ポイントが見えてきた。街並みから一段上がった人工の丘の上に転移ポイントはある。転移ポイントの中心には、円柱状の物体が置かれている。その周りには転移のチケットを買う人々の行列も見える。
 しかし、ヒカリは特に行列を気にする様子もなく、スタスタと中心に向かって歩いていく。そして、円柱状の物体の側にいる係員に近づくと、身分証のようなカードを提示した。そのカードには、中心の円から放射状に炎が広がっているような、そんなマークが描かれていた。フウタは、横目でそのカードを一瞥し、マークの意味について考える。そして、あっ…と気付く。

あれは、太陽だ。
昔、地上から見えた太陽。それを表したマークだ…と。 



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