水鈴社公式note

小さな出版社です。丁寧に本を作り、届けていきます。主な刊行物は、瀬尾まいこ『夜明けのす…

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小さな出版社です。丁寧に本を作り、届けていきます。主な刊行物は、瀬尾まいこ『夜明けのすべて』/YOASOBIと直木賞作家4名によるコラボ小説『はじめての』/夏川草介『スピノザの診察室』など。著者インタビューなどを発信します https://www.suirinsha.co.jp

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  • そんなときは書店にどうぞ

    水鈴社発・瀬尾まいこさんが書き下ろす“書店偏愛”エッセイ。

最近の記事

瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第十二回 極悪人はどこに?

なぜ、なぜ、なーぜの向こう側 ここ数年、執筆をする前、編集者の方とお話をすることがあります。 「好きに書いてください」と言ってくださる方がほとんどですが(それが一番好き! みなさんそうお申し付けください)、テーマみたいなものをさりげなくいただくこともあります。 ところが、テーマどおりに書けたこと一度もないんですよね。(え……。才能なさすぎ?) 「瀬尾さんの小説、いつも若い人が出てくるので、たまにはおじさんが主役の話、書きませんか?」 その結果できたのが、『その扉をた

    • 瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第十一回 誰でも可愛くなれる街

      市町村別ご感想1位に輝いたのは 本になるとプルーフという作品の見本が作られることがあり、それが書店さんに配布され、読んでくださった書店員さんが本の注文書にご感想を書いてくださいます。 (あれ、どえらいシステムですよね。ただ注文したいだけなのに、どうして感想書く欄が。私やったらじゃあ注文せんとこうってなってしまいそうです) でも、そのご感想、読むのは大好きで、出版社の方が送ってくださる時は(いつも全部送ってほしいなーとここで出版社の方々にアピール)何度も読んでるんです。

      • 瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第十回 もしも私が泳げていたら

        小さな秘書さん 文庫『夜明けのすべて』のPOPをもって伺う書店巡りも、数回目になりました。 このころから、一緒に行く時には、娘は書店さんに「私は秘書です。あ、こちらが水鈴社の営業で社員の瀬尾さんです」と私を紹介するようになりました。 私、有能なんか、下っ端なんかようわからん立場やな。 娘、写真が好きで、書店員さんとの写真に入りたがるんですよね。(被害に遭われた書店員さん、すみません) 「え、なんであんたまで写るん?」と言うことなく、皆さん「いいよ、一緒に撮ろう!」と

        • 瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第九回 書店巡りの強い味方

          敏腕営業のフリ作戦! 書店巡り。昨年の9月下旬には、大阪、兵庫へと向かいました。 実はこの書店訪問から、私、夏川草介さんの『スピノザの診察室』のプルーフ(書店さん配布用の見本)をお配りしてたんです。 夏川草介さんの刊行に向けてのお言葉を読んで胸を打たれ、人の生き死にを前にした人しか書けないものって絶対あるし、それをここまで穏やかに真摯に見つめてる人っているだろうか。 と感動し、水鈴社の社長(あのダジャレの人)に無理を言って宣伝させていただくことにしました。 私が書店

        瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第十二回 極悪人はどこに?

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        • そんなときは書店にどうぞ
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          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第八回 そうだ、奈良に行こう!

          これぞ奈良?愛について語る店長 昨年は、少しずつ以前の生活が戻ってきたように感じます。 そして、9月に『夜明けのすべて』が文庫化されることになり、久しぶりに書店さんをめぐることにしました。 え? 新作じゃないよね? 文庫になっただけならおとなしくしといてくれる? すみません。チャンスがあれば、書店さんに行きたいんで。つい。 というわけで、これから何回かに渡り、書店巡りを書いていきます。 ただ、プライバシーの問題や、応援してくださっているのにお邪魔したくても行けない

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第八回 そうだ、奈良に行こう!

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|番外編 映画「夜明けのすべて」プレミアナイト

          玉子かけご飯の醤油1滴のすごさ 2024年1月11日、「夜明けのすべて」の特別プレミアナイトに、ダジャレ社長に連れて行ってもらいました。 前回、映画の撮影現場にお伺いしていた時に、スタッフや出演者の方々にお会いしていたので、緊張は薄まっているはずだったのですが、大都会東京にそわそわしました。 試写会の前日、宿泊予定のホテルまでタクシーに乗ったのですが、運転手さん、頼んでもないのに、「これが国会議事堂です」「ここから東京タワーが見えます」「最近、麻布台ヒルズというのができ

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|番外編 映画「夜明けのすべて」プレミアナイト

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第七回 あの瞬間にあったもの

          コロナ禍でも頑張る書店を尊敬 本屋大賞受賞後、書店さんを巡って楽しい思いをしていたのもつかの間、その翌年の春ごろに、感染症が広まりました。 あまり外に出てはいけない空気に、書店さんを図々しく訪れることもままならなくなりました。 それでも、コロナ禍に出版された本に関しても、書店さんがいろんなことを企画してくださり、ありがたいことばかりでした。 ある地域では4つの書店さんを回って合言葉を完成させると、特典があるという企画。 その合言葉が途中でわかりそうでわからない秀逸な

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第七回 あの瞬間にあったもの

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第六回 「水鈴社の夜明けぜよ」

          『夜明けのすべて』の夜明け 本屋大賞授賞式後、タクシーの中で敏腕編集者Sさんが、突然熱く語りだしました。 酔っておられたので、話があっちこっちに飛んで、「ぼく、メダカ好きで3000匹飼ってるんですよね~」という「あ、そうなんですね」という答えしか浮かばない話をされ、「ぼく、蘭もたくさん育ててるんですよね」というやっぱり「あ、そうなんですね」と答えるしかない話をされ、「布団が吹っ飛んだ」という、え? 突然どうした? 誰かお呼びしましょうか? と心配になるダジャレを発した後、

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第六回 「水鈴社の夜明けぜよ」

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第五回 アイラブ書店

          一人でもこっそり書店さんへ 私、書店員さんに会うのが本当に好きなんです。 自分の小説を読んでくださっている方とお話をする機会ってなかなかないんですよね。 しかも、それを大事に売ってくださっている書店員さんとお話しできるって幸せです。 そして、書店員さんって話題が豊富でやっぱり楽しい。 もちろん、普段ママ友と、「次、結婚するなら斎藤工か向井理か」と話しているときも笑えるし、「旦那の食器洗浄機への食器の入れ方が悪すぎる」と愚痴っているときもすっきりするし、「あ、さっきの

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第五回 アイラブ書店

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第四回 くす玉を割るコツと絶景横浜

          書店さんのPOPはスゴイ! 『そして、バトンは渡された』で本屋大賞をいただいた直後、書店さんを訪れることが増えたのですが、うれしいのは書店さんがかわいい手の込んだPOPを作ってくださったり、華やかに飾ってくださったりしていることです。 ちやほやされたことが一度もない私にとって、本当に夢のような1年でした。 書店さんの作られたPOPは今でも宝物です。 どうやって作っているのだろうと驚きの数々の品。 本を読んでその内容を形にできるセンスと、作り上げる力。 すごいです。

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第四回 くす玉を割るコツと絶景横浜

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|番外編 映画「夜明けのすべて」撮影見学記

          上白石萌音さんと石ころと 2022年の12月、映画「夜明けのすべて」のロケ現場に当時小学3年生だった娘と見学に行きました。 撮影しているところなどそうそう見られるものじゃないとわくわくする反面、現場なんか行ったら、「おいおい、ド素人うろうろさせんなよ」「誰だよ。こんな田舎者の親子連れてきたやつ」と怒号が飛ぶ姿も想像していました。 プロが集まる場所って、ただならぬ緊張感ある気がしますよね。 そして、三宅唱監督。 お会いする前に、お姿をお写真で拝見したのですが怖かったん

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|番外編 映画「夜明けのすべて」撮影見学記

          雫井脩介『互換性の王子』刊行記念インタビュー|いろんなものがてんこ盛りのエンターテインメントを目指しました

          「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位に輝いた『犯人に告ぐ』(2004年)、木村拓哉主演で映画化された『検察側の罪人』(2013年)、直木賞候補となった『クロコダイル・ティアーズ』(2022年)など。雫井脩介は、独創的ながら現実でもあり得そうな状況設定を元にしたサスペンス作品を数多く手掛けてきた。最新長編『互換性の王子』はサスペンスとして開幕しながらも、物語が先へ進むにつれて企業小説、ラブストーリー、家族小説……と多彩な色が重なっていく。作家史上最大規模の“全部盛り”エンタ

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          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第三回 その神輿、次は私が担ぎたい 

          いざ、本屋大賞授賞式へ 2019年4月。 本屋大賞の授賞式が行われました。 さて。 授賞式の1日。 裏側はどうだったかと言うと……。 まず、田舎者の私は前日の夜遅く東京に乗り込みました。 東京のホテルに到着し、フロントで名前を言うと、「こちら。Sさん(敏腕編集者)から」とおっしゃれーな紙袋がわたされるではないですか。 こんな場面、一昔前のドラマでしか見たことないわ。 部屋に入って、すぐさま開けると、中身は超高級チョコレートでした。 Sさん、私のこと狙ってる

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          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第二回 そしてバトン、ゴールデンイヤー 

          光栄すぎる受賞ラッシュ 『そして、バトンは渡された』が刊行された1年間は今までで一番と言っていいくらい華やかな1年となりました。   自慢みたいで恐縮ですが、『そして、バトンは渡された』では、山本周五郎賞にノミネートをしていただきました。 私、大学4年生で、現代文学のゼミで山本周五郎を研究し、「さぶ」で卒論を書いたので、そういうところが加味されているのかと思っていました。 なぜか落選したんですけど(あ、自慢になりませんでした)、私以外の候補者の方、そんなに山本周五郎さ

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          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|番外編 トークショーの温度

          本当はおしゃべりが苦手なのに 私が最大に苦手なことは、人前で話すことです。 講演のお仕事はいただいてもお断りするんですが、それは本当に話すのが下手だからなんです。 なぜかおしゃべりだと思われることが多く、「またまたー」と言われたりするのですが、実際に大失敗してるんです。 そう。忘れもしない、私の初講演が行われたのは、教員時代。 寒い冬の風が吹く季節でした。 そのころ勤務していた中学校でPTAに向け、年1回講演会をするという催しがあり、ある年講演する人物を探せなかっ

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|番外編 トークショーの温度

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第一回 無敵のカルカン先輩現る

          謎多き出版業界 小説を書き始めて十五年以上もの間、恐ろしいことに、私は本を買う以外に書店さんに伺ったことがありませんでした。 新刊が出た時など書店さんにご挨拶に行くという習わしを知らなかったのです。 二十代から三十代前半まで田舎の中学校で勤務をしていて、出版社の方とも年に一度お会いするくらいで、小説は真面目に書いてはいたけれど、普段は教員として生活していました。 そんなこんなで、できた本がどうやって売られるのかという仕組みも実はよくわかっていなかったという始末。 今

          瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第一回 無敵のカルカン先輩現る