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瀬尾まいこ『そんなときは書店にどうぞ』|第十九回 いいねっていいよね

SNSのアカウントは持ってなかったけど、「いいね」が大好きな瀬尾さんです。
noteに書店愛を詰め込んだエッセイを書きはじめるまでの、SNSとの攻防をお楽しみください。

「瀬尾まいこ」で検索

私はSNSをしていないのですが、人の発信を見るのは大好きで、以前は、ダジャレ社長のXを見たりXで自分の名前を検索したりしておりました。

ところが、経営者がイーロン・マスクさんに変わったからなのか、X、のぞけなくなりましたよね?

こっそり見ようとしたら「さあ、みんな、ログインをしようじゃないか」というような黒い画面が出てきて、さえぎられてしまうという。

昭和生まれの私にとって、ログインは勇気がいります。

自分の情報を入れることで、健康食品とかが毎月送られてきて、一生解約できなかったらどうしようと不安でしかありません。(昭和生まれってそんなに古くないか。私だけかもです。)

しかし、そうやって迷っている間に社長が新たなダジャレをつぶやきまくっているかもしれないと、ある日、一大決心をしログインを試みることにしました。

英語でなんだかんだ出てくるのを、言うとおりに進めていくと意外と簡単にXのアカウントを獲得できました。

晴れてX会員になったからには、見るだけでなく、何かしたくなってダジャレ社長のつぶやきにハートを押してみました。

すると、すぐに気づかれ、「瀬尾さん、~というアカウント名で、オレンジページ編集部をフォローしてるんですね」と言われ冷汗が。

そのアカウント名、パスワードと思って入れたアルファベットと数字!

流出したら、楽天市場で買い物しまくられるわ。

私の英語力のなさ、恐ろしいです。

けれど、パスワードとアカウントを間違えるのは、よくありそうなミスですが、オレンジページ編集部さんをフォローしているって、いったい、いつ、どこで、どうなったんやろう。

まあ、めっちゃ料理している人みたいやし、できる主婦みたいだからいいですけど。

そんなこんなで、謎多きXには近寄らないようにし、今はYahoo!リアルタイム検索で「瀬尾まいこ」と入れて見ています。

みなさんのつぶやきを見て思うのは、想像の何倍もひそかに本を読んでくださっている方がいるということ。

皆さん、もっと堂々と「読んでる」と言うてくれていいんですよ。

少し前には、「瀬尾さんがいろんなところにお子さん連れて行くの、きっとパニック障害をお持ちで、安心できるからだと思う」みたいなことを書いてくださっているのを見つけ、胸がじんとしました。

娘を連れて行くのは、預かってもらえる場がないのが一番の理由ですが、それでも、「仕事に子ども連れてくるなんて」と思われることもあるだろうというのも重々承知しています。(書店員さんは皆さん優しく、娘にとてもよくしてくださいます。)

それがこんなふうに、思いをはせて気遣ってくださる方がいることに、無意味な罪悪感や無駄に張りつめていた気持ちがほどけそうになりました。


ハートが好きなnote上級者

そして、ネット上でこのようなツールを使うのは、このnoteが初の試みです。

私、本当に書店さんが好きなんです。

あ、私、好きな人に平気で好きだと言うので不気味だと思いますが、我慢して下さい。

そして、「好き言うてんねんから、私の本にPOPをつけてよね」などという下心もないのでご安心ください。

教員時代も「あんたらが何より大事や」と話しては、「うぜー」「きもー」と中学生に言われていましたが、離任式で「みんなのことが好きだから、遠く離れても応援できる」みたいなことを言うたら拍手してもらえました。

きっと私がいなくなる時には、不気味さが払拭されると思いますので、もうしばらく耐えておいてください。

そういうわけで、書店さんに何かしたいという気持ちがあって、水鈴社社長に何かと相談をしてたんです。

あの人、ダジャレのセンスは皆無ですが、しょうもないことにでも耳を傾け、思い付きを形にしてくれようとするんですよね。

書店さんをあちこち巡った後に、「書店巡りをエッセイに書いて、レジ横においてもらうとかどうでしょう?」とダジャレ社長にお話ししたら、「それなら、水鈴社のノートに書きましょう」とご提案くださいました。

もちろん、イーロン・マスクに翻弄されている私なので、レジに置いても書店さんの手間が増えるだけだけど、かと言って会社のノートに書くってどういうこと? と驚きました。

その時のLINEを見てみたら、
私:「誰かには読んでいただきたいので、ノートに書くのはどうかと思います」
社長:「ノートというのはこれです」noteのページを貼り付けて説明。
というやり取りが。

社長、無知な私に付き合ってくださって、いつもありがとうございます。

でも、普通ノートって言われたら、「おいしかった! マスター、サイコー」「由美子。次は夫婦になって来ようぜ」みたいな観光地の有名店に置いてあるノートに書くイメージですよね?(今やそんな物ないんかな……。)

そんなnoteももう19回目。

私もnote上級者です。って、原稿を送っているだけで、あとは水鈴社さんが全部してくださっているんですけどね。

エッセイが始まってから、水鈴社さんのページを毎回見ているんですけど、ハートマーク、ドキドキしますよね。

私、自分でハートを押しています。(最初、何回もハートマークを押していたら、社長に1回しかカウントされないからやめてくださいと言われました。恥ずかしー。)

今のところ、番外編をのぞいてはカルカン先輩登場の回がハート数1位。

初回というアドバンテージを考慮してもダントツ。

やっぱりすごいです。先輩!

コメントもうれしいです。

noteのログインシステムはわからないんですけど、ザッカーマンやらビル・ゲイツやらがふっかけてくる難題を乗り越えここまでたどりついて、コメントしてくださっているんですよね。

感謝しております。

時差がなくご感想を拝読できるのが面白いです。

いつの日か、イーロン・マスクと対峙できるようになれば、Xでもつぶやいてみたいなと、この1、2週間ほどを振り返ってみたら、人様に言うような出来事はたったの一つもありませんでした。1ヶ月振り返ってもないわ。

そして、慣れ親しんだnoteも次回第20回で最終回を迎えます。

ラストは思いっきりおしゃべりしたいと思います。

瀬尾さんのエッセイが始まり、水鈴社公式noteがとても注目されるようになりました。
瀬尾さん、ありがとうございます!
次回はついに感動のフィナーレ。
7月 4日 (木)21時更新をお楽しみに!


瀬尾まいこ(せお・まいこ)
一九七四年、大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒。二〇〇一年、「卵の緒」で坊っちゃん文学賞大賞を受賞し、翌年、単行本『卵の緒』で作家デビュー。二〇〇五年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞、二〇〇八年『戸村飯店 青春100連発』で坪田譲治文学賞、二〇一九年『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞した。他の作品に『図書館の神様』『強運の持ち主』『優しい音楽』『僕らのごはんは明日で待ってる』『あと少し、もう少し』『君が夏を走らせる』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『私たちの世代は』など多数。

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