『命懸けの虚構〜聞書・百瀬博教一代』#19
秋田の獄に暮らして三年四ヵ月過ぎた一日、開く筈のない時間に博教の入れられた独居房の扉が開いた。
「面会だ。東京から従弟の坂本好延さんが来てくれたぞ」
博教は妹に絶対面会に来ないよう何度もハガキを出していたからだ。何事が起こったのだろうと思った。
正座して本を読んでいた博教は白衣をきちんと着直して、まだ一度も行った事のない面会房のある棟に向かった。
ニワトリ小屋のような面会室に入ると、錆びた金網の向うに、何と、この拳銃不法所持の事件の共犯の後藤清忠が坐っていた。
奴が