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子供の自殺が起きた時の背景調査の指針 (改訂版) 文部科学省 平成26年7月改定

前書き

本来、子供の自殺など起こしてはならないのだから、自殺が生じた時のことを記載する必要がないことは明記しておく
それなのに自殺が生じていることから、今後は決して同様の事態を生じさせないという遺児への謝罪と今後への決意表明にかえて背景調査の指針があると理解する

はじめに

  • 平成23年3月に、「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」において策定され、今後のノウハウの蓄積を期し田茂恩であった

  • その後の指針運用及びいじめ防止対策推進法の施工から指針が見直された

  • ノウハウの記載は、実際に即して検討する

総論

  • 自殺は原因が特定されない場合が少なくない

  • しかし、今後の予防のためにその経過を知る必要がある

  • 背景調査は、①基本調査、②詳細調査、で構成され、学校及び学校の設置者 (公立学校は教育委員会、私立学校は学校法人、国立大付属学校は大学法人) が主体となる

  • 目的は、①今後の自殺防止に活かすため、②遺族の事実に向き合いたいとの希望にこたえるため③子供と保護者の事実に向き合いたいなどの希望にこたえるため

  • 学校として児童生徒及び保護者に向き合うためのもの

  • 情報の取り扱いは、遺族・保護者・子供に丁寧に説明する

緊急対応と背景調査の関係

  • 調査と同時に心のケアを重視する

  • 遺族のケアを職能団体などと連携して包括的に行う

  • そのためにも日ごろから医療機関など関係機関と連携する

基本調査と詳細調査の概要

(ここまで見る限り、詳細調査を行わずに遺児の心が癒されることはないと思われる)

基本調査の実施

  • 自殺又は自殺が疑われる死亡事案の全件を対象として行う

  • その時点で持っている情報及び調査期間中に得られた情報を迅速に整理する

  • あくまでその時点で持っている事実関係の整理

  • 遺児の作文、連絡帳、生活ノート、メモ、プリントなどを集約して確認・保管

  • 机や上履きなど所有物の状況も確認、保管

  • 学級日誌、部活動・委員会活動の記録ノートも確認・保管

  • 教職員に調査の趣旨と対照を説明し、3日以内に全教員からの聞き取り (校長や教頭が聞き取るが話しにくいならば外部の教育委員会など)

  • 聞き取りは、学級・部活動、委員での様子、友人・教職員との関係を含む対人関係、健康面、性格面、学習面、進路面、家族関係、学外の生活で把握していることすべて

  • 同時に、教職員のストレスと精神状況を見て、不安・興奮・不眠・抑うつなどあれば必要な場合は医療機関につなぐ

  • スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカにも聞き取る

遺児と関係の深い子供への聞き取り

  • 保護者に連絡して理解・協力を得て、保護者と連携する

  • 聞き取りをしたことそのものが周囲に知られないよう配慮する

  • これらの児童も自殺のリスクを抱えていることを肝に銘じてケアを同時におっこなう

  • いじめが背景に疑われるならいじめ重大事態として、国立大学学長を通じた文部科学省への報告、地方公共団体教育委員会を通じた公共団体の長への報告、私立大学は都道府県知事へ報告

  • 学校及び設置者は、調査内容を適切に遺族に説明

  • 調査着手から1週間以内をめどに報告する

  • この時点での情報は断片的である可能性があり、「学校で悩みを抱えていなかった」のように断定的な説明はできない

  • 詳細な調査は、「詳細調査」への移行により行う

詳細調査への移行の判断

  • 詳細調査は、心理学の専門家など外部専門家を加えた調査組織により行われる

  • 自殺に至る過程を丁寧に探り、その心理状態を解明し、再発防止策を打ち立てる

  • 詳細調査の対象は、学校の出来事など学校にかかわる背景を主たる対象とし、病気などの個人的な背景と特性、家庭にかかわる背景も対象となる

  • (ここで注意すべきは、この記載によって、例えば精神科・心療内科への通院歴及び家庭の問題が認められたことをもって、複数要因が相互作用しているため学校の出来事が原因だといえないというような結論にすべきではないということである)

  • (学校が賠償責任を負うかどうかは裁判で争えばよいことであり、もし家庭に問題があって同時に学校でもいじめなどの悲惨な状況をうけて自殺したなら、せめて学校だけでも自らの過ちを現実に即して認めてあげるべきである。裁判では家庭の要因なども加味して自殺の予見可能性が争われるのだから、せめて学校だけでも児童の味方になってあげてほしい)

  • 基本的にはすべてに詳細調査が望まれるが、難しい場合は、学生生活に要因が疑われる場合、遺族の要望がある場合、その他の必要な場合に調査をすべき

  • 学生生活の要因とは、学業不振、進路問題、不登校、原級留置、教職員からの指導、懲戒、転校、友人の転校、教職員との関係の悩み、いじめ、異性問題、暴力、素行不良、指導困難学級などが該当する

遺族と調査の関連

  • ご遺族から要望があれば詳細調査を行うが、要望がない場合は必要性に応じて遺族に提案する場合も考えられる

  • ただし、いじめが疑われる場合は、いじめ防止対策推進法上の重大事態としての対応が必ず必要となる

  • 詳細調査では、遺族に対し、趣旨、手法、調査組織の構成、期間、入手資料の取り扱い、遺族への説明の在り方及び好評の案が得方を事前に説明し同意を得る

  • (したがってここまでのまとめとして、児童が自殺した場合、基本調査と周囲のケアを並行して実施しながら、遺族の意向を確認する。そして、遺族の意向または学校の背景因子の可能性に応じて、現実の把握と自殺の予防に資する情報の収集と整理によって、学校・児童・遺族全体のケアに貢献するということである

  • (特別にいじめが背景にある場合は、手続きに従って報告する必要が生じる)

  • (この調査の在り方は、亡くなった方のために、学校だけではなく職場でも習うべきところと考えられる

詳細調査の実施

  • 平常時から組織の設置が必要

  • いじめ防止対策推進法に基づく機関があるならば、いじめ以外の要因による自殺にも調査を行えるよう体制を整えておく

  • 組織は、弁護士、精神科医、学識経験者、心理・福祉の専門家

  • 調査対象者と直接的な利害関係のあるものを除いた構成とする

  • 都道府県教育委員会は、職能団体・大学・学会などから推薦を得られるよう体制を整えておく

  • 外部調査委員会を教育委員会におく場合は、附属機関にあたる

子供への調査

  • 遺族の了承、子供・保護者の理解と協力を得て、自殺の事実を全員に伝える必要がある

  • その後、アンケートで一斉調査を行う

  • ただしこれが原因追求ではなく、現実理解のために行うものである

  • いじめが疑われる場合は、いじめ防止対策推進法における重大事態として必ず調査組織を設置して行う

  • 必要な場合はアンケートに限らず聞き取りも行う

  • 当然ケアを並行する

  • アンケートはうわさや憶測、悪意を持った記述がみられる可能性があるため、記名式が望ましい

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