教育のスゴい論文

教育に関する「スゴい論文」を1分で読める記事にまとめています。

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スゴ論まとめ

スゴ論は「教育に関するスゴい論文」を1分で読める記事にまとめています。このページではテーマごとに過去の記事リンクを貼り付けているので、関心がある記事を探してみてください。 教育エビデンスに関する記事宿題の効果 グループワークの効果 文脈音読の効果 生徒同士の教え合いの効果 振り返りの効果 生活指導の効果 ラーニングスタイル別学習の効果 教員の成果報酬型給与システム導入の効果 小中学生を留年させる効果 ソーシャル エモーショナル ラーニング(社会性と情緒に関する学び)の効果

    • アメリカでは半数が受けている!?校長を支えるリーダーシップ・コーチングの効果

      学校の校長の職務は、近年ますます複雑さを増しています。 校長には単なる管理者ではなく、学校全体を率いるリーダーとしての側面も求められるようになりました。 特に米国では、2001年に「どの子も置き去りにしない(No Child Left Behind)法」が施行され、校長の責任はさらに拡大しました。 カリキュラムの理解、家庭やコミュニティへの説明責任、教員の採用とマネジメントなど、その職務の幅広さは驚くべきものです。 研究によれば、優れた校長は、生徒の学力を1年間で通常よりも

      • 成績が良い生徒ほどテストの点数を正確に予測できる

        以前スゴ論では、私たちが自信過剰になってしまう要因の一つとして、メタ認知の欠如を紹介しました。例えば、サッカーの初心者は自分の実力の程度をうまくメタ認知できていないので、中級者や上級者と比較すると自分の実力を過信してしまう、というお話でしたね。この現象を総称してダニング・クルーガー効果と呼びました。 以前紹介した論文では、実験を通してダニング・クルーガー効果を検証していましたが、実際の教室の中でこうした現象は本当に起きているのでしょうか?実際の教育現場で観察を行った研究を紹

        • 人間の限界?!:7±2という魔法の数字

          突然ですが、電話番号って覚えるのが難しいですよね。携帯電話・スマートフォンが普及している今、電話番号を覚えなければいけない状況自体がそもそも珍しくなっているというツッコミはさておき、ランダムな10桁近くの数字を覚えるという行為が難しいという感覚はなんとなくみんな共通して持っているでしょう。では、いったい何桁目からこの「覚えにくい」という感覚は出てくるのでしょうか? 今回はこの疑問に対し(切り口は違えど)、真っ向から取り組んだ論文を紹介します。実はこの論文、今から70年近く前に

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          ニセ科学 脳に関して重要なことはすべて3才までに決まる?

          教育ビジネスや自己啓発ビジネス業界で商業利用されやすいニセ科学に関するシリーズの第三弾です。今回は脳に関して重要なことはすべて3才までに決まるのかです。 結論 脳の初期発達が学習能力に決定的な影響を与えるという主張は、現時点(2007年)の科学的証拠によって支持されない シナプス形成と学習能力の間には一定の関連がある可能性があるが、その決定的な役割を特定する証拠は不足している 幼少期の過剰な刺激が長期的な学習能力向上につながるという見解は、実際の科学的データを大きく超

          ニセ科学 脳に関して重要なことはすべて3才までに決まる?

          ニセ科学 人間は脳の10%しか使っていないのか?

          学習と科学の組み合わせは、教育ビジネスや自己啓発ビジネス業界で非常に人気があります。「科学的に○○が正しい。脳科学がこう言っている」と言えば売上が伸びるためです。特に心理学や脳科学はビジネスに利用されやすく、それに危機感を持ったOECDは2002年に「脳科学神話(Neuromyth)」という特集を組みました。明らかに誤っているにも関わらず科学的であるかのように広告で使用される神話、要するにニセ科学について、その起源や反証を調査したレポートです。 日本語訳も出版されていますが

          ニセ科学 人間は脳の10%しか使っていないのか?

          マシュマロチャレンジの意外な切り口:我慢と文化の関係性

          これまでスゴ論では何回か、「マシュマロチャレンジ」と呼ばれる実験を取り上げてきました。小さい子供の目の前にマシュマロを置き、食べることを一定時間我慢することができるかを観察する実験でしたね。 マシュマロチャレンジの実験は1970年代に初めてアメリカで行われ、子供の「自制心」なるものが心理学界隈の内外で一躍脚光を浴びる大きなきっかけとなりました。50年以上経った今も、多くの研究に影響を与え続けているまさに「スゴい」研究です。今回はマシュマロチャレンジを応用して、自制心と文化の

          マシュマロチャレンジの意外な切り口:我慢と文化の関係性

          【論文紹介】苦手科目・得意科目:あなたは何から勉強し始めますか?

          期末テスト前にどの教科から勉強し始めるかー誰しもが悩んだことがあるのではないでしょうか。苦手な教科から勉強する人、得意な教科から勉強する人、はたまた好きな教科から勉強する人と、様々な作戦がありますよね。今回は、生徒が興味関心・得意不得意に応じて学習時間をどのように配分するのかという問いに関する研究を紹介します。 結論 学習時間が充分にある場合、人は難しいと思う内容により多くの学習時間を割り当てる。 一方、学習時間が不足している場合、人は簡単だと思う内容により多くの学習時間

          【論文紹介】苦手科目・得意科目:あなたは何から勉強し始めますか?

          国際比較 授業中についタブレットで遊んじゃう問題

          私はEdTech(教育×テクノロジー)の研究員でもあるのですが、グローバルなカンファレンスで日本のプレゼンスがほとんどないことを寂しく思っていました。特に2018年に海外に進出したいEdTech企業向けのコンサル会社が「日本はICTデバイスの導入が著しく遅れているので日本進出はおすすめしない」と言っているのを聞いてショックを受けました。 そこから数年、予想以上のスピードでタブレットの導入と実践が進み、今やデジタルデバイスの使用は日本でも珍しいものではなくなりました。ただし、

          国際比較 授業中についタブレットで遊んじゃう問題

          自信たっぷりの間違いほど学びにつながる

          「絶対にあっていると思い込んでいたことが実は間違っていた」、という経験はありますか?僕は中学生まで「服部」という苗字は「ふくべ」という読みだと思い込んでいました。中学入学の際、新しいクラス内で赤っ恥をかいたことは今となっては良い思い出です。誰しもが経験したことがあるであろう、こうした自信たっぷりの間違い。これらの間違いと学びの関連性について調べた研究を今回は紹介します。 結論強い確信を持っている知識が誤っていることが判明すると、通常の知識が誤っていることが判明した時と比べて

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          心理学の博士院生が語る、心理学ってうさん臭くね?という話

          突然ですが自己紹介です。僕は現在、教育心理学の博士課程で学生をしています。最近30才の誕生日を迎えました。30才になってまだ学生をやっているとは正直想像もしなかったので、自分でもびっくりしています。 さて、「心理学」という言葉を聞くと皆様はどのようなイメージを思い描くでしょうか?僕は心理学は「身近」で「うさんくさい」学問だと思っています。 「私は薬物動態学を勉強しています。」「私は心理学を勉強しています。」正直、どちらが凄そうに聞こえるでしょうか?圧倒的に前者ですよね。薬

          心理学の博士院生が語る、心理学ってうさん臭くね?という話

          国際比較 デジタル時代における紙の本

          PISAをはじめとする国際学力テストでは、家にある紙の本の数を聞くことがよくあります。どの調査でも大抵家にある本の数は親の社会経済地位をコントロールした後でも、学力や読書週間と相関があります。つまり、お金があってもなくても、親の学校歴が高くても低くても、家に本がたくさん生徒は成績が良い傾向があるということです。 ただし、最近は書籍のデジタル化が急激に進んでおり、親が読書家であってもその本は親のデバイスの中にあって子どもがアクセスできる本の数は減っているかもしれません。また逆

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          国際比較 環境問題に関する知識や意識

          地球温暖化をはじめとする環境問題は年々緊迫感を増しています。メディアや教育現場で環境問題が取り上げられることも増えていますが、現代の生徒たちは環境問題に立ち向かう準備ができているのでしょうか? 結論 環境科学の項目における生徒の成績は、PISAに参加しているほとんどの国において、2006年から2015年にかけて向上しなかった 調査参加国平均では、約半数の生徒が環境保護への関心が強い 環境保護への関心が強い生徒は、社会経済的地位の影響をコントロールした後でも、環境保護に

          国際比較 環境問題に関する知識や意識

          教育の効果はどう測る?② 実装評価

          教育の効果測定シリーズ第二弾です。前回は、健全な評価のためには関係者間でセオリーオブチェンジについて共通認識を持つことが重要とお伝えしました。 では、セオリーオブチェンジを使ってどのように評価を行うのでしょうか。Gateway to CollegeというアメリカのNPOの具体例を使ってご紹介します。 2つの評価 まず教育プログラムの評価においてよく混乱が起きるのは、「計画通りに実行できているか」と「どんな効果があったか」を混ぜてしまうことです。 ① Implement

          教育の効果はどう測る?② 実装評価

          教育の効果はどう測る?① セオリーオブチェンジ

          次から次へと出てくる新しい教育手法や取り組み。ついつい目新しいものに飛びつきたくなりますが、そもそも教育の効果はどのように測るのでしょうか?例えば近年小学校からプログラミング教育が始まりましたが、どうその効果を測るのでしょうか?「生徒の目がキラキラしていた」や「欧米では当たり前らしい」といった曖昧な評判を元に教育プログラムの導入や継続を検討するのは合理的とは言えないでしょう。 では、もしあなたがある教育プログラムや教育政策の採用責任者だった場合、どのように採用有無を判断しそ

          教育の効果はどう測る?① セオリーオブチェンジ

          達人は〇〇を使って物事を記憶する

          藤井聡太プロを筆頭に、将棋界が近年盛り上がっていますね。ところで皆さんは、プロ棋士の対局後のインタビューの様子をニュース等で見たことはあるでしょうか?記者から「この局面で〇〇という手は考えられなかったのでしょうか?」という質問を受け、「その手も考えたんですが、××角、△△歩、同銀と進んだときに次の手が見えなくて・・・」等と応対するやり取りを見ていると、その記憶力に度肝を抜かれますよね。将棋のみならず、チェスや囲碁のプロは対局の手順を長期にわたって記憶することができることが知ら

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