教育のスゴい論文

教育に関する「スゴい論文」を1分で読める記事にまとめています。

教育のスゴい論文

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スゴ論まとめ

スゴ論は「教育に関するスゴい論文」を1分で読める記事にまとめています。このページではテーマごとに過去の記事リンクを貼り付けているので、関心がある記事を探してみてください。 教育エビデンスに関する記事宿題の効果 グループワークの効果 文脈音読の効果 生徒同士の教え合いの効果 振り返りの効果 生活指導の効果 ラーニングスタイル別学習の効果 教員の成果報酬型給与システム導入の効果 小中学生を留年させる効果 ソーシャル エモーショナル ラーニング(社会性と情緒に関する学び)の効果

    • マシュマロチャレンジの意外な切り口:我慢と文化の関係性

      これまでスゴ論では何回か、「マシュマロチャレンジ」と呼ばれる実験を取り上げてきました。小さい子供の目の前にマシュマロを置き、食べることを一定時間我慢することができるかを観察する実験でしたね。 マシュマロチャレンジの実験は1970年代に初めてアメリカで行われ、子供の「自制心」なるものが心理学界隈の内外で一躍脚光を浴びる大きなきっかけとなりました。50年以上経った今も、多くの研究に影響を与え続けているまさに「スゴい」研究です。今回はマシュマロチャレンジを応用して、自制心と文化の

      • 【論文紹介】苦手科目・得意科目:あなたは何から勉強し始めますか?

        期末テスト前にどの教科から勉強し始めるかー誰しもが悩んだことがあるのではないでしょうか。苦手な教科から勉強する人、得意な教科から勉強する人、はたまた好きな教科から勉強する人と、様々な作戦がありますよね。今回は、生徒が興味関心・得意不得意に応じて学習時間をどのように配分するのかという問いに関する研究を紹介します。 結論 学習時間が充分にある場合、人は難しいと思う内容により多くの学習時間を割り当てる。 一方、学習時間が不足している場合、人は簡単だと思う内容により多くの学習時間

        • 国際比較 授業中についタブレットで遊んじゃう問題

          私はEdTech(教育×テクノロジー)の研究員でもあるのですが、グローバルなカンファレンスで日本のプレゼンスがほとんどないことを寂しく思っていました。特に2018年に海外に進出したいEdTech企業向けのコンサル会社が「日本はICTデバイスの導入が著しく遅れているので日本進出はおすすめしない」と言っているのを聞いてショックを受けました。 そこから数年、予想以上のスピードでタブレットの導入と実践が進み、今やデジタルデバイスの使用は日本でも珍しいものではなくなりました。ただし、

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          自信たっぷりの間違いほど学びにつながる

          「絶対にあっていると思い込んでいたことが実は間違っていた」、という経験はありますか?僕は中学生まで「服部」という苗字は「ふくべ」という読みだと思い込んでいました。中学入学の際、新しいクラス内で赤っ恥をかいたことは今となっては良い思い出です。誰しもが経験したことがあるであろう、こうした自信たっぷりの間違い。これらの間違いと学びの関連性について調べた研究を今回は紹介します。 結論強い確信を持っている知識が誤っていることが判明すると、通常の知識が誤っていることが判明した時と比べて

          自信たっぷりの間違いほど学びにつながる

          心理学の博士院生が語る、心理学ってうさん臭くね?という話

          突然ですが自己紹介です。僕は現在、教育心理学の博士課程で学生をしています。最近30才の誕生日を迎えました。30才になってまだ学生をやっているとは正直想像もしなかったので、自分でもびっくりしています。 さて、「心理学」という言葉を聞くと皆様はどのようなイメージを思い描くでしょうか?僕は心理学は「身近」で「うさんくさい」学問だと思っています。 「私は薬物動態学を勉強しています。」「私は心理学を勉強しています。」正直、どちらが凄そうに聞こえるでしょうか?圧倒的に前者ですよね。薬

          心理学の博士院生が語る、心理学ってうさん臭くね?という話

          国際比較 デジタル時代における紙の本

          PISAをはじめとする国際学力テストでは、家にある紙の本の数を聞くことがよくあります。どの調査でも大抵家にある本の数は親の社会経済地位をコントロールした後でも、学力や読書週間と相関があります。つまり、お金があってもなくても、親の学校歴が高くても低くても、家に本がたくさん生徒は成績が良い傾向があるということです。 ただし、最近は書籍のデジタル化が急激に進んでおり、親が読書家であってもその本は親のデバイスの中にあって子どもがアクセスできる本の数は減っているかもしれません。また逆

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          国際比較 環境問題に関する知識や意識

          地球温暖化をはじめとする環境問題は年々緊迫感を増しています。メディアや教育現場で環境問題が取り上げられることも増えていますが、現代の生徒たちは環境問題に立ち向かう準備ができているのでしょうか? 結論 環境科学の項目における生徒の成績は、PISAに参加しているほとんどの国において、2006年から2015年にかけて向上しなかった 調査参加国平均では、約半数の生徒が環境保護への関心が強い 環境保護への関心が強い生徒は、社会経済的地位の影響をコントロールした後でも、環境保護に

          国際比較 環境問題に関する知識や意識

          教育の効果はどう測る?② 実装評価

          教育の効果測定シリーズ第二弾です。前回は、健全な評価のためには関係者間でセオリーオブチェンジについて共通認識を持つことが重要とお伝えしました。 https://note.com/sugo_ron/n/na2e96eda43e7 では、セオリーオブチェンジを使ってどのように評価を行うのでしょうか。Gateway to CollegeというアメリカのNPOの具体例を使ってご紹介します。 2つの評価 まず教育プログラムの評価においてよく混乱が起きるのは、「計画通りに実行でき

          教育の効果はどう測る?② 実装評価

          教育の効果はどう測る?① セオリーオブチェンジ

          次から次へと出てくる新しい教育手法や取り組み。ついつい目新しいものに飛びつきたくなりますが、そもそも教育の効果はどのように測るのでしょうか?例えば近年小学校からプログラミング教育が始まりましたが、どうその効果を測るのでしょうか?「生徒の目がキラキラしていた」や「欧米では当たり前らしい」といった曖昧な評判を元に教育プログラムの導入や継続を検討するのは合理的とは言えないでしょう。 では、もしあなたがある教育プログラムや教育政策の採用責任者だった場合、どのように採用有無を判断しそ

          教育の効果はどう測る?① セオリーオブチェンジ

          達人は〇〇を使って物事を記憶する

          藤井聡太プロを筆頭に、将棋界が近年盛り上がっていますね。ところで皆さんは、プロ棋士の対局後のインタビューの様子をニュース等で見たことはあるでしょうか?記者から「この局面で〇〇という手は考えられなかったのでしょうか?」という質問を受け、「その手も考えたんですが、××角、△△歩、同銀と進んだときに次の手が見えなくて・・・」等と応対するやり取りを見ていると、その記憶力に度肝を抜かれますよね。将棋のみならず、チェスや囲碁のプロは対局の手順を長期にわたって記憶することができることが知ら

          達人は〇〇を使って物事を記憶する

          (子供は)見てるぞ!

          子供のしつけといえば、良いことをすれば褒めてあげる、悪いことをすれば叱る、等の方法が一般的ですよね。少し専門的な言葉を使うと、こうしたしつけの方法は「フィードバックを与える」とまとめられます。子供の行動に対して大人が何かしらフィードバックを与え、そのフィードバックを受けて子供が「この行動をすると褒められるんだな」等の学びを得ていく、、、という具合です。この仕組みは教育心理学において、学びのプロセスの根幹の一つであると長らく考えられており、「いかに子供に効果的に働きかけるか(フ

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          クラスの大きさと学力の関係性

          クラスの大きさは果たして何人が最適なのでしょうか?一人の先生に対する生徒の人数の比率が小さいほど、「なんとなく贅沢そう、良さそう」という感覚は誰しもが持ち合わせているかとは思いますが、実際にこの質問を科学的に検証する事は極めて困難です。この問いの検証が困難な原因の一つとして、「実験を行うことが困難だから」ということが挙げられます。科学的な検証のためにはランダム化実験(生徒を無作為に大きさの異なるクラスに振り分ける実験)を本来行わなければいけないのですが、これが実務的にも倫理的

          クラスの大きさと学力の関係性

          マシュマロチャレンジのその後

          以前スゴ論にて、心理学の中でも非常に著名な実験の一つである、マシュマロチャレンジに関する記事を紹介しました。幼児の自制心と将来の学力の関係性を示した、とても可愛らしい実験でしたね。この実験が行われたのが1990年。非常に著名な研究であるがゆえに、その後、数多くの研究者がこの実験の反復を試みてきました。(*実験の反復:ある実験の結果の信憑性を上げるために、同じ実験を行い、同じ結果が得られるか検証すること。)元の実験から30年以上経った今、マシュマロチャレンジは研究者の間でどのよ

          マシュマロチャレンジのその後

          父親がどれだけ育児に参加しているかは脳をスキャンすればわかる

          他の動物に比べ、生まれたばかりの人間の赤ちゃんを養育するには膨大な労力がかかります。そのような労力を負担しても構わないと思える無償の愛はどのように育まれるのでしょうか? 女性は妊娠や出産や授乳を通じて愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが上昇し、脳の一部も活性化します。それらの生物学的変化を通じて赤ちゃんに特別な愛着を抱きます。では、妊娠出産しなかった親、つまり父親や養子縁組をした親には、子どもに対する無償の愛は生まれないのでしょうか?実の母親の愛情には勝てないのでしょうか?

          父親がどれだけ育児に参加しているかは脳をスキャンすればわかる

          私たちが自信過剰になってしまう理由

          「あなたは他の人と比較してどれぐらい運転が得意だと思いますか?」アメリカにおいて運転免許を持っている大人にこの質問を聞いていくと、ほとんどの場合、「平均以上」と答える人が過半数を大きく超えることが知られています。平均以上の運転技術を持ち合わせている人は本来人口の半分にしか満たないはずだという事を考えると、これはとても不思議な現象ですよね。運転技術に限らず、仕事や学業など、日常におけるあらゆる場面において、人は総じて自信過剰な傾向があることが知られています。私たちはなぜ自信過剰

          私たちが自信過剰になってしまう理由