国際比較 環境問題に関する知識や意識
地球温暖化をはじめとする環境問題は年々緊迫感を増しています。メディアや教育現場で環境問題が取り上げられることも増えていますが、現代の生徒たちは環境問題に立ち向かう準備ができているのでしょうか?
結論
環境科学の項目における生徒の成績は、PISAに参加しているほとんどの国において、2006年から2015年にかけて向上しなかった
調査参加国平均では、約半数の生徒が環境保護への関心が強い
環境保護への関心が強い生徒は、社会経済的地位の影響をコントロールした後でも、環境保護に無関心な生徒よりも理科の偏差値がおよそ8高かった
分析手法
15才の生徒に対するアンケートの国際比較(2015年のデータ)
※日本のデータは欠損
右上:環境問題に関する科学の平均点も、環境問題に関係のない科学の平均点も上がった
右下:環境問題に関する科学の平均点は下がり、環境問題に関係のない科学の平均点は上がった
左上:環境問題に関する科学の平均点は上がり、環境問題に関係のない科学の平均点は下がった
左下:環境問題に関する科学の平均点も、環境問題に関係のない科学の平均点も下がった
PISA2018では、ほぼ半数の生徒が「環境保護に熱心」であり、国や経済圏を問わず平均的に、地球に対する責任感、気候変動への認識、環境理解への自信があると回答している
但し、少なくない生徒が地球環境の世話は自分にとって重要ではない(オーストリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ドイツ、セルビア、スロバキア共和国、ウクライナの生徒の30%以上)と回答し、気候変動や地球温暖化についてはほとんど知らないか、聞いたことがない(アルゼンチン、インドネシア、レバノン、モロッコ、サウジアラビアの生徒の40%以上)と回答した
科学の成績が良い生徒ほど環境保護に関心が強い
社会経済地位が高い家の生徒ほど環境保護に関心が強い
環境に関する目的意識をもった生徒ほど家庭で節電する傾向がそうでない生徒に対して2倍ほど高い
科学の成績が良い生徒ほど環境問題に関するオンライン上の署名にサインする確率が低い
留意点
環境保護への関心が強い生徒の理科のスコアが高いことについて、関心が強いから成績が良いのか、またその逆なのか、それとも他に要因があるのかについてこの分析から結論を出すことはできません。(学校や家庭の社会経済地位の影響に関する指標はコントロール済みの分析結果です)
編集後記
環境教育は過去に比べて浸透してきていると思っていたので成績が伸びていないことは意外でしたが、関心が高まってきているのは良いことですね。活動の内容によっては関心が高い生徒ほど行動する傾向があるようなので、これからの未来を担う世代に対する環境問題に関する科学教育は重要といえそうです。
文責
識名由佳
参考文献
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?