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ニセ科学 脳に関して重要なことはすべて3才までに決まる?

教育ビジネスや自己啓発ビジネス業界で商業利用されやすいニセ科学に関するシリーズの第三弾です。今回は脳に関して重要なことはすべて3才までに決まるのかです。

結論

  • 脳の初期発達が学習能力に決定的な影響を与えるという主張は、現時点(2007年)の科学的証拠によって支持されない

  • シナプス形成と学習能力の間には一定の関連がある可能性があるが、その決定的な役割を特定する証拠は不足している

  • 幼少期の過剰な刺激が長期的な学習能力向上につながるという見解は、実際の科学的データを大きく超えた解釈である

根拠

  • 長い間、ニューロンの最大数は出生時に固定され、再生しないと考えられていたが、新しいニューロンは生涯のどの時点でも生成される(神経新生)ことが20世紀後半に明らかになった

  • 学習とは新しいシナプスの生成や既存のシナプスの強化・弱化であり、初期のシナプス形成(シナプス形成)は重要だが、これが学習能力に決定的な影響を与えるとする証拠は乏しい

  • ラットを使った実験では、豊かな環境がシナプス密度を増加させ、学習能力が向上することが示されたが、これは人工的な条件下で行われたものであり、人間に直接適用することはできない

ニセ科学の起源

  • 新生児のシナプスの数は成人に比べて少なく、成長の2か月後にはシナプス密度が指数関数的に増加し、10か月で成人のピークを超える。その後、10歳まで減少し、「成人数」のシナプスに達する。このようにシナプス形成が初期の数年間に集中して行われるため、幼児期が最も学習能力が高いとされたが、シナプス密度と学習能力の予測関係についての人間の神経科学データはまだ不足している

  • 3才までが不可逆的に重要という神話は、母親の幼少期の教育が重要だという18世紀からの文化的信念に根ざしている

  • 20年前のラットを使った実験が、非専門家によって誤った解釈と組み合わせられ、幼少期の教育的介入がシナプス形成と結びつくという神話を助長した

分析手法

文献レビュー

編集後記

質の高い幼児教育が広まることは大切ですが、その大切さを強調するあまり3才を過ぎてしまったらもう無理だと思い込んでしまうのは勿体無いですよね。特に今のうちしか鍛えられないですよという脅し文句は、子どもを想う保護者の気持ちを刺激する幼児向けの商品を売る際の常套句ですから、過度に煽られないよう気をつけたいです。

ニセ科学シリーズで今後書こうとしているシリーズです。

人間は脳の10%しか使ってない?
・人間は右脳派と左脳派に別れる?
・多言語で育つと赤ちゃんの国語能力育成によくない?
・男性脳と女性脳は違う?

参考文献

https://www.oecd.org/education/ceri/neuromyth4.htm

文責

識名由佳


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