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教育の効果はどう測る?① セオリーオブチェンジ

次から次へと出てくる新しい教育手法や取り組み。ついつい目新しいものに飛びつきたくなりますが、そもそも教育の効果はどのように測るのでしょうか?例えば近年小学校からプログラミング教育が始まりましたが、どうその効果を測るのでしょうか?「生徒の目がキラキラしていた」や「欧米では当たり前らしい」といった曖昧な評判を元に教育プログラムの導入や継続を検討するのは合理的とは言えないでしょう。

では、もしあなたがある教育プログラムや教育政策の採用責任者だった場合、どのように採用有無を判断しその後の効果を評価したら良いのでしょうか?

実は、国連など公的資金が投入されるプログラムでは、実施の前に「どのように評価するか」の評価手法を作成&公表し、事前に決められたスケジュールで評価&公表が行われるのが一般的です。スゴ論では、教育分野に限らず、政策評価によく使われるフレームワークを事例と共にご紹介したいと思います。

セオリーオブチェンジ

教育の効果を測定するのがなぜ難しいのか?その理由の一つは「人によって成功の捉え方が異なるから」です。例えば英語を学ぶ目的は、ある人にとっては試験の点数を上げるため、他の人によっては海外の多様な文化に触れるためかもしれません。ひたすら単語を覚えて点数はあがったものの、英語への苦手意識を持ったままで英語を使うことがなければ、前者の人にとっては成功でも後者の人によっては成功とは呼べないでしょう。

そこで国連や海外の政府や非営利組織が使っているのがセオリーオブチェンジです。なぜそのプログラムを導入するのか、どのような仕組みで変化が起こると期待するのか、予め関係者で合意し適切にモニタリングするためのフレームワークです。ロジックモデルと呼ぶこともあります。

GirlPOWERというアメリカの社会経済的に厳しい地域の女の子向けの教育プログラムのセオリーオブチェンジを例にみてみましょう。



国連や海外の非営利組織は、このセオリーオブチェンジを予算獲得の時点で関係者間で合意しています。そうすると上手くいった場合もそうでない場合も建設的な振り返りができますよね。

例:
計画時よりも費用が足りなかった ← インプットに問題がある
参加者の参加率が低い ← アウトプットに問題がある
参加者の自己肯定感が上がっていない ← アウトカムに問題がある

編集後記

利益を出すために計画をたてて実行し振り返るのはビジネスでは当たり前のことですよね。新しい用語をたくさんご紹介しましたが、要は非営利組織版のPDCAです。なぜこれが日本では出来ていないのでしょうか?

それは納税者つまりスポンサーである私たちが適切な批判を出来ていないからではないでしょうか。

例えば「ゆとり教育」は批判されることが多いですが、何を持って良い悪いを判断しているのでしょうか?導入直後の国際ランキングが一時的に下がったから?なんとなく根性のない若者が増えた気がするから?

本来、税金を使って新しい取り組みを行う際、どんな社会的利益を目指しているのかその狙いはどの程度達成されているのかを国民は厳しい目でモニタリングする必要があります。ワイドショーでの芸能人のコメントや、その政策に関わった政治家のスキャンダル、短期的なテストの結果などで騒いでいる場合ではありませんよね。

このようなフレームワークが広まることで、私たちが 実行前から共通の評価指針を持ち、将来世代のこどもたちのために適切な政策批判ができるようになるといいなと思います。

(個人的に情熱のある分野なのでいつもより編集後記の圧が強めになってしまいました)

文責:識名 由佳 

参考文献
ユネスコ セオリーオブチェンジガイドライン
https://unsdg.un.org/resources/theory-change-undaf-companion-guidance
GirlPower主催のNGOのウェブサイト
https://bbbschgo.org/

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