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デジタルマーケティングにおける論理思考の重要性

私は普段、デジタルマーケターとして働いていますが、マーケティングの専門知識(ハードスキル)だけでなく、論理的思考(ソフトスキル)も非常に重要だと日々感じています。

そこで、改めて論理思考とは何か?デジタルマーケティングにどのように活かすことができるか?考えてみたいと思います。

1.そもそも論理思考とは何か?

まず論理を定義してみたいと思います。

論理とは相手の問いに対する答えにキレイな筋が通っていることではないでしょうか。

「キレイな筋が通っている」状態を具体的に言うと、前提となる観点を相手とそろえて、問いに対して妥当性や必然性がある結論を出せているということだと思います。

上記を適切におこなうスキルが論理思考だと私は考えています。

ここからは前述したA.前提となる観点を相手とそろえる、B.問いに対して妥当性や必然性がある結論を出す、という2点に関してさらに詳細を説明したいと思います。

A.前提となる観点を相手とそろえる=横の論理

相手の問いに答える(結論を出す)前に
前提となる観点を適切にそろえる必要があります。

そもそも想定している観点は相手によって違う為、観点が網羅できていない場合、問いに対してズレた内容になり、相手から「それだけなの?」という疑問が出てしまいます。

観点が網羅できているという事はMECE(漏れやダブりがない)になっているという事と同義で、いわゆる横の論理が適切に組まれている状態を指しています。

ちなみに関係者間でMECEに観点を整理する際、言葉のレベル感がそろっていないことから認識が擦り合わない場合があります。

ビジネス上の会話は複雑で多次元的。結果的に言葉のレベル感がそろわない事象が起る

現実世界が複雑であり、さまざまな物の見方が存在するため、言葉のレベル感がそろわないという事象が起ります。

「MECE」や「漏れなく重複なく」という言葉を聞いた場合、多くの人が二次元平面(下記図を参照)を想像しています。なので、現実世界のそもそも次元のずれている話をMECEで整理していく場合は、まず言葉のレベル感を揃える必要性があるということです。

多くの人が「MECE」を二次元平面的に想像している。だから言葉のレベルを揃えないといけない

言葉のレベル感をあわせ、同じ次元で議論を行うために、以下2つを適宜行う必要があります。

(1)誰の言葉かを考える
→ 視点をそろえる

(2)どんな場面での言葉かを考える
→ 切り口をそろえる

また4Pや3Cのようなフレームワークは「全体」を考えるための便利な既製ツールですが、状況にあったものを使用することが大切。

『ロジカル・プレゼンテーション』の中では観点整理の際に漏れをなくすtipsとして「6次元で発想すること」が紹介されています。

目に見える三次元の世界のほかに、見えない世界の三次元(時の流れで一次元、情報や電気や取引や、そのほか目に見えない物の流れで一次元、最後は人間の気持ちや習慣で一次元)まで切り口を出し、およそ世の中の「全体像」を説明するという内容です。

六次元で発想すること

この六次元発想は私自身がデジタルマーケティング領域で頻繁に活用しており有用性が高いと感じています。

B.問いに対して、妥当性や必然性がある結論=縦の論理

「問いに対して、妥当性や必然性がある結論」とは自分が出した結論に相手も納得できる論拠があるときです。

結論を下支えする適切な論拠があれば、誰から見ても因果関係が理解できる為、相手から「本当にそうなの?」という疑問が出ない縦の論理が組まれた状態になっています。

ちなみに相手から「本当にそうなの?」とツッコミを受けてしまう原因は次の3つ。

(1)経験や思いこみで、口には出さない勝手な前提条件を頭のなかに置いている
論理的に話を進める場合、まずは自分が話している話題の隠れた前提条件を洗い出します。そして聞き手への共有を徹底しなければなりません。

話し手の暗黙の前提が聞き手に共有されているか?事前に確認する

Webマーケティングの仕事でも前提条件が聞き手に共有されておらず、話がもつれるケースをしばしば見かけます。

話し手の暗黙の前提が聞き手に共有されているか?チェックしてから本題に入ると手戻りがない進行になるかと思います。

(2)質のちがうものを十把一絡げに議論している
縦の論理がつながらない2つめのパターンは「質のちがうものを十把一絡げに議論している」ケースです。言い方を変えると異質なものの同質化です。

単純にいえば、「違う話を混ぜて、いっしょに議論していないか?」ということ

例えば、就活中の学生が志望動機で「実力主義が徹底されている外資系企業で働きたい」と面接官に言った場合を考えてみます。

面接官からすると外資系という言葉で企業を一括りにしているが、外資と名のつく会社すべてで実力主語が徹底されているわけではない為、「本当にそうなの?」と感じてしまいます。

論理的に話すためには、自分の話している内容が、「違う話を混ぜて同じと主張していないか」を疑う必要があります。

特に自分の詳しくない領域で話をする場合、この危険性が高まる点は留意しなければなりません。

(3)たまたまであるものを、必ずそうだと言っている
縦の論理がつながらない最後のパターンは、「たまたまであるものを必ずそうだと言う」ケースです。簡潔に言うと、これは偶然の必然化です。

話し手は「AならばBだ」と言っているが、AとBの因果関係が大きく飛躍しており、単なる偶然ではないのかと思わせるような場合を指します。

状況を想像し、時間の流れに沿ってその経験がどうなるかを、極力否定的に考えてみる

自分の話している因果関係が、偶然か必然かを考えるには、自分に置いた前提から結論に至るまでに、それを妨げるどのような要因があるかを考えるのがベターです。

これら3つの原因に対処すれば、「本当にそうなの?」は封じ込められる。

例えば重要なMTG前に上記3点をセルフチェックするだけでも論理的なバクを洗い出すことができます。

縦の論理と横の論理

ここまで説明したA・Bは『ロジカル・プレゼンテーション』の中では縦の論理と横の論理として紹介されています。

出典 ロジカル・プレゼンテーション 高田貴久

この「縦と横がちゃんとつながっている」状態が論理思考の基本設計と考えます。

次項では基本設計全体を組み上げる際の要諦(肝心かなめの点)を説明していきたいと思います。

論理思考の4つの「要諦」

4つの要諦とは?
「前提となる観点を相手とそろえて、問いに対して妥当性や必然性がある結論を出せている」状態を作る為にはポイントが4つあります。

①前提 [問われていることに答えている]
②結論 [結論がある]
③広さ [(支える要素が)ほどよく広がっている]
④深さ [(支える要素が)しっかり繋がっている]

4つの要諦が抑えられると強固なピラミッド構造(下記図)になります。

4つの要諦が抑えられた強固なプラミッド構造

上記を踏まえつつ、「問い」を整理し、答えるべき「問い」に対する「答え」を強固にしていくことが大切。

「問い」に対する「答え」を強固にしていくとは前述した縦の論理と横の論理の齟齬がないか?自分自身でチェックし説明内容を最適化していくことを指しています。

2.関連する基本用語を理解する

仮説とは何か?

仮説の定義
仮説とは「ある論点に対する仮の答え」あるいは「分かっていないことに関する仮の答え」です。

これは一応答えてはいるが、「たぶんこうだ」という主観的な答え、言い換えれば単なる「ヤマカン」であり、それが正しいかどうかについては調べてみないと分かりません。

仮説と意見
仮説と意見の違いは下記。

仮説思考と積上思考
仮説思考は「結論から逆算して考える」思考であるのに対し、事実や情報を時間をかけ綿密に「積み上げ、最後に結論を出す」思考を
積上思考と言います。

どちらが良い、悪いということはなく、状況や立場、役割により使い分けることが重要です。

なぜ仮説が必要なのか?
仮説がない状態ですべてが答えになりうるかどうかを調べていると効率が非常に悪い。これが仮説検証型思考が必要とされる最大の理由です。

一言でいえば、「検討の効率を高めるため」「無駄な作業をしないため」です。

仮説の構築方法

仮説を出すための情報と検証するための情報
下記図をベースに説明していきます。

④の「まったく何も分からない状態」から③の「仮説」を出すところまでが、Ⅰの「仮説出し」のための作業です。

そして、③で出た仮説、すなわちヤマカンが正しいか否かを証明するのが、Ⅱの「仮説検証」と言われる作業です。

このようにⅠとⅡを分けて図示すると、いかにも異なる作業のように見えるかもしれませんが、実際には Ⅰと Ⅱの作業を切り分けるのは非常に難しい。

自分がどちらの目的で作業をしているのかきちんと意識しながら取り組むことが大切です。

仮説構築の3つのステップ
仮説構築のために具体的に行う作業は、次の3つのステップに別れています。

1. 論点をしっかり頭に入れる
最初のステップ1は、「論点をしっかり頭に入れる」ことです。

論点のないところに仮説はありません。相手の疑問は何か、答えるべきポイントは何かをしっかり頭に置いて、その答えやヒントを探すという気持ちで臨むことが非常に大事です。

「何が論点か」を考えながら情報を眺めれば、答えになりそうなものは意外とすぐに発見できます。

2.  つねに「答えは何か」を意識する
次のステップ2は、「答えは何か」を考えるということです。

この場合、「何か」が重要で、つまりWHATやHOWというオープンクエスチョンで考えるということがポイント。

3.  とにかく多くの情報を眺める
最後のステップ3の「とにかく多くの情報を眺める」ですが、ここで眺める情報とは、いわゆる「ストック情報」と呼ばれるもので、特になんらかの目的を持って集めたわけではなく、広く浅い情報のことです。

たとえば、新聞、雑誌、書籍、マーケットリサーチ情報、官公庁の統計、インターネット上にある情報、社内に蓄積されている営業の日報、技術の分析データなど、いろいろな情報ソースが存在します。

仮説を出す場合は、これらの情報源に可能なかぎり広くあたっておくことがベストです。

仮説を支える構造を強固にする
仮説を構築する上で重要となるものはその仮説を支える検証点(根拠、小仮説)です。

その検証点の精度が高く、その構造が強固であれば仮説の安全性(信頼性)は保たれることになります。

仮説の構築方法としては、トップダウンとボトムアップの2種類があります。上記図の両サイドの青線を参照ください。

仮説検証力とは?

論理思考の落とし穴と仮説検証力の必要性
自分の主張が「論理的に正しい」からといって、「相手が納得する」とは限りません。

相手が納得しない理屈を必死でこねることを「論理のための論理」、あるいは「屁理屈」と言います。 

ビジネスの世界で大事なのは、相手に腹の底から理解してもらうこと、そして何か結果につながる行動を起こしてもらうことです。

「論理思考」そのものは、手段であって目的ではありません。「論理思考」はあくまで基本的な能力で、それだけですべてが解決できる訳でもないです。

では、相手の疑問に答えて納得してもらうにはどのような作業が必要でしょうか。作業は、2つのプロセスから成り立っています。

1.まず、相手の疑問を知る
2.次に、その疑問に対して答える

1の「相手の疑問を知る」ために探りを入れるプロセスを「論点を出す」といいます。

2の「その疑問に対する客観的な答えを準備し、相手の疑問に答える」というプロセスを「仮説を検証する」といいます。

「仮説検証」とは、「まずは相手の疑問すなわち論点を洗い出し、仮の答えを推測したうえで、それに対して答えるための客観的な証拠を準備すること」です。

仮説検証の5つのステップ
実際に仮説検証を行う場合、5つのステップで検討が必要です。

1の、相手の疑問を知るために探りを入れるという部分で2つのステップ。

2の、その疑問に対する客観的な答えを準備するという部分で3つのステップが必要となります。

1.目的の理解
お互いのコミュニケーションの目的をはっきりさせたうえで、相手が最終的に何を求めているのかを知ることがすべてのスタートポイント。

相手が何を目的として、どういうスタンスでこちらの話を聞いているのかを理解しなければ、相手が聞きたくもない話題をダラダラと話してしまうことにもなりかねない。

2.論点の把握
会話の目的や、相手の望みが分かったとしても、話をするうえでのポイントや押さえどころをきちんと把握しておかなければ、肝心の知りたいポイントが抜けている、という状況にもなりかねない。

3.仮説の構築
話のポイントを理解したとしても、こちらが「答えのヤマカン」を持たなければ、手当たりしだいに答えを探さなければならず、膨大な手間がかかる。

とにかく、あてずっぽうでもいいから答えをぶつけてみて、相手の反応がよければそこを深掘する。

4.検証の実施
3で出した答えは「ヤマカン」にすぎないので、それが正しいかどうかを証明する客観的な証拠をそろえる必要がある。「答えは、たぶんこうだと思います」と勝手な主張を重ねたところで、動かぬ証拠がなければ水かけ論になってしまう。

5.示唆の抽出
その動かぬ証拠をもとに相手の疑問に答えるという作業。

答えると言っても、100%完璧に相手の疑問に答えるのは現実的には難しい。完璧に答えられなくても、相手の役に立つことを何か話す必要がある。

検証実施のポイントとは?

仮説の証明
相手の疑問点すなわち論点に対して、自分の出した仮説が正しいかどうかを、客観的な事実や論理で裏づけする作業を検証と言います。

検証を行うためには、「正しい論理」と「動かぬ証拠」の両方が必要です。どちらか片方だけあればよいというものではありません。なぜなら両者は数学の式と数字のような関係にあり、どちらが欠けても正しい答えが出せないからです。

1.「正しい論理」=論理として正しい=数学で言えば、式が正しい
2.「動かぬ証拠」=事実として正しい=数学で言えば、なかに入れる数字が正しい


まず、 1の「正しい論理」というのは、本onte上の前項で説明した縦横の論理のことです。「本当にそうなの?」を封じ込める縦の論理と、「それだけなの?」を封じ込める横の論理。

この2つがあれば正しい論理を作ることができます。次に2の「動かぬ証拠」とは、通常「ファクト」と呼ばれる客観的なデータのことです。

いくら論理が正しかったとしても、白を黒と主張していたのでは説得力はありません。白は本当に白、黒は本当に黒であるということを事実で示したのが「ファクト」です。

このように、検証とは、仮説が正しいかどうかを論理とファクトで証明することにほかなりません。まずはこの定義をしっかり理解しておきます。

「論点なき仮説」「仮説なき検証」は意味がない
膨大な作業にのみ気をとられてしまい、そもそも自分が何の目的で、どんな論点に答えるために、いかなる仮説を持っていたのかを忘れてしまって、情報収集に東奔西走してしまうというパターン。

いろいろな情報を必死で集めてくるのだが、いざ仮説を検証しようとした途端、必要な情報が漏れていたり、不要な情報が多すぎたりしてよく分からないことに気づきます。

この落とし穴に落ちない為に、目的と論点、仮説をきっちり理解し、「検証のための必要最低限の情報収集」を効率よく行う必要があります。

検証には明確な終わりがない
検証は相手が納得するまで、リソースの許すかぎり調べつづけるしかありません。検証とは、それほど大変な作業で、終わりがないもの。

終わりを決めるのは、相手の「なるほど、そうだね」という言葉か、または自分の限られたリソース、すなわち体力、気力、能力と時間以外のなにものでもありません。

80対20の法則(8割の当たり前と、2割の気づき)
『ロジカルプレゼンテーション』の筆者曰く、検証は「八割の当たり前のほかに、二割の気づきがあれば、その検証は成功だ」との事。

まず前半部分の「8割の当たり前を証明する」ですが、当たり前のことを証明するだけでも話を前に進めることができます。地味ですが、企業の運営上、これはかなり重要性の高い仕事。

次に後半部分ですが、「2割の気づきを生み出す」とはすなわち、作業を通じて次の新たな仮説を出すということです。仮説を出す作業と、出た仮説を検証する作業というのは、明白に切り離せるものではありません。

自分の知っている情報や過去の経験だけで仮説を出していても新しい仮説は生まれないのだが、一見当たり前と思える仮説を地道に検証する過程で、今まで見たこともない情報を目にしたり、今まで考えたことのない論点を考えたりするようになると、新しい仮説が生み出されるものです。

検証とは地道な作業ですが、「八割の当たり前を証明すること」、そしてその作業を通じて「二割の気づきを生み出すこと」ができれば、十分に価値があります。

論点とは?

論点の定義
「論点」とは、「相手が意思判断を行う際に検討する項目のなかで、まだ確固たる答えを持っていないがために、検討を行えば意思判断の結果にちがいを生じる可能性のある項目」です。

要約すると「相手の意思判断に影響をおよぼす判断項目」のことです。

上記の定義説明のみではイメージしにくい為、具体例を追記します。

あなたが不動産屋で賃貸物件を扱う営業担当であった場合で考えてみます。

顧客Aさんから「通勤時間を短くするために物件を見つけたい」と要望されました。これは目的にあたります。

上記の場合、顧客Aさんの意思判断ポイントは「物件Xへの転居は通勤時間の短縮になるか?」です。

また、意思判断に影響を及ぼす判断項目が「駅までの所要時間が短いか?」等で左記が論点です。

営業担当のあなたは顧客Aさんと論点を外さず会話することで効率的に目的を達成できます。

次項から論点を外すパターンとその対策についてまとめていきたいと思います。

論点を外してしまう場合には4つのパターンしかない
論点を外してしまうパターンは下記。

(1)議論のスタンスがちがう場合
(2)相手の要望が理解できていない場合
(3)具体的な判断項目が出せない場合    
(4)相手がすでに答えを持っているところに意見してしまう場合

論点を外さないための対策
(1)~(4)対策は下記。

(1)(2)………目的をきちんと理解する
(3)………………横の論理構築力を磨く
(4)………………相手の知識・経験レベルを把握する

とにかく納得がいくまで相手の話をよく聞くだけでなく、「自分が本当に理解できているか」をその相手に確認することが重要。

なぜ論点が噛み合わないのか?
社内外のビジネスパーソンと議論をしたり提案書を作ったりしていて、「論点がうまくかみあわない」と感じたときの対処方法を本項目で整理しておきます。

会議をしていて、なかなかまとまらないとき。相手の言っていることと自分の主張が折り合わないとき。顧客と話をしていて、意見がうまくあわないとき……。ビジネスの現場で最も困るのが、この「論点がかみあわない」状況です。

ここで大事なのは、前述した論点を外してしまう場合の四つのパターンのうち、今「どこが原因でうまくいかないのか」をしっかりと考え、それに応じた対策を打つことです。詳しくは下記図をご覧ください。

たとえば相手の要求が理解できていないから議論がかみあっていない場合に、いくらフレームワークに関して頭をひねっても事態は改善しません。

会議の参加者の視点がバラバラで議論がかみあっていない場合に、いくら目的を繰り返し議論しても議論は進展しません。

会議や提案の場で「気の利いた発言」ができるビジネスパーソンは、この「どこが原因で議論が停滞しているのか」を、瞬時にして的確にとらえています。

たとえば、フレームワーク的な視点が欠けている会議では議論の視点について助け船を出す。視点のちがう意見を出す人がいても、その人の発言の見方を変えて議論のフレームワークのなかに納める。ほかの参加者誰もが知っている当たり前の内容について話が出た場合には、うまく話を先に進める……。

自由自在に、ずれている論点をかみあわせる能力を備えた人が世の中にはいる。私自身も記載しているような能力を早く身につけたいと思っています。

MECEとは何か?

MECEとはモレなくダブりないこと
「広く」考えるには、目の前の物事をきれいに「分ける」ことが重要です。

キレイな広がりを持たせるためには「見落としは無いか?(モレ)」「重複する点はないか?(ダブリ)」をチェックする必要があります。

この「モレなく、ダブりなく」を表す概念をMECE※という。
※Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive(直訳:相互に排他的であり、集団的に網羅的)。


MECEには様々な切り口のタイプがある
私が理解している限りでは切り口には7つ。自分の中で切り口ごとのサンプル(代表例)を多く持っておくと、効率的に広く考えることができます。

演繹法と帰納法

論理思考の深さを作る演繹法と帰納法
論理的思考の世界では、縦の「つながり」をつくる(主張と根拠をつなぐ)考え方として、「演繹法」と「帰納法」があります。

必要条件と十分条件

それぞれの定義
必要条件はある結果が起こるために必ず満たされなければならない条件です。目的を達成するために欠かせない条件のことを指します。

一方、十分条件はある結果を確実に引き起こす条件です。この条件が満たされれば目的を達成できるという条件のことです。

3.デジタルマーケティング領域でよく活用するフレームワーク・注意点

ここからはデジタルマーケティング領域の仕事で使えるフレームワーク・注意点を紹介したいと思います。

社内で活躍しているデジタルマーケターの先輩方は論理思考をベースにしつつ、頻繁に使う思考法をフレームワークとしてまとめている事に気づきました。

利用頻度が比較的高いものから記載していきたいと思います。

進行速度、実現可能性、期待効果の順に優先順位を付ける

改善提案をするときには、優先順位を付ける。

その際、対象となる改善の進行が速い施策、コストや技術的に実現可能である施策、改善結果の期待効果が大きい施策を選ぶ。

進行が速い施策は、改善サイクルの進行速度も 上がります。実現の可能性が高い施策は、改善活動の再実施や再施行が容易になります。期待値が大きい施策は成果も上がります。

ケースバイケースだが、その際の優先順位は「進行速度>実現可能性>期待効果」で考える。

一般に、実現可能性や期待効果が小さくても、進行が速ければ PDCAサイクルを高速化でき、改善効果は大きくなる。

What/Where/Whyを使った現状整理

広告施策の目標対比での獲得状況を整理する際によく活用します。

What(今どうなのか?)

where(どこに問題があるのか?)

why(その問題の真因は何か?)

また広告施策に限りませんが5W1Hは全体整理を行う上で汎用性高い切り口であるため重要だと思います。

メリット→リターン、デメリット→リスク観点での整理

デジタルマーケティング領域は、広告プロダクトの流行り廃りが早く既存サービスもアップデートが頻繁に起ります。上記状況の中で、新たな施策を検討する際にこちらの観点整理が役に立ちます。

特に外部パートナーからの提案をもらう際は
Mustで活用しポイントを洗い出しています。

施策インパクトや毀損影響は実数/率/全体に対しての割合で捉える

施策実施時だけでなく、計測不具合や広告入稿不備で生じた機会損失時も上記影響度を正しく捉える。

施策の場合は上記に加えて工数を含めて施策の優先度を決めたりします。

必ずファクトを押さえる。ファクトがなければ強い論拠を押さえる

物事を考える起点となるファクトは何よりも先に捉える必要があると思います。「定量情報」、「一次情報」、「第三者情報」を組み合わせつつ、強いファクトを持って、適切な地点から思考をスタートできれば相手の問いに対してズレの無い内容が導き出せると思います。

因果関係と相関関係を理解する

相関関係とは、AとBの事柄になんらかの関連性があるもの。

数学の世界では相関関係とは「一方が増加する時、他方が増加もしくは現象する傾向が認められるという二つの量の関係」と定義されている。

ex.相関関係の例
「時間の経過」と「空に浮かぶ太陽の位置」

一方で因果関係とは「原因とそれによって生ずる結果との関係」。つまり、Aを原因としてBが変動することを指す。

「相関関係」の中でも、原因と結果を表しているものだけが「因果関係」と言える。

因果関係のあるものには相関関係がありますが、相関関係は必ずしも因果関係とはならない。

ビジネスシーンでは相関と因果について見誤り、判断を間違う事があるので注意が必要。

問題特定は論拠を必ずおさえる

主な論拠になるポイントは4つ。

①増加または減少が大きい
②改善可能性が高い(伸びる余地がある)
③全体に占める割合が大きい
④波及効果が大きい

事業会社で働いていると問題がいくつも出てきます。関係者間で何が問題か?認識を合わすためにも本tipsは重要。

4.【番外編】詭弁とは何か?

論理的とはどういうことか?理解するには詭弁とは何か?(何が論理的ではないか?)を理解するのも良い整理方法なのかなと思いました。
番外編として本項で詭弁についてまとめておきます。

詭弁とは何か?

意図的に論理を歪めて議論を有利に進めるための議論手法のことを指します。

詭弁は、表面的には論理的に見えるものの、実際には論理的に誤ったり、誤解を招いたりする方法を用いて、相手を説得しようとするもの。

詭弁は議論の場では非正当な手段とされ、真実を明らかにするのではなく、誤った結論を導くために使われます。

詭弁のパターン10選と対策

1. ストローマン論法(藁人形論法)
・定義
ストローマン論法(藁人形論法)は、相手の主張を意図的に歪めたり、過度に簡略化したりして、反論しやすい形にすることで、相手の本来の立場を攻撃する手法。

この論法では、実際の論点とは異なる「藁人形」を作り上げ、その藁人形を攻撃することで相手の主張を否定しようとする。

・例

話し手
「彼は環境保護を推進している。つまり、すべての工場を閉鎖すべきだと言っているんだ」

聞き手
「彼は工場の効率化と環境対策の両立を提案しているのであって、すべての工場を閉鎖するとは言っていない」

どこが詭弁か?
彼の主張を歪めて極端に解釈している。

・対策
話し手の意図や主張を正確に理解し、歪めたり簡略化したりしないようにする。

2. 人身攻撃
・定義
相手の主張ではなく、人格や特性を攻撃する方法。相手の主張内容ではなく、相手の人間性のみにフォーカスを当て議論を遮る。

・例

話し手
「彼の意見は無視すべきだ。彼は過去に嘘をついたことがある」

聞き手
「彼の意見が正しいかどうかは、過去の行動とは無関係に論理的に評価すべきだ」

どこが詭弁か?
主張の内容ではなく、個人の過去の行動を攻撃している。

・対策
人物ではなく、主張そのものの論理性を評価する。

3. 誤った二分法(偽二分法)
・定義
誤った二分法(偽二分法)は、ある状況や問題に対して、実際には複数の選択肢や可能性があるにもかかわらず、二つの極端な選択肢しかないと誤って提示する論理的誤謬の一つ。

この手法は、議論を単純化し、相手を自分の望む結論に導くために使われることがある。

・例

話し手
「環境保護を本気で考えるなら、全ての工場を閉鎖するしかない」

どこが詭弁か
工場の閉鎖以外にも、効率的な技術の導入や
環境基準の強化など多くの方法がある。

・対策
①他の選択肢や視点がないか検討する。
②二分法を指摘する。相手が誤った二分法を用いていることを明確に言及する。

4. すり替え
・定義
話題をそらして、本題から注意を逸らす方法。

・例

本題
「あなたの会社の工場が環境に有害な廃棄物を出しているとの報告がありますが、どう対応していますか?」

すり替え
「私たちの会社は多くの慈善活動を行っており、地元の学校にも多額の寄付をしています」

どこが詭弁か
環境問題についての具体的な質問に対して、慈善活動という別の話題に話を逸らしている。

・対策
本題から逸れないように、議論の焦点を保つ。

5. 循環論法(循環論証)
・定義
循環論証(循環論法、英: Circular reasoning)は、論理的誤謬の一種。
結論を証明するために前提が結論と同じ内容を含む議論の方法。

この論証法では、主張が最初から真であることを前提とし、それを証明しようとするため、実際には何も証明していないことになる。

・例

話し手
「彼が優れたリーダーであるのは、彼がうまく経営しているからだ」

聞き手
「彼がうまく経営しているとどうして分かるのですか?」

話し手
「彼は優れたリーダーだからだ」

どこが詭弁か?
彼の経営能力を証明するために、彼のリーダーシップを前提としている。
これではリーダーシップも経営能力も証明していない。

・対策
結論と前提が循環していないか確認する。

6. 滑り坂論法
・定義
一つの行為が連鎖的に悪い結果を招くと主張し、極端な結論に至る方法。

話し手
「タバコを一本吸うと、すぐに重度の依存症になる」

聞き手
「一本のタバコが必ず重度の依存症に直結するわけではありません。」

どこが詭弁か
一つの行為が必ず連鎖的な結果を招くと極端に結論付けている。

・対策
実際に連鎖的な結果を招くか、根拠を求める。

7. 権威に訴える
定義
権威者や有名人の意見を根拠に主張を支持する方法。

・例

話し手
「このダイエット法は有名なインフルエンサーが推奨しているから効果がある」

聞き手
「インフルエンサーの意見だけでなく、科学的な根拠も確認しましょう」

どこが詭弁か
権威者の意見だけを根拠にしている。

・対策
権威者の意見だけでなく、事実やデータに基づく根拠を求める。

8. 感情に訴える
・定義
論理的な根拠ではなく、感情に訴えて説得しようとする方法。

話し手
「この新しい法律はかわいそうな子どもたちのために必要です」

聞き手
「法律の内容を感情ではなく、実際の効果や根拠で評価しましょう」

どこが詭弁か
感情に訴えて論理的な評価を避けている。

・対策
感情ではなく、論理的な根拠に基づいて評価する。

9. 相関関係と因果関係の混同
・定義
二つの事象が関連しているからといって、
一方が他方の原因であるとする方法。

話し手
「アイスクリームの売り上げが増えると犯罪率も上がる。だからアイスクリームが犯罪を引き起こす」

聞き手
「相関関係があるだけで、因果関係があるとは限りません」

どこが詭弁か
相関関係を因果関係と混同している。

・対策
相関関係がある場合、因果関係が実際に存在するか確認する。

10. 偽りの因果関係
・定義
ある事象が別の事象の後に起きたからといって、前者が後者の原因であるとする方法。

話し手
「彼が社長に就任してから業績が悪化した。だから彼が原因だ」

聞き手
「業績悪化の原因が他にもないか確認しましょう」

どこが詭弁か
時系列の関係だけで因果関係を断定している。

・対策
時系列の関係だけでなく、因果関係の根拠を確認する。

5.参考文献

今回の記事は、高田貴久さんの『ロジカル・プレゼンテーション』や高田貴久さんと岩澤智之さん共著の『問題解決』、および社内研修で学んだ内容をベースにしてデジタルマーケターに必要な論理思考やフレームワークについてまとめています。

上記URLにアフィリエイトリンクなどは挿入していません。

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