2024ファジアーノ岡山にフォーカス29『 遠くに見える光~希望の正体~ 』J2 第16節(H)vsヴァンフォーレ甲府
1、小さな希望が結果に繋がる~リスタート~
長崎戦で、20本以上の被シュートでも無失点に抑えることができたことと、決定機も作ることができたこと。これは、間違いなく岡山に手応えと心の余裕を作ることができたのではないでしょうか?
開幕の頃のようなシュートすら打たせないといったどこか息苦しさをも覚える驚異的な堅守で、勝ち点を積み重ねて1位であった時期もありましたが、それもかなり前であったように感じます。残念ながら現在は、欠場選手が多く、苦しい面がどうしても目立ってしまう状況です。それでも、甲府戦のキックオフ前のXでのポストで書いた通り、11選手+7選手で観れば、十分戦える選手たちが揃っています。
とはいえ連戦は確かに厳しくなると思いますが、持ち味を発揮できれば、十分戦える。そういった根拠のない自信は、今も私の心の中にあります。ただ、ここ10試合は、岡山はそれが出来ていなかった。特に99番 ルカオ 選手に関しては、23シーズンの活躍を考えれば、何かしら手を打つ必要性を感じるほどに、持ち味を出すことができていなかった。
私の中でも、開幕前までは1トップでもある程度できると信じていましたが、10節以上戦ってきて、これだけ99番 ルカオ 選手が、23シーズンと別人のようなパフォーマンスが続いていたら、チームの戦い方に別問題があったのではないか。そういった考えが、私の中で膨らんでいった。今日の試合を観た限り、本人の意識とチームとしての意識が、マイナスに働いていたのではないかという考えが浮かんだ。
1試合だけで、3-4-3でも99番 ルカオ 選手の良さを出せると結論付けるには早いかもしれませんが、それだけ久々にルカブルを観ることができた。その理由は私の推論については、次章で語りたいと思います。
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2、ルカオはルカオ~因数分解できない~
これまでと違い岡山は、99番 ルカオ 選手は、9番 グレイソン 選手と同じ役割ではなかったことで、別人のように輝いた試合になりました。これまでの99番 ルカオ 選手へのパスは、空中戦やポストプレーを求めるパスが多かったように感じていましたが、この試合では、スタートポジションこそ、前線で守備タスクで、中央で牽制する役割でしたが、この試合では、サイドに流れて受けようと意識が、出し手と受け手で共有できた試合でした。
9番 グレイソン 選手を軸とした戦い方で、チームが成功していて、新加入の選手が活躍していたこともあり、なかなか99番 ルカオ 選手をどう活かしていくのかというテーマで、中心で練習できていなかったのではないかと感じました。
15節消化した段階で、99番 ルカオ 選手が、これだけ活躍した試合は、ルヴァンカップのみであったので、戦術選択への不満が膨らんでいましたが、離脱選手が多く出てしまい、逆に今出ている選手を中心とした準備ができたことで、今出場している選手の良さをだすことができた試合と言えるのではないでしょうか。
シンプルに99番 ルカオ 選手が、9番 グレイソン 選手の同じを役割を担う交代選手としての役割を担うのではなく、99番 ルカオ 選手しかできないプレーを、99番 ルカオ 選手自身がしたいプレーを、チームとして共有できた上で、自身もそこにトライできた今季初めてのリーグ戦であったように感じました。
恐らく監督を中心としたチームの指導陣は、開幕の時から課題として共有できている把握できているはずですので、あくまで選手に答えを出させるという主眼に置いた指導方針であったのではないかと思います。そう考えると、9番 グレイソン 選手が中心の練習から99番 ルカオ 選手を中心とした段階で、劇的に改善したのではないかと思います。
チームとして結果を求める中でも、各選手の自立や挑戦する気持ちを大事にする木山式育成術の我慢強さを感じたところです。
木山ファジでは、若手が伸びる。各選手の個性が光る。これは、偶然ではなく、必然であるということを改めて示すことができた試合でした。
何事もそうですが、すぐに答えを教えてしまえば、その段階である意味、自身で考える力が伸び悩みます。木山 隆之 監督のようなチーム作りであれば、考える力が伸びますから、そういった力がある選手が、持っている力を引き出すこともできて、同時に、そこにやり易さを感じる選手が、木山 隆之 監督の下に集い、1つになる。木山式の強いチームは、こうしてできるのですね。
ルカオ選手はグレイソン選手に成れませんから、ルカオ選手が、チームメートが、その当然の答えに行き着けば、ルカオ選手は、これぐらいやれる選手です。
今後は、より99番 ルカオ 選手へのマークはきつくなりますから、そこに対して、チームとして選ばれた選手が、自分達のサッカーができれば、苦しくても戦えます。
連戦は、厳しいですが、今季の岡山は、ユース選手を含めて、誰が出ても一定のパフォーマンスをできる。自分達の強さを示すそういった期待を持てる試合になったと思います。
「ルカオはルカオ。因数分解できないんです。」そういった心の声が木山監督から聞こえてきそうですね。
3、弁慶の泣き所~ヴァンフォーレ甲府~
甲府は、本来であれば、自動昇格を狙える可能性を秘めたチームですが、16節終了地点で、9位と伸び悩んでいます(とは言ってもこの試合である16節で勝っていれば岡山と入れ替わっていました)。
40歳とは思えないぐらいプレーのクオリティの高い99番 ピーター・ウタカ 選手や驚異の推進力の51番 アダイウトン 選手など、強力なアタッカーが多数います。普通に戦えれば、その得点力の前に複数失点で敗れても不思議ではない相手です。
その相手に、どうして勝つことができたのか?シンプルに、固定できていないGKの差が出た試合になったからだと思います。出場試合数を観てみると、1番 河田 晃兵 選手が4試合。本日スタメンの32番 コ・ボンジョ 選手が2試合(この試合を含めて3試合)。33番 山内 康太 選手が、4試合。長期離脱となってしまう怪我で、登録抹消されていますが、88番 渋谷 飛翔 選手が、6試合。
といった感じに、甲府はチームの守備の中心となるGK(守護神)を固定できていないのですよね。岡山が、守備が安定しているのもやはり、49番 スベンド・ブローダーセン 選手がいるからというのも大きいですし、そこを固定できず、試行錯誤が続いているのは、ハイレベルな競争というよりは、アクシデント的な部分が強く、固定できていないと言えるでしょう。それは、やはりこの試合で、岡山に先制点を許した19番 岩渕 弘人 選手へのプレゼントパスからも見て取れました。
攻撃に目を向けてみると、99番 ピーター・ウタカ 選手が、40歳とは思えないプレーで、岡山のゴールに迫っていましたが、恐らく若い時であれば、枠に確実に仕留めていたのではないかと思いますが、それでも、紙一重といシュートでした。
それだけ甲府に攻撃の形どころか決定機が何度もありました。サッカーの試合は、やはり選手の平均年齢とかチーム状況とか関係なく、ピッチで戦う選ばれし11人+7人を指揮する指導陣。そして、試合を司る審判員が試合を裁き、試合当日のピッチコンディションの中で、両チームが得点数を競うスポーツです。
ここに関してはフェアなスポーツであると改めて感じました。チーム編成を考えた時に、両チームが、ベストメンバーを揃える試合は、年に何試合あるのか。チーム状態が良い時に、チーム状態に悪い時に当たれるのか。良いプレーが勝負所でできるか。そういったある意味「運」的要素も勝敗を左右します。「運」も実力の内とはよく(能く)言ったものです。
まさに、勝利の女神に愛されたチームが、最終的な栄冠を手にできる。そういったスポーツであることを感じました。岡山も苦しい状況ではありますが、甲府も苦しい部分もある。そういった部分を感じながらの岡山の勝利であり、甲府の力というのは、16節終了地点で、順位は9位と燻って(くすぶって)いますが、岡山と大きな差は、そこまでないんじゃないかとも感じた。
それは、この混戦が示す通りですし、清水と岡山の差が14開いてもう絶望的だと思っていたら、いつの間にか10差に戻っていて、長崎もまだ意識できる位置にいる。まだまだ混戦なんだとということを示している。
甲府の敗因の1つとして、GKを固定できていないことを挙げましたが、実際の現場では、公表できないものを含めて、多くの問題を共有して、次の試合に向けて準備している訳ですから、次対戦する時、そして、もしかすると3回目の対戦が合った時に、別のチームに強くなっていることもあるわけですから、決定機の数を考えても、甲府の強さや可能性を感じた試合になりました。
4、絶望の先で芽生えた自信~負けない強さ~
ここ10試合の勝ち点の少なさは厳しいものでしたが、昨年以上に負けない力と勝てる内容で、勝ちに繋げる力が今季の岡山にはある。そういった赤いフィルターのかかった岡山サポーターだからこそ感じた矛盾する自信が芽生えた。
もしかすると、岡山の最後の希望とも言える”大きな“武器が岡山にはまだあると感じた。それは何か?
49番 スベンド・ブローダーセン 選手という守護神と対人守備に優れるDFライン、中盤から守備を支えるボランチ。身体能力で負けない左右のWB。攻守でハードワークできる前線。
そうです。多くのチームが持っていそうで、なかなか持つことができない「堅守」こそ、岡山の武器である。諦めない力。得難い気持ちの強さ、過去のシーズンと近い。気持ちだけという試合も多かった結束の力に、内容的に負け試合を引き分けに、勝てる試合で勝利にと結果もついてきている。
この試合を考えても、49番 スベンド・ブローダーセン 選手と左から5番 柳 育崇 選手、18番 田上 大地 選手、4番 阿部 海大 選手。24番 藤田 息吹 選手。この5人が、守備に専念してた時に、対戦チームからすれば簡単に得点できないぐらい堅い守備のはずだ。そう考えた時に、プレーオフにいければ、J2の頂(J2優勝)に仮に届かなくても頂のリーグ(J1)に、もしかすると届くかもしれない。
そう考えた時に、久々の勝利であったが、希望で満ち溢れた気持ちとなった。99番 ルカオ 選手の本来の良さが見えた試合。「まだまだやれる。」そういった手応えが大きくなった。夏場のFWやDFの補強もあるかもしれない。そう考えると、プレーオフにさえ入れれば、年々レベルの上がるJ2リーグのライバルに対しても、岡山史上最強の堅守で、勝ち抜けるかもしれない。
もしかすると、岡山の今季の守備の進化である「シュートやクロスを打つ選手への守備の一歩目の速さや正確さ」も、新加入の選手や新加入のコーチによって、もたらされた岡山の新たな武器かもしれない。武田信玄の言葉を借りれば、「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり。」である。来期以降にも継承されて欲しい守備文化は、今までの「人」と新しい「人」の交流によって構築されてきた。夏場からの移籍期間を経て、岡山が、離脱者の復帰もありながら、J1を意識して戦える相応しいチームの強さを取り戻せるかもしれない。
リーグ戦期間は、頂の可能性がある限りは、口に出さなくても心の奥では信じて応援し、それが無理になったらプレーオフを進出からの昇格を目指す。長崎でのスコアレスドローから得た小さな希望。それは、遠くに見える灯篭の光だったかもしれない。それが、少し明るく光った(頂に近づいた)気がした。
そして、海を渡った佐野 航大 選手が、活躍していますが、岡山も負けていられないですよね。第2の佐野 航大 選手の誕生を予感されるユースの健闘も光ります。
9番 グレイソン 選手が、今季絶望の長期離脱で、一時帰国しましたが、練習場には、多くのファジアーノ岡山サポーターが、9番 グレイソン 選手に”一時“の別れを伝えたに集まった。
リーグ戦を半分も消化できない内でのエースの離脱。その影響は計り知れないですが、同時に(夏場での移籍の心配も小さくなり)安心した。来季も、きっと9番 グレイソン 選手は、岡山を選んでくれるはずであるという信じたい気持ちも強くなった。
もちろんショックキングなトピックではありましたが、岡山にやり残したことがあるはずだ。そう考えると、次会うときはJ1で、9番 グレイソン 選手をJ1で迎えたい。そういった新たな夢が、サポーターの1人である筆者の中で、膨らんでいった。
色々な想いがあると思いますが、政田での9番 グレイソン 選手の笑顔は、本物であったかもしれないですが、きっと色々な想いが心の奥にあったはずです。私もそういった想いを想像すると、書きながら涙が出てきた。
私は、これまでもレビューを書きながら、涙が出しそうになったこともありますが、素直に、その気持ちを(感じたもの)を言葉にして、発信してきました。
だからこそ最後に言いたい。
「この試合で抱いた希望は、決して強がりでもなく、本物である」と。
希望がまた打ち砕かれる時も来るかもしれない。
でもこのチームなら新たな希望をサポーターに掲示してくれるはずだ。
だから、最後まで1人でも多くのサポーターと共に戦いたい。
サポーターグループの言葉を借りて、今回のレビューを締めたい。
ココロヒトツニ!
文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・photo=Masaaki Sugino
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