2023ファジアーノ岡山にフォーカス20『 可能と不可能の選択の先に~限界(現解)~ 』J2 第10節(A)vs ベガルタ仙台

 4-3-1-2から転換する可能性もあるが、ここ数試合の内容と試合後の監督コメントを聞く限りは、システム変更は簡単ではないという印象だ。

 22シーズンは、90分間通して試合の主導権を握る戦い方であったが、今季は前半の45分は守勢の中で辛抱するか、五分五分の展開に持って行く戦い方しかできていないからこそ、90分間での戦い方への強い拘りを感じる。

 23シーズンは、前半は凌いで、後半に全てをかける。ここが確立できるかが、浮上のポイントとなるというテーマの下、本稿は進めて行く。

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※注意点:表現のために、私が考えた造語を文章の中では一部採用しています。※

 まず、本文に入る前に、本文を引用させて頂く、公式コメントの引用元のHPを紹介させていただく所から入っていきたい。

引用元サイト紹介(選手と監督公式コメント)

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第10節 ベガルタ仙台戦 監督・選手コメント
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202304161730/

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第10節 仙台 vs 岡山(23/04/16)試合後コメント(選手)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/041602/player/

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第10節 仙台 vs 岡山(23/04/16)試合後コメント(監督)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/041602/coach/


1、腰を据えてやっていく~覚悟(確後)~


 まずは、木山 隆之 監督のメッセージを聞いて欲しい。

木山 隆之 監督(岡山)
「スタートでミスを突かれて得点を与えてしまったので、難しい試合になった。
ただ、そこで落ちずに我慢強くやりながら、前半も少しずつ自分たちの活路を見出せそうな感じとなり、後半に入る前にやるべきことを選手たちに伝えて1点取れたことは良かった。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第9節 ロアッソ熊本戦 監督・選手コメント
より一部引用

 今季の監督や選手から良く聞くワードやサポーターの岡山に対する印象として「我慢」というワードが、今季の岡山を語る上でサッカーの重要の比重を占めている。

 選手の入れ替わりもある中で、忘れる事のできないプレーオフでの前半での失点を引きづってそのまま追加点を決められて敗れるという敗戦パターン。

 ここに対する弱さへの解答として、ここまであまり勝ててこそいないが、前半に粘り強く戦い、仮に前半に失点したとしても主に後半で同点に追いつくことができている。勝ち点3こそ掴めていないが、敗戦数の1敗であるのは、首位の町田と岡山だけであり、ここの安定感というのは、22シーズンになかったものである。

 また、思うように勝ち点3に繋げる事ができていなかった違う理由として、チーム編成を観ても、昨年と比べて、怪我の選手が多く、ベストメンバーと言える選手は、正直組むことができていない事も大きい。

 90分間通して、内容が良かった試合も少なく、「我慢」の試合が続いているが、決して悲観だけすべきものではなく、ここは、岡山の確かな成長を感じる点であるという事は、サポーターとしても”誇り“を持って、選手を応援する原動力にしていく、認識していく点として、強く胸に刻むべき点であると声高々に主張していきたい点である。

 そして、後半の手応えを口にする木山 隆之 監督。

木山 隆之 監督(岡山)
「どちらに転んでもおかしくない展開で、我々にもチャンスがあったし、逆に押し込まれた状態でサイドを突かれたこともあったし、勝負のところは紙一重だった。我々にとっては勝ちたい試合だったが、厳しい状況から同点に追いつき、そこから活路を見出そうとしたことはポジティブだった。引き分けがものすごく続いていてネガティブな発想になりがちだが、紙一重のところまでは来ているので、もう一度しっかりトレーニングをし直して、次の試合に挑んでいきたい。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第9節 ロアッソ熊本戦 監督・選手コメント
より一部引用

 本当に、後少しという所まで来た。そして、腹を括った。そういった覚悟と手応えを感じた試合であった。

 90分間通して、アグレッシブに戦うことは無理かもしれないが、後半に形を変えて、選手を変えて、試合の流れと勝利を呼び込む。そういった流れや形、勢いができつつある。そういった「覚悟」と「確後(確固たるものはできた、後はやるだけ)」というような雰囲気がチームに出来つつあると感じた。

 この試合で同点ゴールを決めた22佐野 航大のコメントからも勝利にチームが近づいている確かな手応えが伝わって来る。

22佐野 航大 選手(岡山)
「相手にもチャンスはあったが、自分たちにもチャンスはしっかりあった。前が決めていれば、勝てた試合だった。
今日の前半はボールを握れてはいたが、ランニングの部分や出し手が出せなかったりしたので、ゴール前にはあまりいけなかった。後半は木村選手や櫻川選手が粘ってくれたので、前半よりは比較的前でボールを持つことができた。」

 チームとしての気負い。きつく言うと驕りのような重圧から解き放たれつつあることで、選手の1人1人の意識の変化によるチームパフォーマンスへの安定感。そこは、ミスで失点こそしてしまったが、間違いなく醸成されつつある。後は、決める事ができれば、勝利ができた。そういった内容の手応えを22佐野 航大からは、感じた。

 後半は、19木村 太哉の仕掛ける姿勢と、この試合が2試合目となる7チアゴ・アウベスで、ゴールに迫る推進力を作れていた。後は、前半にある程度「受け」の状態=「プレスを受ける・攻撃を受ける」の状態の中で、前でプレーする時間帯をどう作って行くのか。

 ここに対するチームの問題意識や後半に戦える手応えを共有する中で、勝利が目の前に迫って来た。そういった内容であり、課題と向き合う「覚悟」と「確後」ができた試合となった。

 18櫻川 ソロモンのコメントからも何処か文面以上に前向きに感じる。

18櫻川 ソロモン 選手(岡山)
『「ちょっともったいない失点だったかな」というのが終わってみての感想です。ただし、ゲームをやっていけばミスはありますし、そこはチームとしてネガティブにならず持ちこたえて、結果として追いつけたのは良かったと思います。』

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第10節 仙台 vs 岡山(23/04/16)試合後コメント(選手)
より一部引用

 ネガティブな気持ちに陥らない手応えの先に、勝てる強さがある。筆者は、ここからの逆襲の手応えのような期待を抱いた。


2、勢いを受け止める難しさ~逆襲(逆集)~


 前半は、相手の攻撃や守備をダイレクトに受ける展開になることが大きい。岡山の失点シーンもまさに、そういった形での失点であった。

記者(インタビュアー)
--得点場面について。
7中島 元彦 選手(仙台)
「クリアが前に行って、相手のディフェンスが2人いたのですが、全速力でいけるかなと思ってプレッシャーを掛けたところ、ちょっと相手の判断を困らせるようなプレーができました。あとはミスがゴールにつながったので、献身的に追いかけた結果、ごほうびがいただけたようなシーンです。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第10節 仙台 vs 岡山(23/04/16)試合後コメント(選手)
より一部引用

 今季の岡山は、この失点シーンのように全速力のプレスに晒され続けている。言い換えれば、相手の100%の守備を受けている。

 この状態の中で、パスワークが乱れてショートカウンターで失点という事も起きている。または、それによって与えてしまったCKで失点というパターンもあった。

 しかし、それでも岡山は、1試合しか負けていない。ここは、繰り返しになるが、サポーターとしてもファジアーノ岡山というチームのストロングポイント、強さとして、認識しておくべきポイントであると感じる。

 今季の岡山は、勝てないから弱いのではなく、相手の攻撃や守備を受け止めても、負けない。そういった強さを手にしつつある。または、このサッカーで、勝利に近づけている。ここは、もっと自信を持って、誇りを持って、選手を監督を信じて、ファジアーノ岡山を応援する原動力に変えて欲しい。

18氣田 亮真 選手(仙台)
「ゴールが欲しい展開だったので、ボールを持ったらまずは「ベクトルは常に前に」と意識してゲームに入りました。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第10節 仙台 vs 岡山(23/04/16)試合後コメント(選手)
より一部引用

 これは、裏を返せば、ベクトルを前に持って行くことが、後半の仙台には、必要になっていた。岡山が、同点に追いつき、勢いを作れていた。そう感じるコメントである。

 90分間通して、主導権を握る事から90分間で、ゲームプランやペース配分を考えた戦い方をする。「我慢」した先に作れた展開であり、チームとして、どう勝利に繋げて行くのか。交代カードを含めて、煮詰めていって欲しいと、感じるコメントであった。

 伊藤 彰 監督のコメントを前半、後半、トータルの3フェイズに分けてみていきたい。

記者(インタビュアー)
--プレスがハマった前半について。
伊藤 彰 監督(仙台)
「相手のプレッシャーに対しては前線から連動した守備ができていたと思います。途中でボランチが下がって3枚で入ってきたときに、少しだけ受けてしまったときがあったので、そこを修正しながら入りましたけれども、後半の最初にメンバー交代もあって、ちょっと左サイドのところで持っていかれたかなと思います。

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第10節 仙台 vs 岡山(23/04/16)試合後コメント(監督)
より一部引用

 4-3-1-2という形というか、守備時は、4-4の二重の守備ブロックを引く形に等しく、結果的に、前へに出て行く、押し返すためにパワーが、必要となっていて、そこの手段の見直しが、迫られているのが岡山である。

 ただ、ここ2試合は、ロングパス比率も増えて、割り切って、シンプルに18櫻川 ソロモンを活かす戦い方が、功を奏している。9ハン・イグォンもスペースへのロングパスが出される事で、少しだけ持ち味を出せるようになってきた。

 また、前半との違いとして、仙台側の印象として、「左サイドでやられた。」というコメントから読み取れること。それは、19木村 太哉サイドの仕掛けが、やはり、効いている。つまり、岡山のストロングポイントになる時間帯が増えている事が感じられる。

記者(インタビュアー)
--後半は前半ほどハイプレスから押し込めなかったことについて。
伊藤 彰 監督(仙台)
「相手がロングボールを蹴ってきたことが1つの要因だと思います。あとは、3連戦の最後というところで、やはりセカンドハーフのところで少しパワーが足りなくなってきたことは事実です。」

 前半でもロングパスは、蹴っていたので、どちらかと言えば、セカンドハーフの所のパワー。つまり、運動量による守備強度の低下で、岡山のカウンタ―を止められなくなってきたことを示している。

 また、3トップ気味の時間帯もあり、ターゲットや前への意識が高くなっていたことで、攻撃に厚みが出ていた事も関係している。

 22シーズンは、前の人数が増えるリスクを運動量や守備強度でカバーしてきたが、23シーズンの今季は、その強度が足りない。

 そこで、受ける。我慢する。という時間帯を設定することで、90分間で仕上げるという戦い方をしている。

 ただ、想定以上に、前半は前にパワーを出せていないというのが、現状である。それでもここ数試合は、ロングパス比率が増えてきた中で、守備に安定感が生まれて、後半に勝負(追いつく)という展開に繋げる事ができるようになってきている。ここは、確かな前進である。

伊藤 彰 監督(仙台)
「やろうとしていることを選手たちがしっかりとやってくれてはいたので、バランスは悪くなくゲームはできていたかなと思っています。後半に入って最初の時間帯のところで、入りをしっかりと、強度を保って相手を裏返していこうという中で、ボールは持っていました。しかし、怖さをもうちょっと最初に出せなかったのがいけないと思っています。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第10節 仙台 vs 岡山(23/04/16)試合後コメント(選手)
より一部引用

 勝てていない期間、よく耳にして来たフレーズ。それは、対戦相手の監督や選手から「自分達のやりたいことができている・自分達のやるべきことができている。」と「勝たないといけない試合であった。」といった趣旨のコメントがセットのフレーズである。

 裏を返せば、相手の良さを出させても負けない強さは、やはり本物だという事。また、同時に、その強さがあるから1敗に留めることができている。しかし、勝ちに繋げれていない現実。このギャップが、やはり、今の順位にあって、その原因が、どこにあるかというと、自分達の強さを活かす術が、やはり下手であったという事にある。

 その原因として、ベストメンバーで組めていなかったことと、新システムを採用した難しさ、新メンバーが増えた難しさ。こういった序盤戦にありがちな、勝負弱さが出てしまっている。

 では、町田は、そういった序盤で躓き易い要素が多い中で、なぜ勝てているかというと、秋田のようにシンプルに「フィジカル」を前面に出した「カウンタ―」を標榜したサッカーを体現できていることにある。徹底したチームカラーにあった編成と、そこにマッチした監督。まさにチームが一つになっている状態を開幕から作れていた。

 一方で、岡山のやりたいサッカーは何か。そこが見えてこない部分が、どうしてもある。もしくは、相手のサッカーに対する解答をしっかり用意できるかどうか。

 その中で、うっすらではあるが、岡山の目指すサッカーの方向性が見えてきた。一つの理想系としては、前半は手堅く入り、セットプレーで先制して、1-0という状況を粘り強く守って作る。後半で、戦術的な引き出しの多さを武器に、相手の弱点や消耗した所をついて、一気に畳みかけるという戦い方である。

 現状は、ビハインドや0-0という状況が多く、難しいゲームが多くなっているが、その状況でも負けていなかった事。これは、ポジティブに本当に捉えて良いと事で、得点が取れていて、負けていない。内容的に、深刻であった試合も少なく、巧く戦えていれば、勝ち点3に繋げられる試合もあった。

 相手の勢いに対して、どれだけ逆襲できるか。逆集(劣勢から逆にボールを進めて集めていく力・逆境での集中力)の力が求められる。

 本日の山口戦は、そういった試合にして欲しい。それを強く感じるばかりである。

 現在のチーム状況を見極めた判断の先の「限界」への挑戦、その先に現在の解答である「現解」がある。

文章・=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino

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