見出し画像

2022ファジアーノ岡山にフォーカス8 J2:第2節:H:ファジアーノ岡山vs徳島ヴォルティス「ファジが1つになるために」

 全文無料公開。スキーやフォローや、購読などをして頂ける記事を目指しています。一人でも多くの方に読んでいただけると嬉しいです。

徳島戦フォーカスポイント
①不協和音と自己主張
②4-4-2守備ブロック
③岡山式4-3-3
④攻守のキーマン
⑤課題と可能性

1、試合戦評

 ボール奪取から7チアゴ・アウベス電光石火の先制ゴールから幕を開けた。直後の高速カウンターや、PK獲得。どちらかでも、決まっていれば、そのまま一気呵成に攻めることが出来たかもしれないが、流石に現実は甘くなかった。徳島の狙いの形であるピッチを広く使うことで、両WGが1対1でドリブルで突破し、クロスを入れていくという攻撃。この攻撃で、岡山の守備組織を乱し、フリーランの動き出しで、スペースを創出するという意図の攻撃の狙いが嵌った形で、15藤尾のゴールを許して失点。その後もチャンスがあったが、前半はそのまま終了。

 後半に流れを変えたい岡山。7チアゴ・アウベスの個人技と15デュークのパワーに、期待して後半もメンバー変更なしに後半に入ったが、岡山の選手が、各場面で孤立する場面が目立った。徳島の方も運動量が落ちてきて、両チームとも前半ほどのチャンスを作ることが出来なかった。そこで、両チームとも、交代カードを切って、勝ち越しや逆転を狙い積極的に動いていくが、攻めていてオープンな展開の割には、決定機は少なくそのまま1-1で試合終了。

2、不協和音と自己主張

この試合で、フォーカスを当てたい選手間のやりとりは、2点。

①ゴールキック編

ゴールキックの場面
上がりたい5柳 育崇。
後ろから繋ぎたい23ヨルディ・バイス。

 これが、試合の進め方の一つの分岐になっていました。5柳としては、15デュークの高さを活かすためにもフィードを蹴ってほしかった。23バイスとしては、ビルドアップから自分達のスタイルでの形を崩す形を目指したかった。少しのやり取りの後、5柳が折れて、23バイスのラインに下りてきました。

 もちろん、どちらも一長一短で、正解はありませんし、どちらも出来たほうが良いですが、15ミッチェルデュークの空中戦の強さは、J2屈指でシンプルに生かして行く方が、徳島としては嫌であったと思います。

 それでも、23ヨルディ・バイスの主張であるビルドアップから、繋いで行くことで、徳島にプレスを誘わせて、背後を付いていく。巧くプレスのかからないポイントで持つことが出来れば、前線へのパスを通す確率は、ゴールキックで、フィードを入れていくより、チャンスになりやすく、目指しているチームスタイルとしても正解です。

さて、このビルドアップは、どうであったのか?

良かった点
10幾笑の裏への抜け出しと、5柳の精度の高いフィード。
悪かった点
散見されたパスミスからのショートカウンターの危機。

 個人的には、「ビルドアップをいつするの?今でしょ!」という感じで、序盤戦の難しい時期だからこそ、このスタイルに挑戦して、成熟していってほしいです。シンプルに15デュークをターゲットにするのも強力ですが、スタイルの成熟に、トライできる状況的猶予があるのは今だけである

②PKキッカー編

 もう1つの場面は、こちらです。正直、これが、勝てなかった最大の理由で間違いありません。7チアゴ・アウベスのシュートが、徳島の選手のハンドとなりました。当然、7チアゴ・アウベスが、蹴ると思っていましたが、キッカーは15ミッチェル・デューク。結果的に、PKは止められてしまったことで、追加点を奪えず、勝利を逃したと言えると思います。

 このシーンの詳細は、公式の試合後コメントの15ミッチェル・デュークの部分を読んでみてほしい。

J2第2節 徳島ヴォルティス戦 監督・選手コメント
は、こちら(公式HP)。
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/p1473057301.html

 15ミッチェル・デュークのコメント通り、7チアゴ・アウベスは、蹴りたがっていた。何故なら、15ミッチェル・デュークがPKを蹴るのを待つ間、7チアゴ・アウベスは、常に手に腰を当てていたからである。「腰に手を当てる 心理学」で、検索すると、どういった心理状態であったかを推し量ることができるので、気になる方は検索して、確認してみて欲しい。

 この試合では、15ミッチェル・デュークの二度の決定機逸機により、流れが落ち着いたことは間違いなく、責任を感じた15ミッチェル・デュークも、無意識の内に7チアゴ・アウベスにパスを選択してしまい、その後のチャンスを作ることが出来ず、結果的に7チアゴタイム(※注釈:詳細は後述)は、1-1で終えてしまった。

 ただ、FWとして、初ゴールを決めたいという気持ちも理解できますし、結果的に止められてしまったが、こういった失敗は、その時は、気持ち悪いものや嫌な雰囲気になるかもしれないが、ここを乗り越えることができれば、この経験により結束を強くし、チームになることもできる。そうなって欲しいと心より願う。

③推奨編

 日本だとこういった自己主張を嫌う傾向にある。これは、日本人の良いところであり、悪いところである。こういったシーンが、今回とりあげた2点以外にも、細かい部分でも見受けられたが、外国籍選手が増えたことで、今後もある。

 しかし、自己主張するからこそ、チームの課題がはっきりと分かる。時には我慢することも大事ではあるが、こういった自己主張が、独り善がりでなければ、話し合いをすることで、納得できれば、次からはそうしてくれるし、自己主張に対しても寛容である。

 声に出すことで、チームとして前進できる。前任の有馬 賢二監督もこういった声を聞くことを大事にしていて、それを選手間で、自発的に起きている点から、チームが一つになっていく過程を、目に見えて感じることができたシーンであった。

 テクニック、フィジカル、メンタル、タクティクス。こういった個の力が例年とは違う爆発力や強さに繋がっている。こういったコミュニケーションでの変化でも国際色を感じた。日本人の感覚では、不安に感じるところではあるが、こういったコミュニケーションを通じて、チームが強くなっていくことは間違いなく、今後の岡山のこういった部分にも注目して欲しい。

3、4-4-2の守備ブロック

 開幕戦は、4-3-3の守備ブロックで、状況に応じて、4-5-1になることもあったが、この試合では、徳島のボール保持時に、4-4-2になっていた。

 この狙いは、大きく分けて「守備時のAN(26本山)脇のケア」と、「攻撃時に、徳の徳島のANの脇のスペース活用」の2つである。

①守備編

 まずは、4-4-2守備ブロックの守備に関してから。徳島とのシステムやスタイルを意識した部分もあるが、一番の狙いは開幕戦に多かった26本山 遥が釣り出されて、ガラ空きになる回数を減らすための修正の1つと考えられる。

 サイドからの仕掛け主体の徳島のドリブルの左右の仕掛けからレーンを意識した飛び込みやバイタルエリアのスペースを突く狙い。

 ここを強く意識して、中盤を厚くすることで、決定機を作らせないということには、成功していた。効果的な仕掛けや高精度のクロス、中の動き出し、こういったアクションを屈指して攻めてくる徳島の選手を、捕まえることに苦労して、失点こそ許したが、1失点に抑えた通り、個の対応力の高さを感じた試合となった。1梅田 透吾の反応の良さも目立ち、こういった拮抗した試合では、攻守で頼りになる。

②攻撃編

 もう1つの狙いは、ポゼッションから、IHが飛び込む形までの土壌がしっかり出来ている徳島の良さを逆手に取ったショートカウンターを強く意識している。

 ボール奪取後に、7チアゴ・アウベスと10宮崎 幾笑が、裏へ抜けていくというシーンを何度も作ることが出来た。15ミッチェル・デュークもカウンター適正は高く、ボール奪取後に徳島のDFが、対応を誤れば、得点に繫がるという切れ味の鋭いカウンターが出来る。

 この部分に関しては、狙いは嵌ったものの高速カウンターとPKの決定機を決めきれなかったことで、試合が難しくなった。

4、岡山式4-3-3

 多くの方が思ったはずである。同じサッカーを目指している筈なのに、ここまでサッカーが違うのだろうか?と、

①徳島式4-3-3(ポゼッション型)

 徳島式というよりは、4-3-3の良さを最大限活かすためには、このサッカーしかない。そういったサッカーを徳島は展開していた。

 WGがサイドから仕掛けて、クロスやラストパスを入れていく。浮き球やグラウンダー、角度、遠近。こういった部分を使い分けることで、フリーの選手を作って、ゴールを狙う。こういった感じに徳島は、4-3-3の良さを、純粋なWG選手を起用することで、効果的な攻撃を岡山に対して仕掛けていた。

 ビルドアップでも22安部 崇士の左足は、驚異で岡山の4-4-2ブロックを崩してのプレスや、ネガティブトランジションで、前から嵌めていくプレス網を掻い潜った時には、展開されて一点して、ゴール前のいうシーンを作られた。

 こういったプレスを掻い潜る力というのは、徳島の方が優れていた。岡山は、CBのビルドアップで、カットされて波状攻撃を受けるなど、自陣での確実にマイボールする力が弱く、逆に徳島の方は、WGの24西谷 和希と、34浜下 瑛が、サイドから仕掛けるという狙いはしっかり形となっていた。

 もし、仮に高さのあるCFがいれば、逆転されていても不思議ではなかった。これだけの完成度の高い4-3-3。岡山の4-3-3が隙だらけに感じるが、それでもスコアは1-1。サッカーにおける個の力と戦術など、勝つためには総合力の高さの必要性を感じた。

②岡山式4-3-3(カウンター型)

 開幕戦の岡山の課題と、徳島の内容を考慮して、4-4-2の守備ブロック攻撃時には7チアゴ・アウベス、15ミッチェル・デューク、10宮崎 幾笑の裏へのスピードやテクニックを最大限活かすだけではなく、15ミッチェル・デュークのポストプレーも活用した攻撃。

 こういった部分は、存分に発揮できた。一方で、徳島のように、ビルドアップから効果的に前に運び、WGが仕掛けて、スペースを活用した攻撃を仕掛けるというのは、出来ていなかった。

 岡山は、徳島のようにビルドアップでしっかり前に運んで、WG仕掛けていくという4-3-3を目指しているが、どちらかと言えば、前線の3枚を最大限活かすカウンタ―を意識しており、あくまで理想に拘ることなく、自分達にできることをしていこうというサッカーを展開している。

 ただ、このサッカーにおいて、個で勝負できる選手が下がった時の迫力不足が顕著となっている。途中からWGに入った19木村 太哉は、球離れが悪く、チャンスメークやゴールに迫っていくという部分で、持ち味を活かし切れてなくて、孤立したように見える。22佐野 航大も仕掛けるという部分で、存在感を出し切れていなかった。

 チームとして成熟度を高めていく中で、徳島の4-3-3に近づいていくのか、それともこの独自路線を続けるのか。この辺り、今後の注目ポイントの1つである。

③4-3-3の対比

攻撃
①徳島のロングパスが幅の活用を狙ったものであるとすると、岡山のロングパスは、裏を強く意識している。
②徳島が、人数をかけてのフォローやパスでの崩しで、そのスペースを作り、そこを突いていく攻撃であるとすると、岡山は前線の個で崩すことで、スペースを作ってそこをついていく攻撃。

守備
 両チームとも前からのプレスを強く意識していた。岡山は、そこを突破されると、スペースを埋める形を採用し、4-4-2と4-3-3の形を状況によって使い分けていた。徳島は、バランスを強く意識し、切り替えを早くすることで、安定感を作り、攻撃時に移った時にポゼッションをしてマイボールにすることを強く意識していた。

5、攻守のキーマン

 この試合の可変式の岡山型4-3-3を採用するに当たって、組織的に戦うために、個の力ではなく、ポジショニングと役割の上で、重要な選手が2選手存在する。

27河井 陽介と26本山 遥である。

①27河井 陽介の「動」の役割

 まず、守備時であるが、4-4-2の守備ブロックの時に、4-4-2であれば、FWとして15ミッチェル・デューク(20川本 梨誉)と、共に前線からプレスをかけていく。これは、有馬ファジの4-4-2を意識したものと考えても問題ない。

 4-4-2採用に伴い、新選手が多い関係で、完成度こそ高くなかったが、昨季の主軸であった16河野 諒祐が、開幕戦とは別の選手のように、攻守で存在感を発揮し、ピッチで躍動した。10宮崎 幾笑も裏への抜け出しで、スピードやテクニックで、徳島のDFラインを搔き乱した。

 可変式の難しさは、ピッチでは選手の判断に委ねられることではあるが、4-3-3、4-4-2の切り替えの判断は的確で、可変のタイミングの判断ミスでバランスを崩すことはなく、攻守での貢献度は高かった。

②26本山 遥の「不動」の役割

 27河井 陽介とは対称的に、26本山 遥は、ANというポジションで、動かないことで、チームに安定感を生み出す。ANに選手がいることで、CBが前に釣り出されることを防ぐことが出来る。開幕戦では、ここが開いたことで、このスペースを活用されたと指摘されていた方も多く、流石にチームとしてもここにテコ入れしてきた印象。

 26本山 遥が、そこにいるという安心感は、5柳 育崇と23ヨルディ・バイスに近いものがある。開幕戦に続いて、高いパフォーマンスをみせた26本山 遥は、内外でより評価を高めた選手の一人と言える。2試合では、フル出場を達成。運動量的には、プロのプレー強度でも通用することを証明してみせた。14田中 雄大と共に、即戦力として、今後の活躍に期待したい。

6、課題と可能性

 課題が多いのに負けない。これは有馬ファジとは、逆の課題と言える。有馬ファジは、自陣でのプレーが少なく、相手チーム陣地まで、しっかり運び、シュートで相手を上回ることが多かった。しかし、木山ファジでは、完成度はお世辞に高いとは言えないが、高い個の力で、チームとしての強さとして形となっている。

①ビルドアップ

 まだまだ不安定なビルドアップ。ロングパス以外での繋ぎにいってのパスをカットされて、シュートまで行かれたシーンがどうしても生じてしまっている。本来であれば、失点しても不思議ではないが、対人守備や守護神の1梅田のファインセーブもあり、1失点に抑えている。

 驚くべきことは、プレスを受けて、パスミスをしてしまう5柳 育崇と23ヨルディ・バイスだが、難しいロングパスの成功率も高い。前線の選手のクオリティが高いこともあるかもしれないが、両選手とも攻撃的な選手であるが故に、アジリティに難があるだけではなく、リスクのあるパスを選択しがちである事も関係していると言えそうだ。

 この辺りは、攻守における個の力を発揮することで、チームとしての爆発力を秘めている一方で、ここが弱さになる可能性もある。この辺り、1つ1つのプレーが、どういった狙いがあるかを考えるのも、今後の楽しみの1つと言える。

②セットプレー

 本来であれば強みになる筈のセットプレー。しかし、肝心の精度が悪く、際どいシーンを作ることも出来なかった。チームとして、どう合わせていくのかという部分で、なんらかのアプローチが必要であると感じた徳島戦となった。

23ヨルディ・バイスと5柳 育崇、15ミッチェル・デュークの圧倒的な高さを感じたい。二次攻撃での27河井 陽介から演出されたゴールも増えて欲しいですし、こぼれ球に反応した41徳元 悠平の左足一閃もまたみたい。

③チアゴタイム

 7チアゴ・アウベスのプレーの一つ一つにサッカーを楽しむという遊び心があり、そこに技術が伴った左足の凄さを称えて「悪魔の左足」と、呼ばれている。その左足を活かして、何処からでも何時でも狙っていて、7チアゴ・アウベスが出場している時間帯は、岡山の大きな得点源と言える。

 7チアゴ・アウベスが下がったあとは、明らかに得点力が下がっている。この試合に関しては、何処か閉塞感すらも漂っていた。開幕戦のような得点力を維持するためにも、こういった終盤にもどう得点を決めていくかは、今後の注目ポイントの1つと言える。

7、次節に向けて

 暫定の順位ではあるが、首位から後退した。それでも2位。2節時点で早くも2連勝は1チームのみで、昇格候補の一角である横浜FCである。

 このまま混戦が続けば、自動昇格も狙えるかもしれない。とはいえ、内容的にややトーンダウンしてしまったが、チームとして、どうエンジンをかけていくか。


 甲府と徳島という昇格候補のチーム2連戦で、1勝1分けで、悪くない結果。5柳 育崇が昨シーズンまで所属した栃木に何処まで戦えるかで、今の岡山の立ち位置が見え来るかもしれない。

 首位に返り咲くことも十分可能ではあり、そこを巡る攻防や、メンバー変更と4-4-2ブロックのような新たな戦術的な引き出しがあるかどうかは、楽しみの一つである。

 最後まで読んで下さり有難うございました。

文章・図=杉野 雅昭
text・picture=Masaaki Sugino

ファジ造語

チアゴタイム
 7チアゴ・アウベスのプレーの一つ一つにサッカーを楽しむという遊び心があり、そこに技術が伴った左足の凄さを称えて「悪魔の左足」と、呼ばれている。その左足を活かして、何処からでも何時でも狙っていて、7チアゴ・アウベスが出場している時間帯は、岡山の大きな得点源と言える。

筆者紹介
 某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりが、楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるので、治したいとは思っている。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

ここから先は

0字

¥ 100

自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。