Jリーグにフォーカス3『 ≫≫ポゼッションと数的不利の噛み合わせ~初を献上~≪≪ 』2024 J2 第9節 大分トリニータ vs ブラブリッツ秋田



1、試合寸評~形が足枷に~


2024 J2 第9節 大分トリニータ vs ブラブリッツ秋田
2024年04月07日(14:03kick off) レゾナックドーム大分

 次戦の岡山の対戦相手である秋田の情報を探るためにこの試合をフル視聴。大分とも対戦済みであったので、そこも踏まえて、時間の都合で簡単であるが、この試合をこの章で振り返りたい。

 試合は、開始早々に秋田の29番 佐藤 大樹 選手が、強烈なミドルシュートを放つと、大分のGKの32番 濱田 太郎 選手もなんとか反応してセーブするも弾くので精一杯であった。この時大分のDFの選手の方が近かったが、一歩目が遅かった。逆に秋田の29番 佐藤 大樹 選手は、驚異的な加速で、一気にボールまで詰めると、GKが立ち上がるよりも早く2度目のシュートまで行くことで、ゴールネットを揺らすことで、時間帯もこぼれ球への反応も電光石火の先制点を決める。この大分の守備の予測や次のプレーの意識の緩さは、後にも響くことなるが、大分としては、出鼻をくじかれた形となってしまったが、これも後に重くのしかかることとなってしまった。

 先制点から10分も断たない内に、若い主審の方である大橋 侑祐 主審の映像を見る限り、頭に当たっているように見えたが、まさかのハンドのジャッジが言い渡される。自信があったように見えたので、正直映像を見て当たっていないように見えたので驚いたが、明らかな誤審であった時は、周りの選手(このケースであれば大分の選手)が猛抗議することも多いが、反応を見る限り、やはり強烈なシュートであったので、目視できた選手が少なかったのだろう。経験豊富な主審の方でもVARがなければ、誤審することも多いので、難しいと言えば難しいかもしれないが、倒れ方を見ても当たり所が悪い(手以外に当たってダメージを受けた)ように見えたので、大分としては、厳しいというか不運なジャッジであった。しかし、はっきり見えた選手が少なかったことで、その後は、このPKを秋田の11番 梶谷 政仁 選手が決められて、0-2と早々に2点ビハインドになったもののまだ冷静に戦うことができたの幸いであったように感じられた。

 この後、秋田は、2番 岡崎 亮平 選手が、負傷交代で、3番 小柳 達司 選手と交代するが、秋田がリードしていることもあり、秋田がカウンターを意識した戦い方で優位に進め、シュート数も積み重ねていたが、秋田の15番 丹羽 詩温 選手が、2枚目のイエローカードで退場する。一度交代していることもあって、時間帯も時間帯であったので、交代を見送ったが、この混乱を乗じてというか、大分が、数的有利を活かして、秋田が修正する前というか中央を固める前の秋田のペナルティボックスに、一本のサイドへの縦パスを19番 小酒井 新大 選手が着けると、26番 保田 堅心 選手が、ペナルティエリアの中へ素早く絶妙なラストパスを通すと、11番 渡邉 新太 選手が、的確にミートしたシュートは、絶妙なコースへと突き刺さって、1点返すことに成功した。

 この得点は、退場の時間帯が長ければ、交代の回数を使ってでも守備の修正で、隙を消していたであろう秋田が、そうしなかったことで生じた隙を突かれての失点であり、大分としては、もう少し時間帯があれば、一気に追いつけたかもしれないのだが、それでも同点に追いつけないスコアとなってい
たあのPKでの2失点が重く伸し掛かった形となってしまった。

 試合は、勝負の後半となる。大分としては、数的有利を活かして、一気呵成に攻めるために、左SBの2番 香川 勇気 選手に変えて、27番 松尾 勇祐 選手を投入する。この時、左SHの4番 薩川 淳貴 選手を(主に左SHを任されているが、ポジション登録上はDFの)本職の左SBに回る。そして、その左SHには、6番 弓場 将輝 選手が入り、そのDHには、26番 保田 堅心 選手が入って、後半頭から入った27番 松尾 勇祐 選手は、右SHに入った。これは、全体的に守備の得意な選手を攻撃的な選手に変えつつも、連戦なども考慮しての変更であったのではないかと思う。

 1点リードしている秋田は、シンプルにFWであったが、右SHに回っていた11番 梶谷 政仁 選手に代えて、MFの8番 畑 潤基 選手を投入することで、4-4-1で戦う上での隙を埋めることをシンプルに選択した。

 後半の秋田は、徹底的にカウンターを狙うために、奪ってはスペースや人に判断良くロングパスを蹴りこむという事を一貫して続けていた。この試合では、先日の岡山戦で、1人多くなった時の戦い方の課題や反省点について、直接語らなくても「岡山戦」のワードが出てきた通り大分は、秋田のカウンターを恐れて、速攻やリスクのある縦パスが少なく、後方に人数を余らせることが多かった。

 それでもゴール前で、持ち味の繋ぐ力、ポゼッションの力でパスを繋いで、11番 渡邉 新太 選手のような得点のように崩せれば良いが、結果的に繋いだ先の選択が、連動したパスワークで崩すのではなく、シンプルなクロスや一本のスルーパスを狙うような形になっていたため、繋ぐことに固執する余り、数的有利を活かせず、逆に前に出てこない事で、いつも以上に堅い秋田の守備の壁に工夫のない攻撃を繰り返して、ただただ時間を消化するという時間帯が続いていた。

 試合に動きそうな気配がでたのが、DF登録だが、パワープレー要因の31番 ペレイラ 選手を投入したからだ。時間として85分経過してからだ。この時間帯になって焦ったのか、左右のSBが常に高くポジションを取り、中に人数を掛けつつ、長いパスや攻撃の速度がようやく上がったきた。

 これが、非常に効果的で、攻撃の形というかペナルティエリア内でのプレーが増えてくる。しかし、リードしていたのは秋田で、秋田のGKの31番 圍 謙太朗 選手の大きくけった一本のロングフィードが、1バウンドすると、ここでも大分のCBの二人の守備の意識の低さというか緩さのため、出足が遅くなると、大分のGKの32番 濱田 太郎 選手が飛び出すも先に触ったのは、秋田の40番 青木 翔大 選手で、頭で触ったボールは、無人のゴールへと吸い込まれて、ダメ押しの3点目。40番 青木 翔大 選手は、今季初ゴール。そして、GKの31番 圍 謙太朗 選手は、プロ初アシストの可能性もあるかもしれない。

 先制点の失点のシーンといい、このダメ押しの3失点目とも良い、DFの守備意識の低さというか警戒感というか予測の甘さというか、連携の悪さというのか、そういったものが出てしまい大分にとっては、悪い失点の形となってしまった。

 この後に、31番 ペレイラ 選手のあと一歩と迫る惜しいシーンやポストバーに当たる93番 長沢 駿 選手の惜しいシュートが立て続けにあったが、結局試合は、苦しみながらも1-3でアウェイ秋田が、やべるきことを90分間やり切って、大分戦での初勝利を数的不利になってもリードを守り抜き、最後に突き放すという最高の形で手にした。

 大分としては、立ち上がりのシーンを含めて、誤審の可能性が高いPKがあったとはいえ、やるべきことを徹底できなかった内容が、結果として突きつけられた。ただ、大分の得点は、まさに大分の形の得点であり、この得点ができる喜びがあれば、大分スタイルを継続するというのも納得であり、できれば1つ1つのプレーを徹底することで、自分たちの良さをもっと出したかった後悔の残る反省の多い試合となってしまった。


2、印象に残ったポイント(選手)~大分~


 大分のポゼッションは、本来プレスで引き付けて、その背後を突くという事で、本来の力を発揮できるサッカーであると思いますが、今季の私がチェックした試合では、悪い所ばかり出てしまっている。

 この根本にあるのが、やはり近代サッカーの変化ではないかと感じる。繋ぐだけではなく、速攻に対応するチームが増えてきた中で、ポゼッションに拘る大分のサッカーは、多くの試合でハイプレスやロングパスの速攻の脅威に晒せれ続けてしまっている。

 そのため、この試合のようにカウンターやシンプルなフィジカルの速攻のプレー1つで、失点するシーンも増える中で、そこへの恐怖心というか、一歩目が遅くなるような現象がどうしても生じてしまうのかなと感じます。

 そして理由はそれだけではなく、大分の選手に、やはりボックスでしっかり仕事できるストライカーの選手が、不在であることも1つの調子を上がり切れない原因となっているのではないかと感じます。そこで仕事できる選手が少ない事で、その役割をこなせる93番 長沢 駿 選手を左サイドでも右サイドでも中央でも、全選手でチームとして共有することで、本来中央で仕事をすべき93番 長沢 駿 選手が中央にいないことで、決め手を欠くという試合が多くなっているのではないかと感じる。

 その証拠に、31番 ペレイラ 選手が入ってからは、スコアが1-3になったこともあるとはいえ、別にチームのように攻撃に迫力が出てきた。大分も恐らく夏場に向けて、そこの補強に動くのではないかと感じるが、31番 ペレイラ 選手のような高さで、ポストプレーができる選手がもう1人いれば、93番 長沢 駿 選手をより活かせると思いますし、シンプルなクロスでも得点が増えるだけではなく、前半からもロングパスがより有効になるのではないかと感じます。

 現状、世界を見渡してもポゼッションサッカーの難しさ際立っている中で、大分の代名詞となるポゼッションサッカーをもう一度現代サッカーへとデザインを変えても良いのではないかと第三者視点では感じるが、同時にこの試合の1得点の綺麗な形の崩しを見たら、前述した通り、このサッカーを辞めることはできない。変えることはできない。貫き通したいという気持ちも非常に理解できるので、クラブとしてチームとして、スタイルを貫き通すのか、それとも勝てるサッカーへとの変化を受け入れるのか。そこが突きつけられているように感じた試合となってしまった。

MF 19番 小酒井 新大 選手(CH)

 大分の得点に繋がった縦パスは見事。こういった一気に攻撃を加速できるパスを出せる視野の広く、正確なパスを出せるCHの存在は、大分のようなパスサッカーには、必要不可欠に感じる。横や後ろへのパスだけではなく、もっと縦に付けることで、大分のポゼッションサッカーは、より輝くのではないかと感じた。

FW 11番 渡邉 新太 選手(CF)

 ストライカーというよりは、MFの延長線上にいるような感じの選手の認識であるが、あの動き出しからのあの強烈なシュートや感覚は、やっぱり凄いと感じる。ボールタッチを含めて、やはり秀逸で、大分のサッカーで決める役割を大分のスタイルで、完遂できるチームのエースは、11番 渡邉 新太 選手だと改めて感じた試合となった。

FW:93番 長沢 駿 選手

 大分は、どちらかと言えば、1-0で勝てるのが理想であるような戦い方をしているように感じる中で、チームとして試合の主導権を握るために、大分らしく攻撃を持続する上で、被守備機会を減らすというのが、大前提にあると思うが、最後の猛攻の時間を除いて、攻撃でも守備でも色々できる93番 長沢 駿 選手の存在の大きさをこの試合でも感じた。ただ、その良さをどう得点に繋げて、勝利に変えていくのかというのが、チームとしての課題というか悩みに感じた。バーに当たった惜しいシュートを考えても、万能ではあるもののストライカーであることを改めて感じた。


3、印象に残ったポイント(選手)~秋田~


 非常に明確かつシンプルな戦い方ができるチームであると改めて感じた。先制点にしても、あの速さを知らなければ、なんともないプレーで終わっていたはずで、あの加速ができる選手が多いのが秋田であると感じられた。

 できることとできないことをチームとして理解できているだけではなく、吉田 謙 監督のシンプルな言葉で難しいことを避けて、できることをやり続けるという事に集中できているという事をこの試合からは強く感じた。

 しかしながら、難しいことに全くトライしないかと言われれば、そうではなくてセットプレーもデザインした形を2度も見せるなど、難しいサインプレーでも練習から準備できることをやる。本当に、シンプルなサッカーではあるが、これができるチームはそんなに多くない。

 その秋田に負けた対戦チームでも秋田とのサッカーとの組み難さや、やり難さを感じる対戦チームも多く、1つのスタイルにシンプルに特化することで、J2で堂々たる戦いができている。それを21シーズンから23シーズンまで体現していく中で、メンバーが変わった今季でも体現できる。それこそが秋田の強さであると感じられた。

 この試合でも、大分に負けている部分もあったと思いますが、1つ1つのプレーを全力をやり通すことで、先制点が生まれ、最大限に強くシュートを打った事で、誤審にも見えたPKジャッジを誘発した。そして、3点目もGKが思い切り、一蹴入魂のフィードが、可能性を信じて走った40番 青木 翔大 選手の得点に繋がった。

 その直後にも秋田にチャンスがあったが、ボールを持つと苦しい時間帯でも1人で持ち運んで、数的不利の状況でも他の選手も連動して上がってくる。2点差あったとはいえ、他のチームであれば、その選手に任せて、サイドに流れて時間稼ぎをするはずである。

 時間を稼ぎをするどころか、中の様子を伺い4点目を当然のように狙いつつ、ボールを持って攻撃の機会を伺うことで、時間をも稼ぐ。1人少ないチームが、この時間帯に選択するプレーではないですし、それに追随する選手も多いからこそ、秋田には、絶望に陥れるカウンターでの得点が多いのだと感じた。

 数的不利を活かしきれなかった大分に対して、秋田は自分たちができることのみをブレずに続けたことで、数的不利を乗り越えてのダメ押しの追加点と大分戦初勝利を掴んだ試合と言えるのではないでしょうか。

GK 31番 圍 謙太朗 選手

 1アシストを記録したことも去ることながら190センチの長身を感じさせない躍動感というのを1つ1つのプレーから感じました。近年は、こうした長身のGKの選手が増えた中で、このクラスのGKが、J2にも多くいる。改めて、GKの競争も熾烈を極めた次第です。1つ1つのプレーがはっきりしていて、GKまでもシンプルというのが、秋田一体+を体現できていると感じました。

MF 29番 佐藤 大樹 選手(左SH)

 電光石火の先制点が、この試合の秋田の勝利を呼び込んだことは間違いないでしょう。他のシーンでも打てるシーンでは迷いなくシュートを放ってましたし、走力を活かした仕掛けで、大分ゴールに迫っていたと思います。速さと強さを兼ね備えたパンチ力のあるアタッカーで、大分にとっては、失点シーン以外でも怖い選手であったと思います。

MF 8番 畑 潤基 選手(右SH)

 数的不利の中で、アバウトに蹴りだされたボールに対して、トライを続けていましたし、守備でも粘り強く対応できていたことが印象的でした。プレースキッカーを任されていまたし、秋田の攻撃のスーパーサブのような存在で、終盤の秋田の攻撃に違ったエッセンスを加えることができる選手だと感じました。


4、総括~固執と徹底の差~


 大分のスタイルが悪い訳ではありませんが、出来ることをやり続けることで、自分たちの力の120%の力を出し切れた秋田に対して、大分は数的有利を活かしきれず、自分たちのスタイルや各選手の武器を出し切れなかったという試合になったのではないかと感じます。

 改めて、秋田に関しては、誤魔化しが利かないというか、自分たちの弱さや強さがはっきり出てしまうというのを第三者視点で感じました。一方で、昇格候補にも上げられる大分が、ここまで状態が上がってこないのもそれなりの理由があるとも感じました。

 ただ、チームには良い時もあれば、悪い時はあると常々言われますし、この敗戦を受けて、全て終わりではありませんし、この悔しさを受けて、チームとして気持ちを引き締めて、守備でも攻撃でも一歩でも速く動けるようなチームとしても連動することでの意識や集中力を高める材料にできるかどうかというのが、9-10-9-10で4期で考えた時に、問われていくんだという事を感じました。

 秋田は、自分達のスタイルを体現するために、色々な事を徹底できていた事に対して、大分は、まだまだ自分達のサッカーを体現するために足りないものが現状では多く、そこは伸び代に感じましたし、38試合で、最終的にどこの位置にいるか、もしプレーオフに回ったのであれば、そこでどういった結果を残せるかの方が大事ですし、私自身、第三者視点でもこういった論調で語ってますが、実情は大分トリニータファミリーの方やブラウブリッツ秋田ファミリーにしか分からない事がありますから、この1試合が全てではないはずです。当事者しか理解できない事があり、その戦いの中で、何を掴んで次に繋げることができるか。繰り返しになりますが、そこが大事だとこの試合に関しては、強く感じました。

 結果と内容を考えて「固執と徹底の差」と、表現しましたが、内容や結果が逆になる可能性も当然あったわけで、それを込めて、サッカーの魅力であり奥深さであり、やはりサポーターの1人として、サッカーの1人として、多くの試合を実際に見てみないと分からない事があると感じました。

 だからこそ、これから多くの試合を見たいと感じました。最後の最後まで見どころのあった試合に感じて面白かったです。今節も素晴らしい試合を視聴することができて良かったです。有難うございました。

文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino

 ここまで読んで下さった方で、秋田や岡山のことが気になる方は、10節でぶつかる両チームに向けてのプレビューも是非!



筆者紹介
 冷静さと熱さを両立した上で、自分の感じた事を自分の言葉で表現することを大事にしている。ハイライトやテキスト速報をレビューを書くために確認するが、極力SNSは、情報を遮断して、レビューを執筆している。流石に通知なので、軽く目にすることこそあるが、綿密に分析するというよりは、サッカーというスポーツの魅力を発信することを一番大事にしており、ファジアーノ岡山だけではなく、対戦クラブにも最大限のリスペクトの気持ちで、サポーターとの交流や魅力を語り合うことが好きで、レビューを書き始めて、中断期間や書けなかった試合もあるが、10年以上、ファジアーノ岡山を中心にサッカーのある生活をエンジョイしつつ、応援してきた。


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