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2023ファジアーノ岡山にフォーカス19『 ベストゲームと方向性~乖離(海里)~ 』J2 第9節(H)vs ロアッソ熊本

 筆者は、4-3-1-2の戦い方としては、熊本戦は、ベストゲームと言える内容であったと考えている。思い起こせば、22シーズン。徳島と同じシステムで開幕を迎えたが、岡山は、理想より結果を求めて行く中で、違うシステムへと転換した。

 23シーズンも奇しくも岡山と徳島は、同じシステムでスタートとして、岡山は、出だしこそ良かったものの22シーズン以上に苦しんで、中位に留まっている。徳島に関しては、降格圏。ただ、徳島は、力があるチームであり、22シーズンのように終盤からの猛烈な追い上げることのできる力があるチームだ。

 早い段階で、徳島は、4-3-1-2と4-1-2-3を併用して行く中で、どこまで立て直せるのか、注目しているというよりは、どちらかと言えば、筆者はか警戒しているという気持ちが強い。今季も昨季のように試行錯誤する中で、両チームが、今後どういった道を進んでいくのか。これもまた気になるが、本題とはそれる。

 ということで、この記事は、熊本戦のレビューであるので、何故熊本戦が、4-3-1-2で、ベストであったのかから。簡潔に振り返っていきたい。

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※注意点:私が考えた造語を文章の中で多用しています。※

 まず、本文に入る前に、本文を引用させて頂く、公式コメントの引用元のHPを紹介させていただく所から入っていきたい。

引用元サイト紹介(選手と監督公式コメント)

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第9節 ロアッソ熊本戦 監督・選手コメント
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/202304122300/

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第9節 岡山 vs 熊本(23/04/12)試合後コメント(選手)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/041208/player/

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第9節 岡山 vs 熊本(23/04/12)試合後コメント(監督)
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.jleague.jp/match/j2/2023/041208/coach/


1、ベストでも不満(不利)~手法(主砲)~


 私は、この試合の岡山の戦い方は、今までで、一番良い判断が出来ていた試合であったと感じた。これまでは、相手のプレスを受けた時に、開幕戦のようにいなして、繋いでプレスの裏に抜けて行くという事を目指して来たが、そこで打開できず、ボールを奪われるというシーンが目についていた。

 今季の岡山は、チームとして繋いで行くという方針というよりは、開幕戦で繋いで良い時間帯が長い試合ができたことで、「今季の自分達は、パスを繋げるようになった。」と、勘違いしてしまったことだ。

 今のJ2を見渡して、運動量や守備強度が高いチームが多く、磐田と清水の両チームは、そういったJ2とは違ったサッカーで、勝利を目指すチームと当たったことで、その成功体験により、”ロングパス“や”クリア“といった繋ぐ事を諦めるプレーが、中途半端になることが多かった。

 この試合では、繋ぐシーンがあったものの厳しいと感じたら前線のターゲットをシンプルに使って行くという事ができていた。更に43鈴木 喜丈の不在もトップ下である44仙波 大志が、ほぼボランチとしてポジションをとることで、中盤の厚みを作る形を作っていた。2高木 友也が純粋なSBとしてプレーすることで、4-4-2のような2ブロックをしっかり構築できたことで、守備は安定した。

 この結果、後でハイプレスに晒される時間が減り、シンプルに9ハン・イングォンや18櫻川 ソロモンの強さを使って行くということができていた。この流れからセットプレーの機会を作り、得点出来ていれば、勝利出来ていた試合だが、圧倒的に手数が少ない。

 やはり、受けのサッカー色が強い以上、運動量や強度の高いチーム、繋げるチームに対して、相手より多くの得点を決めるということが難しいのが、岡山の弱点と言える。ここが、勝ち点3に繋げられない原因の一つと考えられる。

 そして、この戦い方で勝つことができないのであれば苦しい。もしくは、不満であるのであれば、メインとして考えるのは厳しいというのが、現実である。

 選手や監督は、どう感じていたのか?

記者(インタビュアー)
--スコアレスドローに終わりました。試合を振り返っていかがですか?
5柳 育崇(岡山)
「やっぱり勝ちたかった、ホームで勝ちたかった試合ですね。やっぱりまだまだ我慢のときなんじゃないかなと感じています。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第9節 岡山 vs 熊本(23/04/12)試合後コメント(選手)
より一部引用

 ”我慢“というワードが出てきた。ベストに近い戦い方でも苦しい状況が全てだ。

記者(インタビュアー)
--4試合ぶりの先発でした。試合を振り返って。
44仙波 大志(岡山)
「前半は個人的に球際とかで負けていたのですが、後半は球際も勝ててチームに勢いっていうか、そういうものをもたらせた。だけど、あまりボールに触れなかったので自分の良さを出せなかったかなと思います。」
記者(インタビュアー)
--後半は3バックに変えて勢いが出ましたが、手ごたえはいかがですか?
44仙波 大志(岡山)
「パスの回し方で3バックのほうがフリーの味方選手がいて、相手も(プレスに)来にくかったと思うので、そういうところで優位に立ててパスを回せたと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第9節 岡山 vs 熊本(23/04/12)試合後コメント(選手)
より一部引用

 岡山の中盤の強みは、”球際”ではない。秋田やいわき、町田のようにフィジカルを売りにしているチームではないので、”球際“よりは、”運動量“や”距離感“より生まれる様々な相乗効果こそが、岡山の武器である。

 その相乗効果が、パス回しかもしれないし、囲い込むや追い込むことでの球際の強さかもしれない。実際に、編成バランスを観ても岡山の武器は、攻撃である。

 3バックでも前掛かりの3バック。つまり、前線に人数をかけた3バックの方が岡山に合っている。というよりは、4-3-1-2の戦い方を徹底出来ない、良しと感じられないのであれば、前から行く22シーズンの形の方が良いことは間違いない。

木山 隆之 監督(岡山)
「何とか一つ勝利が欲しいが、難しい試合になった。
前半、もっとアグレッシブにいきたかったが相手のボールを持つ力、前に行く力に上回られて攻め込まれる時間が長かった。凌いで決定的なチャンスを与えずに守れていたので、良しとするしかない。試合の途中で何かを変えることが難しい状況だったので、耐えようと思った。時々カウンターはできていたので、何とか1点と思っていたが苦しい前半だった。
後半はやり方を変えてスタートしたが、勢いを出せた部分、やり切れなかった部分があり、得点を奪えず引き分けとなった。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第9節 ロアッソ熊本戦 監督・選手コメント
より一部引用

 ここは、やはり「もっとアグレッシブにいきたかった」、「凌いで決定的なチャンスを与えずに守れていたので、良しとするしかない。」という表現が使われているが、チームによって、しっかり守ってカウンタ―という狙い通りのサッカーという表現が使われても不思議ではない。

 そうでなかった以上、手法として間違っているのではないか?そういった疑念がどうしても生じる。これは、やはり「カウンタ―恐怖症」というのが、根底にあるのかもしれない。監督として、22シーズン終盤の勝負所やプレーオフでの敗退の責任を強く感じて、今季を迎えたのかもしれない。

 ただ、選手ミーティングにより、スタートから例の形にシフトするのであれば、木山 隆之 監督の指揮して来た。これまでの成果であり、ここから勝ちに繋げて、勢いに乗れるのであれば、22シーズンと違った強い岡山。そこを取り戻せる転機になるかもしれない。

 岡山は、9節まで違う手法で新たな強さを追い求めたが、自分達が目指すサッカー、自分達のしたいサッカー。これとの明らかな乖離があった。ここは、否定できない事実であるだろう。

 岡山が、今後は、チームとして相手を攻める新たな手法(主砲)として、どういった形を選択するのか、10節の仙台戦は、不安でもあり、楽しみでもある。

7チアゴ・アウベス(岡山)
「サッカーを始めてから、目標のゴール数を決めたことがなく、チャンスが来た分だけ取るという自然体でいる。今は8試合出ていなかったので、やっと試合に出られて試合勘を取り戻しているところ。それが戻れば自然とゴールも取れると思う。
今日引き分けてしまったので、次の試合で点を取って、勝点3を持ち帰ってきたい。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第9節 ロアッソ熊本戦 監督・選手コメント
より一部引用

 7チアゴ・アウベスの復帰で、チームが彼の調子と共に浮上していくのが反撃の狼煙の道筋となりえる。新たな手法(主砲)に注目したい。


2、岡山対策の方程式~深刻(進刻)~


 ここまで、はっきりと対戦チームである監督ではなく、選手にここまで言われる程、岡山対策が、明確であれば、難しい試合になることは、試合前から決まっていたかもしれない。そう感じるぐらいの驚愕の熊本の選手のコメントが、試合後に語られている。

11粟飯原 尚平(熊本)
「内容的には良かったので、自分があそこで決めていれば、試合は終わっていたのかなと思います。」
記者(インタビュアー)
--良い内容にできた理由は?
11粟飯原 尚平(熊本)
「前半は特に、相手のプレッシャーもあまりなく、相手の陣地でボールを回せる状況が多かったので、そこは本当に良かったんですけど、やっぱり前半で何回か、1点、2点を決められるビッグチャンスがあったので、そこは改善していかなきゃならないところだと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第9節 岡山 vs 熊本(23/04/12)試合後コメント(選手)
より一部引用

>「相手のプレッシャーもあまりなく、相手の陣地でボールを回せる状況が多かった」

 ここが、木山 隆之 監督の選ぶシステムの根本的な問題。ここが、苦戦の理由でもある。対策としては、前からプレスをしっかりかけていく。もしくは、自陣でボールを奪っての高速カウンター。

 他にも高度な対策があるかもしれないが、シンプルな対策としてこの二つが有力である。ただ、前からのプレスは、そもそも人数が足りず、なかなか難しく、カウンタ―もロングパスの意識が低い。岡山が、かなり矛盾した戦いを挑んでいる。

 それが、ここ数試合で、はっきりと分かって来た。この試合では、ロングパスの意識こそ高くなったが、チームとしてそこを狙わない以上は、システムを変えて行く、戦い方を変えて行く。これは、避けられない。

 更にショッキングなコメントが続く。

記者(インタビュアー)
--何がうまくいったのでしょうか。
24江崎 巧朗(熊本)
相手のFWをうまく3枚でカバーしながら対応するというところで今日はうまくいって、流れの中から決定的な場面を作らせることはあまりなかったのが良かったのかなと思います。
記者(インタビュアー)
--前半の攻撃はほぼ相手陣内で進めていました。そこの手ごたえはどうでしょうか?
24江崎 巧朗(熊本)
「相手が4枚で横幅を守っていて、サイドのウイングのところはスペースがあると分かっていたので、立ち上がりはそこからうまく相手陣地でサッカーができました。その中で、相手を見ながらやれたのが良かったのかなと思います。ゼロでいけたのは自信になるので、これを1試合でも多く継続していきたいと思います。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第9節 岡山 vs 熊本(23/04/12)試合後コメント(選手)
より一部引用

>「相手のFWをうまく3枚でカバーしながら対応するというところで今日はうまくいって、流れの中から決定的な場面を作らせることはあまりなかった」

 やはり、攻撃の人数不足、迫力不足という内容が多く、巧く守られる試合が多くなっている。試合によっては、18櫻川 ソロモンや99ルカオ、9ハン・イングォンが抑えられると、なかなか攻める事ができないという試合が続いている。

>「相手が4枚で横幅を守っていて、サイドのウイングのところはスペースがあると分かっていたので、立ち上がりはそこからうまく相手陣地でサッカーができました。

 これも、当然ではあるが、わざわざ分厚い中央からではなく、サイドからの攻略を目指す。特に岡山の右の16河野 諒祐の守備対応が甘いので、そこから攻める事で何かおきる。そういった状況が生まれてしまっている。

 守りのセオリーとして、弱点は隠す。もしくは、守ると筈だが、岡山の場合は、ノーガード。しかも、パンチ(プレス)もこない。しかし、手でもガードしていない。ノーガードで、ダイレクトで弱い所を攻めさせてる。

 そうなると、16河野 諒祐の守備の弱い所が目立つこととなってしまう。22シーズンは、攻めの機会を増やす事で、守る機会を減らすこと、つまり機動力やパンチを織り交ぜることで、相手の狙いをかわすことで、守備を安定させていた。

 当然機動力が武器であるので、打たれ弱さこそあるものの攻め切る。もしくは、かわしきりことで、逃げ切って勝利を掴んで来た。それが22シーズンの良い時だった。

 ただ、やはり、熊本の2選手のコメントを読む限りは、今の岡山は、かなり深刻な状況と言える。だからこそ、今は、進刻(進むべき刻=進むべき時)と言える。

 あまり多く語らない大木 武 監督のコメントだが、実はヒントがある。

記者(インタビュアー)
--警戒していたセットプレーも抑えました。
大木 武 監督(熊本)
「失点はしなかったけど、CKはあったし、苦労しましたね。」

J.LEAGUE jp (Jリーグ公式HP)
J2 第9節 岡山 vs 熊本(23/04/12)試合後コメント(監督)
より一部引用

 ある程度、熊本が狙いを持って、岡山を攻略して戦えたが、セットプレーもあり、個の力がある。だから、簡単ではなかった。他にも様々な要素がある中でも、引き分けであった。

 これは、必ずしもネガティブな内容や結果ではなく、どう自分達の良さを出して、自分達の悪い所を目立たない様にするか。そこが、今後の浮上のヒントになる点であり、まだまだ岡山が、昇格を狙える力があると証明できる試合が残されていることを前向きに捉えて、戦って行くしかない。


3、順位とサッカースタイルの違い~乖離(海里)~


 順位は登山であり、サッカースタイルは、航海である。

 これは、実際の登山は、標高に関しては、登ったり下ったりするものの基本的に、どれだけ頂上に迫れるか。正しいルートを進む限りは、遭難しない限り、頂上に近づくことができる。

 一方で、航海は、水平戦が限りなく続き、登山以上に天候の影響を受けるだけではなく、アクシデントが多く、危険である。文明が進化する中で、一定の安全を手にすることができたが、水害というのは、絶えず人類を脅かして来た。

 そう。航海は、AIやデータで可視化されたサッカーのように、文明の進化により正解を導き易くなっているが、およそのルート(スタイル)がある中で、どう最適化できるか。天候によって大きく左右される中で、絶対的な正解はない。

 正しく進んでいるようでも、一つの間違いで座礁する事もあれば、事故を起こしてしまうことや遭難してしまうこともある。そうならないために、船長(監督)が、正しい決断を下し、船の正しい航路(サッカースタイルの方向性)を決めていく必要があるのだ。

 登山は、勝ち点を積み重ねて行く。航海は、スタイルを突き詰めて行く。こういった違いがある。

 サッカーというスポーツは、登山の頂上に登頂していく(勝ち点を積み重ねて行く)要素と、航海の水平線の360度ある航路を決める自由(サッカースタイルの方向性を決める自由)があるスポーツである。

 つまり、登山と航海を極めたチームが、岡山の目標とする”頂”に到達できるのである。

 勝ち点の最短ルートと実際の進んでいるルートに乖離はないのか。的確なルートポイント(分岐点)を進む事で、目標とする〇海里先のポイントを目指していく。

 チームとしての目標とする海里に乖離があれば、目標を達成することができない。

 島や灯台というヒントがあれば良いが、何も無い時に信じることができるかどうか。今岡山に問われているものは360度水平線の中で、どの方向に進んでいくのか。その道を信じることができるかどうかだ。

 その水平線の先は、J1かJ2か、J3、PO(プレーオフ)なのか。42試合を終えた時に分かることだ。

木山 隆之 監督(岡山)
「難しい状況だからこそ、自分たちを受け止めて、やれることやれないことをはっきりしてやっていくことが大切。その中でやれないからと言って、それを捨てるのではなく、今の現状を見つめて精査してレベルアップするしかない。それをチーム全体で理解できた試合だったので、ポジティブにとらえたい。
無失点でいくと攻撃がしぼむし、攻撃で踏ん張って点を取ると守備が崩れる。勝てないときはそういうものだと思うが、それを乗り切って頑張っていきたい。」

ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第9節 ロアッソ熊本戦 監督・選手コメント
より一部引用

 このコメントからかなり厳しい状況が伝わって来るが、貴方が、サポーターとして、木山ファジを最後まで、信じて、応援することができるかどうかが、問われている。

 J2という大海原を航海する「ファジアーノ岡山号」が、「木山船長」の指揮の下、選手という名の「船乗り」と共に、J2を横断し、J1という大陸に到達できるのか。コロンブスになれるのか。

 勝ち点を積み重ねて行くことは、登山だが、サッカースタイルが進んでいる道は、航海なのだ。この乖離(海里)の先にあるものとは?

文章・画像=杉野 雅昭
text・photo=Masaaki Sugino


4、アディショナルタイム(おまけ)

今日のマウンテン丼!
岡山イレブン 2023 J2 第9節(H)vsロアッソ熊本戦
熊本イレブン 2023 J2 第9節(H) vsロアッソ熊本戦
不満げな7チアゴ・アウベス 選手

 笑顔のチアゴ選手がみたいです!

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